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特集「美魔女」

2016年1月28日

特集「美魔女2」⑩ イザベル・ユペール 
囚われ人(2013年 事実に基づく映画)

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監督 フリランテ・メンドーサ

出演 イザベル・ユペール

 

シネマ365日 No.1644

生き延びるしかない 

囚われ人(2013年 事実に基づく映画)

恥ずかしい限りだけど、この映画を見るまで知らなかった実情がたくさんあります。2001年5月27日、西フィリピン、パラワン諸島のリゾート地で、過激派グループ「アブ・サヤフ」が起こした人質誘拐事件を元に作られた映画です。アブ・サヤフとはフィリピン人のジャンジャラニが結成したイスラム原理主義者たちのテロ組織だ。彼らの活動のひとつには、テロ資金のため実業家や外国人観光客を誘拐し、身代金を得ることがあった。カトリックの多いフィリピンでは、どうしてもイスラム教徒は押され気味だった。アブ・サヤフはそうした背景のなかで、東南アジアにイスラム教で統治する国家をめざして結成された。そのアブ・サヤフが前述のリゾート地を襲った。身代金目当ての人質は21人だった▼結論からいうと、人質は377日間にわたって拘束されました。島から島へ、ジャングルを抜け、川をわたり野宿し、粗末な食事(あるだけマシ)に、武装兵に監視され、移動した距離は1600キロ。衰弱死、射殺、銃撃で逃げ遅れ、命を落とした人質もいるが、フィリピン政府軍が救出作戦とは名ばかり、人質に当たって死んでも仕方ない、とばかり容赦なく撃ちまくるのだ。いったいだれが助けてくれるのだ。もっとひどいのは、人質解放のため、政府に預けた身代金がテロ集団にわたらない、つまり政府でストップしてしまい、身代金は出したが人質はそのままという事態も派生している。実際に人質になった人数は20人だが、21人となっているのは架空の人物がひとりいるわけで、それがイザベル・ユペール扮するテレーズだ。彼女はソーシャルワーカーで、仕事仲間のソルダートといっしょにホテルに到着した途端、有無をいわさず、他の人質とともにボートに乗せられ、沖に停泊していた小型船に乗り換えた。武装兵たちは人質集団に、厳しく規律を要請する。「イスラム圏ではセクシーな服はだめ。女性は腕や脚をみせないように。男性はヘソから下まで覆い、妻以外の女性に触れてはいけない。そこの人、となりの女性が妻でないなら席替えを。他人の荷物を盗むな。盗んだら両手を斬られる。では順番に名前と職業を教えてくれ」▼なんのために聞くかというと、仕事によって金持ちかどうかの見当をつけるのである。「金にならんやつは放り出せ。お前は? 中国人なら金持ちだろう」「教師です」「家族は?」とひとりひとりヒアリングして、狙える身代金を算出する。雨がふれば飲料水の確保。巡視艇が近づけば人質はホロをかぶせられる。航行5日目に船はフィリピン南部の島に上陸した。映画は377日に及んだ誘拐事件を、ひたすらドキュメントで追っていく。人質はケータイで家族らと連絡を取り、指定する口座に金を振込むよう指示される。入金を確認したら人質を解放するのが手口だ。しかし人質はみな金持ちとは限らず、彼らが狙ったような身代金は集まらなかった。テロ集団を構成するのは、ほとんど壮年の男たちだ。人質のなかには若い娘もいた。リーダーらしき男は女性たちが既婚か未婚かを確認し、未婚であれば「お前の妻にちょうどいい」と、決めてしまうのである。決められた女性は大迷惑で、「彼と結婚するなら死ぬ」と言ったところ「今は圧倒的不利だ、こんな状況で刃向かっても仕方ない」と説得され、ジャングルのなかで即席の結婚式をあげる。彼女は妊娠し、安全なところで子供を産みたいといい、夫は納得して彼女を山から降ろす。しかし後に夫は戦死してしまう▼誘拐後109日目。2001年9月11日だった。アメリカの世界貿易センターに飛行機が突っ込んだ。この事件によって各国には「テロには屈しない」姿勢が強まり、フィリピン政府もまた、人質救出に積極的に取り組まず、それが377日と長期化した原因のひとつにあげられた。テロ部隊にすれば、政府軍の見境のない攻撃によって人質が危険にさらされ、人質が死ぬと身代金がとれないから、人質たちは「攻撃を中止してくれ」と自国の大使館に要請するよう、テロ部隊から指示されることもあった。政府軍の無差別攻撃にさらされるうち、人質たちはフィリピン政府がなにもしてくれないことを勘付き始める。誘拐事件の実態をレポートするため、テロ部隊の駐屯地に取材にきた、報道カメラの前で人質たちは信ずるに足りないフィリピン政府、自国政府、密林の外にいてなにもしてくれないすべての人々を非難する。377日目。突然密林に入ってきた政府軍の襲撃に、にげまどう人質たち。テロ部隊が一斉掃射され、人質も撃たれ、混乱のさなか、テレーズが救出されたところで映画は終わる。なにこれ…と言葉がなくなってしまう▼誘拐ビジネスは手っ取り早くテロ資金を稼ぐ常套手段になろうとしている。犠牲になった日本人もいる。一言でいうと、そこはなにも通じない世界なのだ。ただ生き延びるしかない、それ以外のことをこの映画はなにも教えてくれない。イザベル・ユペールは「三人のアンヌ」でもそうでしたが、いわば「埒外」の映画に抵抗なく出演するのですね。ノーメイクで着のみ着のまま、何日も着替えも洗濯も風呂もない。トイレもない。人質たちはジャングルでしゃがんで用を足す。イザベルにも例外ではありませんが、そういえば「ピアニスト」でも同じシーン、やっていました。イメージと裏腹なことでも平気でやる女優さんです。

 

 

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