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シネマ365日

2016年1月10日

特集「新年おめでとうございます」⑩
トレヴィの泉で二度目の恋を(2015年 恋愛映画)

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監督 マイケル・ラドフォード

出演 シャーリー・マクレーン/クリストファ・プラマー/マーシャ・ゲイ・ハーデン

シネマ365日 No.1626

さすがのラブストーリー

特集「新年おめでとうございます」

クリストファ・プラマー演じる80歳のフレッドは、8ヶ月前に妻に死なれウツ気味だ。娘のリディア(マーシャ・ゲイ・ハーデン)が気遣って近くのアパートに引っ越させる。隣人というのが74歳のエルサ(シャーリー・マクレーン)である。マクレーン映画デビュー60周年記念として作られたが、本人は80歳の今も「ドラマティックな役をやりたい、年寄りについての映画を作り続ける年寄り女優でありたい」と意欲は衰えることを知らない。プラマーについては「人生はビギナーズ」でアカデミー助演男優賞をとったのが2010年、81歳のときだ。しかしながら白状するが、赫々たるふたりのキャリアはともかく、現実的には、寄る年波に勝てないのではないか、シャーリー・マクレーンと言っても、すでに忘れられているのではないか、だいいちスクリーンに現れたときにシワだらけでゾッとしたらどうしようと思っていた▼もし同じようにお考えの方がおられたら、そしてシャーリー・マクレーンやクリストファ・プラマーが過去の俳優であり、いまさら関心を持てない映画ファンがおられたら、その方たちこそ、この映画を見るべきだろう。物語の愉しさ、監督の技量、絶妙の間合いで交わされる粋なセリフ。名作「甘い生活」に捧げられるリスペクト。どれをとってもハイレベルな映画です。老人の主人公にありがちな、無理な頑張りもおしつけがましい諦念もなく、毎朝迎える明るい朝は、自分を死に近づけていく朝である、それをエルサは自然だとして受け入れ、朝を愛するようにフレッドを愛します。エルサから見たら、フレッドの閉じこもりはもったいなくてしかたない。彼が誠実な情のある男であることはわかった、だから、もう少しわたしといっしょに楽しく生きましょうよ。簡単にいえば、この映画はエルサのそんな呼びかけなのです。エルサはフレッドの部屋を訪問し、亡くなった妻の写真にむかってつぶやく。「よく我慢したわね、あの偏屈な男を」▼エルサがウソばかりつくので再々フレッドは腹を立て、そのたびエルサになだめられる。「まだ怒っているのね。あなたを想っていたのに私の気持ちに気づきもしない」「こんな男なのだ。ばかな老いぼれだよ」「わたしもばかな年寄り女よ」「似たもの同士だ」と笑ってしまう。エルサは仲直りに高級レストランにさそい「わたしは強い気持ちよ。いっしょに生きられると思う? あら、80歳で照れているわ。まあ400ドルですって、ベラボーな額ね。三つ数えたら店をでましょう。大丈夫よ、しがない老人のカップルにだれも気づかないわ」で、食い逃げ。フレッドの毎日は変化した。朝風呂に入り、エルサと公園を散歩し、クスリは捨ててしまい、食事はいっしょにキッチンに立って作る、歩きながらアイスクリームを食べる、エルサといっしょに買い物をする、車のなかで「♪象が言ったよ、大胆に生きよう♪」と歌う▼エルサが未亡人で5人の孫を養っているのは真っ赤なウソだった。夫は生きており、籍もそのまま。夫は浮気をして自分を棄てたのだというのだ。ピカソのモデルになったのも嘘だろうと決めつけるとそれはホントだ、絵は金庫にしまってあるが、鍵は息子が持っていると言う。フレッドは信じない。ある日戸籍上は夫である男がフレッドを訪ねてきて言った。「エルサは危険な女だ。現実と夢の区別がつかず、自分からウソを本当と信じ込んでいる。浮気をしたのは彼女が先だ。ニューオリンズの浮気の現場から、ぼくが連れ戻したのだ。トレヴィの泉に行くのが彼女の夢なんだけど、行っていないよ。ドレスを着て泉に入り、映画と同じセリフをいいたい、ぼくにもめかしこめと言うのだ。逮捕されるのがオチだもの」「本当か、若い時の彼女がアニタ(エグバーグ)にそっくりだったというのは」「ウソさ」フレッドの顔が沈む。元夫は続けた「もっと美しかった、ニューオリンズ一の金髪美人だった。エルサを失ったのはぼくの人生の一生の不覚だった。同じ失敗をするな」彼はそれを言うために来たのだ。このセリフ運びの妙はどうだ。フレッドはエルサが人工透析を受ける重病だと知る。友人の医師にきくと「年齢が年齢だから明るい展望とはいえない」。フレッドはエルサを訪ねた。赤いバラと航空券のプレゼントを持って。「ローマさ。君の都だよ」▼エルサはフレッドとローマに来た。トレヴィの泉に入るのは夜である、アニタは白い子猫を抱いていた、マルチェロは子猫のためにミルクを買ってきた…そのたびフレッドはペットショップで白猫をさがし「真っ白じゃないけど」と言って連れてくる。「わたしたちだって、アニタとマルチェロじゃないのだから、いいわよ」つぎは真夜中にアイスクリームを買いに行き「ヨーグルトしかなかった」とフレッドは猫に舐めさせる。そしていよいよふたりが泉に入るのはシャーリーの提案だったという。エルサの最後のセリフはこうだ。「今までのどの男より愛しているわ。ありがとう」「ぼくこそ、ありがとう」。サラッと画面はかわり、そこは聖パトリック墓地だ。エルサの弔いをすませたフレッドに、息子が「金庫を開けたら、あなたに渡せとメモがありました」。それこそパブロ・ピカソが描いた少女エルサの肖像だった。フレッドが見つめる。じっと。セリフなし、説明なし、音楽なしのエンドがよかったですね。

 

 

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