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シネマ365日

2016年1月14日

特集「新年おめでとうございます」⑭
サンドラの週末(2014年 社会派映画)

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監督 ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ

出演 マリオン・コティヤール

シネマ365日 No.1630

わたし、善戦したよね 

特集「新年おめでとうございます」⑬

ダルデンヌ兄弟にまたやられたわ(笑)。静かなどんでん返しともいうべきラストの落とし所は、ハリウッドの対極でありますね。べつにハリウッドが嫌いなわけじゃないけど、こういうのが文化であり気風であり、気質であり自然であり、真似しようにもしようのない本質であり、クリエイターをなりたたせている、いちばん大事なものだと思うのよね。ヒロインのサンドラ(マリオン・コティヤール)には、みていて終始、イライラさせられると思うわ(笑)。彼女は希望をなくし、自分を見失いかけている女性です。ウツで会社を休職し、体調が回復したので復職したいと願いでた、返事は「解雇」だった、彼女を解雇すればその給料でボーナスがひねりだせる、で、職場の「みんな」は解雇に賛成したというのだ。サンドラは失意の底にまっ逆さま「わたしなんかしょせんダメ女よ」と、ドツボにはまりこむ▼しかしダンナは現実的だ。自分の給料だけじゃ家賃も払えない、もういちど会社にかけあえ。同僚で友だちのジュリエットが情報を流してくれる、職場の14人が賛成したというが、主任の策謀で、内心はいやだが、脅されて「賛成」にまわった人もいる。社長に直談判すべきだと。ジュリエットがいい友だちでしてね、頼りないサンドラをひきずるようにして社長にあわせる、面と向かえばキツイことをいえないのが人の常で、社長も「そんなことおれは知らん」とか「聞いていない」とか韜晦し、じゃ月曜に再投票で決めればいいだろうとゲタを預ける。サンドラは土曜と日曜に二日間で、「自分は復職したい。お金が必要だ。月曜の再投票には自分の復職に賛成してほしい」ということは「ボーナスはあきらめて」と同じことなのだ。まず投票者の住所探し。ジュリエットが知り合いから知り合いをたぐり、ひとりずつの住まいにサンドラはバスにのって回る▼思えば虫のいい話である。彼らはいう。「ボーナスは働いた者に与えられる賞与だ。働いていない(休職していた)サンドラがもらえないのは当然だ」「リフォームの支払いがあるの」「無理よ。長女の大学の学資と下宿代に、ボーナスを当てにしていたのよ」「揉め事をもちこまないでくれ」「病気だったのだろう、病み上がりは使えないよ」「減員したってやっていける職場に、人をふやす理由なんかないだろ」。ちがう反応もあった。「だれかをやめさせるというやり方に心苦しかった。君はぼくが失敗したときに罪をかぶってくれた。復職に賛成するよ」「主人に相談するわ。リフォームを延期するとかして、なにか方法があるはずよ」ひとり、ふたりと「賛成」はできた。堪えたのは仲のよかった友だちが居留守をつかって拒否したことだ。サンドラは疲れ、倒れこみ、泣き出し、「わたしはひとりぼっちよ」と叫ぶ。おいおい、どこが「ひとりぼっち」なのだ。ここまで見捨てない友だちや、賛成に回るといってくれた数人がいるだろ。でもサンドラにはなにもみえない。意欲も気力もなくし薬を一箱、全部飲み下す▼そら妻を励ましたのは家賃と背中合わせという切実な問題をかかえていたとはいえ、ダンナとジュリエットはえらいと思うわ。「一箱!」ふたりは仰天、このお騒がせ女を救急車に運び込み、こんなときにもジュリエットはサンドラの味方をさがすのである。過半数を集めたら逆転するのだ。病室のサンドラに朗報が届いた。「アンヌだ。ご主人と話した。賛成してくれるよ」寝ている場合じゃない、サンドラは気力を取り戻し、あと3人の家を回る。月曜の朝が来た。サンドラの復職に最初派・反対派どちらもからひとりずつが開票した。結果は8対8。過半数に1票足りなかった。ジュリエットが言った。「味方してくれた人たちに会っていく?」うなずいたサンドラは8人と抱き合う。「本当にありがとう、一生忘れないわ」。ロッカーを整理していたら社長から呼び出しがあった。「8人にボーナスをあきらめさせたのはみごとだ。社員同士でもめたくない。君を復職させ、ボーナスもだす。ただし2ヶ月後だ。臨時雇いの契約を切る」その臨時の雇用者のなかにサンドラに賛成してくれたひとりがいる。「だれかをクビにするなら断ります」とサンドラは答える。会社の外に出た。いい天気だ。ケータイで夫に言う。「今から仕事さがしよ。きびしくなるわね。でもわたし善戦したよね」。そうだ、よくやった。思わずグッときましたね。ここのマリオン、よかったですよ。自分のことを思ってくれる人はだれもいない、という絶望から、勇気と連帯を取り戻した週末の2日間。もし自分が「ボーナスか同僚の復職か」どっちかを選ばなければならない立場ならどうする? まして不況で、家庭の台所事情は厳しい状態にいたら。そうそう、アンナだけど、夫は断固復職に反対だったのに、アンナは「もうアンタのいいなりになるのはやめ」と離婚を決めたのよ。自分ならどうする。サンドラが自分の友だちであるなしにかかわらず、やっぱり人の不幸を担保にしてもらうお金っていやだわね。パス。それに、お金って男や女と同じよ。たとえ最初の数は少なくても、きちんと大事にすれば増えていくものよ。

 

 

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