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シネマ365日

2016年1月5日

特集「新年おめでとうございます」⑤
マッドマックス/怒りのデスロード(2015年 アクション映画)

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監督 ジョージ・ミラー

出演 トム・ハーディ/シャーリーズ・セロン

シネマ365日 No.1621

「マッドフュリオサ」 

特集「新年おめでとうございます」

世界で450億円も稼いだ大ヒット映画を、いまさら粗筋がああだ、こうだと説明するのも退屈させるだけよね…思いつくままに書いていくと、本作を云々する以前に、わたしジョージ・ミラー監督が好きなのです。「ベイブ」では脚本、「ハッピーフィート」「ベイブ/都会へ行く」「イーストウィックの魔女たち」は監督。「イーストウィック」では熟女3人がジャック・ニコルソン扮する悪魔をやっつけるというコメディ。彼の動物と女性に対する視線はとても温かいのよ。それだけに、本作でフュリオサ(シャーリーズ・セロン)が登場したとき、ラストの着地点は見当がついたのよね。主役のマックス、トム・ハーディは好きな俳優だけに、気の毒だった。彼の持ち味って鷹揚なのよ。「欲望のバージニア」のタフで純情な兄貴とか、刑務所フェチの「ブロンソン」とか。それが今回の相手はセロン、ダントツにキツイ女優ときたのよ▼フュリオサのイメージはスキンヘッドがいいと、セロンは自分から監督に提案してアタマ剃っちゃったのね。似あっていたわ。もともとセロンの美貌とは「可愛い」でもなければ「健気」でもなく、まして「甘さ」なんかどこ探してもない種類です。冷たくて硬質で怜悧な180センチの女優が、水冷V8エンジン2基、2000馬力、6輪駆動、3両編成のタンクローリーを運転し砂漠を激走。皮革製ハーネス、ショルダーパットを着けた、カービン銃射撃の名手、左手は金属製義手という特異性が存在を際立てる。彼女の目的は、独裁者ジョー一族が「子産み女」として、受胎を目的に監禁している、若い女性5人をタンクローリーに隠し、自分の生まれ故郷「緑の地」を、共にめざす逃亡なのだ。フュリオサは子供のとき、母親といっしょに「緑の地」から拉致され、母親は3日後に死んだ。子産み女のひとりとなったが独裁者にはむかい、左腕を落とされる。以後20年従順な部下となって尽くし、大隊長のポジションを与えられるまでになっていた。そしていま、熱砂の逃亡に命を賭ける…逆境に耐え、生き抜き、ニコリともせず目的をやりぬく。こらもう、ミラー監督大好きなキャラですわ▼男性の独裁社会で束縛と制裁をうけながら、復讐のチャンスがくるまで耐える精神力、重機・武力を行使する技術と体力、フュリオサがそれらを兼ね備えたタフな女であることにひかれたと、セロンは出演の理由を語っていました。砂塵をあげて疾駆する車は半端ない重量級だ。軍用トラックの15トン改造車、V8エンジン搭載のフォード・ファルコンXB、ステロイド駆動キャデラック。フュリオサのタンクローリーを追走する戦闘車両の群れを撮る空撮は詩的ですらあります。もうひとつ、監督の詩的感性は「生と死の美学」にあります。脱出した5人の子産み女たちの一人、ケイパブルは、タンクローリーに飛び移った追手のひとり、ニュークスと心を通わせるようになる。昼夜を分かたぬ厳しい道中であるから、そういうこともおこるらしい(笑)。ニュークスは核戦争後の残存放射能の被爆で命は長くない。死ぬことばかり考えていたが、残り時間が短くても生きる価値はある、希望を捨てないで可能性に賭けようというケイパブルや、フュリオサや他の女たちの生き方に目覚め、マックスとともに独裁者ジョーの砦へ、決戦に腹をくくる。ここからのクライマックスは圧巻です。だれひとり、目を離せる人はいないでしょう。フュリオサは重傷を負い、タンクローリーは炎上、エンジンは1基が停止した。優秀な技術士であるニュークスは炎のなか、身を呈してエンジンを稼働させる。フュリオサはジョーの車に移り、さらに深手を負いながらジョーを倒す。砦の独裁者一族との対決と、それを阻止してフュリオサたちを皆殺しにしようという追撃の武装集団。砦の入り口は狭い関門だった。殿軍を受け持ったニュークスは捨て身の戦法に出た。前を走る車両にケイパブルがいる。ニュークスを見ている。彼はその視線を受け止めてつぶやく。「おれを見ろ」。彼は自爆し、自らの肉体とともに吹き飛んだ岩石で関門をふさぎ、追撃集団を絶つのである▼フュリオサとマックスの別れは泣かせますね。言葉もかわさず笑顔もみせない。命がけで助け合った者だけにわかる眼差しとかすかなうなずき。次作「マッドマックス」ではフュリオサの出番がないとわかり、新しく出現した女性ヒーローをなぜださないのかというファンの質問に、「まだ脚本の段階だから、変更もありうる」とミラー監督は言いにくそうでした。ムリないわ。セロンはださないほうがいいと思うわ。「マッドフュリオサ」になってしまうからね。本作では女たちの団結が非常に強く描かれています。セロンの映画には案外この「闘う女たち」が底流にある作品が多い。世界で初めてのセクハラ裁判を扱った「スタンドアップ」、反政府組織の革命戦士「イーオン・フラックス」。ゲイで娼婦であるヒロインの、アウトサイダーとしての悲劇「モンスター」。「ヤング≒アダルト」「あの日、欲望の大地で」も、自分の居場所を求める女たちの彷徨でした。本作は一言でいうと、フュリオサが(自分自身をも含め)女たちを解放しようとして仕掛けた、壮大な戦いです。セロンの自家薬籠中でした。

 

 

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