女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集「美魔女」

2016年1月21日

特集「美魔女2」③メラニー・グリフィス
刑事エデン 追跡者(1993年 サスペンス映画)

Pocket
LINEで送る

監督 シドニー・ルメット

出演 メラニー・グリフィス

 

シネマ365日 No.1637

バシェルト(運命) 

刑事エデン 追跡者(1993年 サスペンス映画)

メラニー・グリフィスはラズベリー賞の最低主演女優賞受賞、共演のトレイシー・ポランは最低助演女優賞にノミネートされ、シドニー・ルメット監督の失敗作みたいにいわれるけど、いい映画だと思うな。前半動きが少なくて、ニューヨークの、ブルックリン、ボローパークのユダヤ人社会に潜入したヒロインのエデン(メラニー・グリフィス)が手持ち無沙汰である(笑)。でもこれが監督の意図だとわかってくる。銃撃戦もスパイ活動も密告も収賄もなく、映画は淡々とユダヤ教の教義やラビの過去や、コミュニティー内部の行事や習慣をつまびらかにしていく。エデンは捜査のためにニューヨークの一画、ユダヤ教はハシド派の集団に入るが、そこはまったくの異次元だった。厳しい戒律と勉強と相互扶助、全体が大きな家族として結束し、エデンが生きてきた、いわゆる自由社会とは別世界であり、彼女は異端者だった▼ダイヤモンドの研磨職人ヤコブが失踪し、捜索の届けが出されエデンが担当することになった。過剰防衛で停職寸前だったエデンは、家出人だろうと行方不明の捜索だろうと贅沢はいえない、しぶしぶ引き受けヤコブの家に行き、ジロジロ見られながら室内を調べ、天井のシミに気がつき「家出じゃなさそうね」とつぶやく。ヤコブの死体が天井裏にあった。内部犯だと判断したエデンは、ハシド派のラビに「潜入捜査のためこの家に寝泊まりさせてほしい」と頼む。ラビは「われわれのしきたりに従う」ことを条件に、息子アリエルと娘レアに協力させる。とまどうことばかりだったが、レアもアリエルもやさしく親切にエデンを遇し、自分をのけ者だと感じていたエデンは、いつしか彼らと彼らの社会に心を開いていく。この映画、いまでいうダイバーシティの先駆けですね▼レアに「なぜ刑事に」と聞かれ「父が警官だったから」とエデン。「仕方なく?」とさらに聞かれ「わたしは自分のしたいことをしているの。自立した女よ。とても幸せよ」といくぶんムキになって答える。エデンはレアに「あなたは?」「結婚して母になるの」とレア。「それだけ?」批判的なエデンの口調に「それより大切なことって?」チリほどの疑いもない、自信にあふれたレアの人生観に、むしろたじたじとなる。アリエルは父のあとを継ぐ次期指導者だ。エデンは彼に惹かれるが、謹厳な禁欲主義に「悲しからずや/道を説く君」とイラ立つ。アリエルもまた信仰と愛の狭間で揺れ動く。アリエルの結婚が決まったと知ったエデンは、手紙と電話でしか婚約者を知らないというアリエルに沈黙。「それだけではわからないと言いたいのだろう。顔に書いてあるよ」とアリエル。「レビは人間の魂がわかり、あなたは顔が読める、すごいわ」とエデンは皮肉る。アリエルは物静かに否定し婚約者は「バシェルテだ」と教える。「運命という意味だ。男性形はバシェルトだ」。そんな相手がいるならなぜ離婚や浮気をするのかとエデンが食い下がると「真のバシェルトをみつけていないからだ。運命は定まっているが、間違って選ぶことがある」。押しても引いてもアリエルの信仰は巌のようだ。妹のレアはエデンになつき「あなたは素敵よ。わたしには初めての女ともだちよ」と打ち解ける。エデンは母親を早く失い、警官だった父は名誉の殉職を最高と考えるような堅物で、およそ家庭らしい温かさはなかった。エデンにとって彼女を受け入れてくれたユダヤ人社会は、初めて味わう家庭らしい家庭だった。シドニー・ルメットはエデンの孤独をも逃さずとらえている▼ルメットのニューヨークものがすべてそうであるように、本作もまた静かな傍証で脇を固めながら緊張が煮詰まっていく。エデンに対する性差別や、蔑視をあからさまに露出されながら、エデンがふたりの相棒にプロポーズされるなどできすぎとは思うが、ニコリともしないメラニー・グリフィスのコワモテぶりが、エデンを甘いヒロインにしない。殺されたヤコブとともに70万ドルのダイヤが消えていた。ハシド派が運営する宝石店で張っていたエデンは、恐喝にきたギャングの兄弟を逮捕するが、彼らは隙をみて包囲をふりきり、エデンの相棒を負傷させ車で逃走しようとしてエデンに射殺される。このときのメラニー・グリフィスはジャケットとスカートとヒールで走るのですが、これでもかという全力疾走がサマになっていて、きれいでしたよ。暴走してくる車の正面に立って腰を落とし、落ち着いて狙いを定める。うわ〜、ここ、ダーティ・ハリーもまっさおだなあ。犯人はレアの友人である若い娘マーラだった。惜しむらくはエデンの内面の劇に力がはいりすぎ、肝心のラストの追い込みがはしょったようなキライがあるけど。アリエルはエデンを救うためにマーラを射殺するのですよ。生まれて初めて銃を持って、最初の一発で心臓を撃ちぬくか? エデンの相棒のレビンがなかなかいいやつでしてね。事件終了後、アリエルと別れる羽目になり失意に沈むエデンに「休みをとらないか。2週間あれば生まれ変わるぜ」「やさしいのね。でもいいの。わたしはバシェルトを待っているの」。へ〜。運命の人を待つのか。口は悪いがレビンみたいなやつがいいと思うけどな。ま、いいか。

 

 

Pocket
LINEで送る