女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

シネマ365日

2016年1月9日

特集「新年おめでとうございます」⑨
ミニオンズ(2015年 アニメ映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ピエール・コフィン

出演(声) サンドラ・ブロック/ジェフリー・ラッシュ(ナレーター)

シネマ365日 No.1625

史上最凶のボスとは

特集「新年おめでとうございます」

制作費7400万ドルに興収11億5700万ドル。メガヒットですね。人類誕生以前から地球に存在する黄色い生物ミニオンは、最強最悪の主に仕えるのが使命だ。本作は怪盗グルー・シリーズのスピンオフで、ミニオンがグルーに出会うまでの物語だ。ハッキリいうと、嫌いなところがいっぱいあるこのアニメが、なんで「アナと雪の女王」に次ぐ大ヒットになったのだろう。ミニオンは有史以来、地球上に出現した悪の主につかえることを生きがいにしてきたが、ミニオンらのドジによって主人はすぐ歴史から退場してしまう…それはよろしい、しかしこのシーンはなんだ。恐竜時代の主人ティラノザウルスは、ミニオンの間抜けな作業で、溶岩のたぎる火山の噴火口に真っ逆さま。レックスの顔が、いかにも憎らしそうに作ってあったことも気に喰わない。わざわざ恐竜を選び、殺さなくてもいいだろう。怒るぞ、恐竜ファンとしては▼ミニオンが下僕となった歴代ボスの行く末とは、人間の祖先・類人猿はクマに食われる、エジプト王はピラミッドの作業中、巨岩の下敷きになって死ぬ、ドラキュラはアホなミニオンがカーテンを引いたばかりに朝日を浴び灰に帰する。ナポレオンはシベリアから潰走する。ミニオンは仕えるボスがいなくなり、南極に移住した。新生活を始めたものの生きる目的を失ったミニオン一族は総ウツに陥り、気力も活力もない。全員の兄貴分、ケビンが「最凶最悪のボスを見つけに行く、出会うまで帰らない」と決心し、心意気に賛同したスチュワートとボブといっしょに、広い天地へ「悪のボス」を求めて旅だった。海を渡り、氷を越え、着いたところはニューヨーク。そこで彼らはフロリダ州オーランドで、大悪党大会が開かれるのを知った。こここそ目指す目的地。大悪党の中から最凶最悪の主人をみつけよう…時は1968年だった。ニクソンが大統領に立候補した。ラブ&ピースの時代で町にはヒッピーがあふれ、レコード店ではビートルズの音楽が聞こえる。途中同乗させてもらった車のネルソン一家も泥棒だ。追走してくるパトカーをプチミサイルで爆破。こういうところも実は嫌いである。しょせんアニメで、簡単に、あっけなく人を殺さなくてもいいだろうに、本作では銃撃戦、爆弾戦、過激な攻撃による破壊と殺人のオンパレードだ▼大会でミニオンがみつけたボスは、悪の女王スカーレット・オーバーキル(声=サンドラ・ブロック)である。彼女の心技体こそ悪の凝結にして、全身が核弾頭に等しい武器。彼女はミニオンをひきつれ、夫のハーブとともにロンドンに飛ぶ。ミニオンに指示した最初の仕事は女王陛下の王冠を盗むこと。つまりスカーレットの望みはイギリスの支配者になることだった。彼女は言う「イギリスを仕切っているのはこのオバサンよ。わたしは王冠と王国がほしいの」この言葉遣い。他国のことだからどうでもいいと思えるだろうか。ロイヤル・ファミリーこそ階級制度の諸悪の根源というかもしれない、しかし仮に外国映画が日本の皇室をとりあげ、美智子皇后のことを「おばさん」よばわりして、気分のいい人はいるだろうか▼このあたりにくると、ミニオンが探し求める邪悪のボスとはいったい何のことだろうと思えてくる。ありとあらゆる侮辱と人命の軽視を、黄色いバナナ状のミニオンという可愛らしい生物は、歯牙にもかけずひたすら悪を尊敬し、仕えることをミッションとし、その遂行を生きがいとするのだ。ミニオンのなかのもっともマヌケなボブが、エクスカリバー(伝説の剣)を引き抜いてしまい、イギリスの国法に従い、ボブが君主として即位する。その間女王陛下はパブにいて、庶民とともに新国王即位を祝福するのだ。スカーレットは、ミニオンたちが主人をさしおき英国の君主となった、許しておけないと逆上する。スカーレットと一騎打ちで彼女を追い払ったミニオンは、ついに真の悪党、怪盗グルーにめぐりあう▼この映画IS対アメリカのギャグなのでしょうか。ミニオンが仕える最凶最悪のボスは、手下となったミニオンが、つぎつぎやらかす失敗によって、栄光の座から失墜するという図式は、アメリカがイメージする打倒テロなのか。オチがそこだと考えれば、このアニメが含んでいる過剰なまでの毒気と攻撃性に思い当たる。

 

 

Pocket
LINEで送る