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特集「美魔女」

2016年1月27日

特集「美魔女2」⑨ アイダ・ルピノ2 
深夜の歌声(1948年 犯罪映画)

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監督 ジーン・ネグレスコ

出演 アイダ・ルピノ/リチャード・ウィドマーク/コーネル・ワイルド

 

シネマ365日 No.1643

運命を変える女の系譜 

深夜の歌声(1948年 犯罪映画)

どうせ今じゃ、だれも知らない映画のついでに、もう一本アイダ・ルピノの「深夜の歌声」といこう。この映画のどこがよかったか。犯罪映画のヒロインとは、悪女であるか聖女であるか、娼婦であるか少女であるか、主婦であるかガーリーか、そんなことはどうでもいい、一言で言えば男の運命を変えてしまう女のことだ。これをやらせて天下一品という女優は不思議とのしあがってきている。歴史的な存在でいえばベティ・デイビスとかシモーヌ・シニョレとかジャンヌ・モロー、フランソワーズ・アルヌール、はたまたB.Bもカトリーヌ・ドヌーブも、キャスリン・ターナーも、いやまて、ふしだらで欲望に燃える女だけが男の運命を変えるのではない、クール・ビューティのグレース・ケリーだって、イングリッド・バーグマンだってコロリと運命を変えちゃう女だったのである。最近ではシャーリーズ・セロンやスカーレット・ヨハンソン、ケイト・ブランシェットやセシル・ド・フランス、レア・セドゥらが名乗りをあげ、知的で強く蠱惑的な女をクリエイトしている▼本作のアイダ・ルピノもまた、脈々と受けつがれる「運命の女」の系譜にいる。物語というのはアイダ・ルピノに恋する男ふたりが、リチャード・ウィドマークとコーネル・ワイルドという、呆気にとられるような単純な三角関係である。場所はカナダ国境にある小さなクラブ。となりがボーリング場でオーナーがウィドマーク、支配人がワイルド、シカゴから歌手に雇われてやってきた女がルピノだ。もうひとつ、この映画は夜が主役と言ってもいい。宵闇せまる黄昏どきでもない、一日の疲れを静める穏やかな夕景でもない、パワフルな真昼でもさわやかな朝でもない。家族あるいは家庭という、癒しと平和と安心の場所から、ふらふら抜け出してくる男や女の影が集う夜の酒場。そこへ姿を現すのがアイダ・ルピノだ▼カウンターに腰掛けたルピノに「何にする?」とバーテン。「スコッチ」。女がウィスキーをストレートで飲むシーンで(うまいなあ)と感心した三人目がアイダ・ルピノだ。一人目はグレタ・ガルボだった。安物のブラウスを着た娼婦が、だれもいないレストランに入ってきて「ウィスキー」くたびれた投げやりな声で注文し、一息に空ける。女の過去が滲んでくるシーンだ。二人目はシャーロット・ランプリングだった。推理作家の彼女はロンドンの通勤者が朝の軽食をとるパブのようなカフェで、いつものようにカウンターに腰掛けると「スコッチ」。朝飯前からスコッチのストレートをひっかけるランプリングは、すばらしくふてぶてしくエレガントだった。ルピノはどうか。「スコッチ」出されたそれをクィッと空ける。自分の職場になる店を見渡す。支配人のワイルドがホテルまで送るという。ところが彼が運転してルピノを連れてきたのはさっき降りたばかりの駅だ。君には無理だから今から帰れと200ドル渡すのである。ルピノは「帰るときは自分で決めるわ、勝手に指図しないで」そう言って男の横面を張り、200ドルはちゃんとつかんでさっさとホテルに入るのだ▼新入りがどの程度の歌手か、客や店の従業員や、踊り子たちがルピノの最初のステージをまちかまえている。ルピノはピアノの前にすわり、ゆっくりかすれた声で歌うのが「アゲイン」。吹き替えなしの演奏と歌が、夜の田舎町の酒場にしみじみと広がる。ルピノを美貌という人もいるが、いわゆる美人ではないと思う。小柄だし、押出からいえば貧相であるのに、くっきりした目と視線が、物憂さや不安や疑いや怒りを雄弁に語る。場末に来た、いわば都落ちの歌手なのに、金次第で動く女という自堕落さを豪も感じさせない(200ドルはふんだくったが)そんな気位の高さや自尊心を発散している。リチャード・ウィドマークはデビューしたばかりだった。嫉妬のためにはかりごとをめぐらし、罪をコーネル・ワイルドになすりつけるボーリング場の経営者である。ぬめぬめした目付きがいかにも陰気ないやらしい男にぴったりだった。ある時期以後、彼はすっぱり悪役をやらなくなる。娘が学齢に達し、学校でいじめられたらかわいそうだからという理由だったから泣かせる。

 

 

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