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特集「美魔女」

2016年1月19日

特集「美魔女2」① クリスティン・スコット・トーマス1
ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて(2010年 犯罪映画)

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監督 アラン・コルノー

出演 クリスティン・スコット・トーマス/リュディヴィーヌ・サニエ

 

シネマ365日 No.1635

女に嫌われる女 

ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて(2010年 犯罪映画)

ヒロイン、イザベラを演じるのはリュディヴィーヌ・サニエですから、彼女を取り上げるべきかもしれませんが、仇役のクリスティーヌを演じたクリスティン・スコット・トーマス(まぎらわしいわね)の、落ち窪んだ眼窩、暗い冷たい瞳、くっきり骨の浮いた固そうなアゴ、冷酷な唇、音もなくすべるように歩く後ろ姿の、ときとしてクネクネさせてみせるいやらしさがなければ、本作はたぶん保たなかったと思うのです。というのもこの2年後にブライアン・デ・パルマが本作をリメイクした「パッション」を撮っています。わずか2年後ですよ。自信満々ね。本作の監督はアラン・コルノーです。拳銃パイソン357を分身のように愛する「真夜中の刑事」や、アクション映画の傑作「マルセイユの決着」の、彼本来のシャープな演出が影を潜めている、とつい思ってしまうのは、デ・パルマのパクリ方がうまかったからだわ。デ・パルマは「パッション」にゲイの女同士の裏切りをからめたのよ。その部分の「ドロドロこってり味」が映画を刺激的にした、それにひきかえ全体にあっさりしあがっている本作で「こってり」部分を受け持つのがだれあろう、トーマスよ▼クリスティーヌは「女が嫌いな女」の典型的なタイプです。優秀な部下イザベラに、かゆいところに手がとどくような、なかば強引なやさしさをいつもテンコ盛り押し付ける。イザベラはアタマのいい子だが悲しいかな、まだ若く、ビジネス社会の生き馬の目を抜くようなえげつなさを知りません。クリスティーヌは次期昇任をほぼ手中にしている女性重役である。イザベラにしたら憧れである。クリスティーヌはイザベラの提案によってプロジェクトをたびたび成功させてきた。イザベラの忠実な部下ダニエルが「クリスティーヌは君を利用して出世した。尽くすのもいい加減にしたら」と忠告するが、イザベラは耳を貸さない。クリスティーヌは臆面もなくイザベラに「あなたを愛しているのよ。わかっているはずよ。あなたはどうなの?」と詰問に近い口調で言い、イザベラがドギマギしていると「わたしの愛を打ち明けたのはまちがいだったわ。だってわたしを愛しているとあなたはいえないのだから」(当たり前だろ、この押し売り女)と思うのが普通なのに、イザベラは「愛しています、愛しています」と叫んじゃうのだ。クリスティーヌの本性を見抜いているのは、彼女の情事の相手フィリップである。フィリップとイザベラは出張先でできちゃうのだが、クリスティーヌに知られることを恐れるイザベラに「なにいってンだよ、彼女のなかでおれたちは虫ケラ同然だよ、存在しないのだよ! 彼女がベッドで話すのは自分のことばっかりさ」図星!▼クリスティーヌとは人に与える意地悪も、人から与えられる意地悪も、屁とも思わない強い女である。イザベラに「手柄を横取りされて怒るのはまちがいよ。あなたの能力を最大限に活かしたわたしがエライの」と開き直るくらいヘッチャラ、イザベルが情夫とできたと知ると仕返しに、パーティで赤恥をかかせる。イザベラはとうとう神経症を起こし不眠、睡眠薬と覚醒剤という「死のデュエット」を常用するようになる。そこへクリスティーヌ殺害事件が生じた。容疑は当然のごとくイザベラに。彼女は心神喪失状態できちんとした状況把握ができず、警察の半ば誘導尋問で自白に至る。大事な伏線となるべきところを、コルノー監督はもったいないくらいサラサラと処理してしまうのだ。デ・パルマはダニエル役を男ではなく、女に変えた時点で脚本はできあがったのではないか。でなければ2年という短期間でリメイクできるはずないでしょ▼リュディヴィーヌ・サリエは「スイミング・プール」でシャーロット・ランプリングと、「ある秘密」でセシル・ド・フランスと、「愛のあしあと」でカトリーヌ・ドヌーブと、「愛のうた、パリ」でキアヌ・マストロヤンニらと共演、監督と共演女優に恵まれています。「8人のおんなたち」では、フランス映画の花・総出演のなかで健気に頑張っていました。クリスティン・スコット・トーマス姉御も、さぞイビリ甲斐があったでしょう。

 

 

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