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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年2月4日

特集 LGBTー映画にみるゲイ166 
私の少女(2015 ゲイ映画)

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監督 チョン・ジュリ

出演 べ・ドゥナ/キム・セロン/ソン・セビョク

 

シネマ365日 No.1651

ヨンナムがいたらなにもいらない 

この14歳の少女って、えらい子だわ〜。すごいことやるのよ(こわい気もするけど)…片田舎の海辺の町に、赴任したヨンナム所長(ベ・ドゥナ)の左遷の理由は女性問題。つまり、彼女はソウルのエリート警察官だったが、ゲイ関係で問題を起こし、所払いになった。本作は同性愛や女性、外国人に対する差別と偏見で凝り固まった田舎が舞台なのよ。過疎で住民はお年寄りばかり。ただ一人の若い男の稼ぎ頭、ヨンハの横暴を見てみぬふりをしている。ヨンナム所長は過去の傷が癒えず、酒がないと眠れない。着任した最初の日にしたことは、いやというほどペットボトルの水を買い込み、これまたどっさり買った焼酎を、アルコールだとわからないよう、ビンからペットボトルに詰め替えること。住民は女性エリートへの反発を露骨に示す。官舎に帰ればひとりテーブルにすわり、ペットボトルからコップにゴボゴボ焼酎をグイ飲み。食事らしい食事はおろか、テーブルには漬物ひときれもない。酒浸りだ。いいのか所長、しっかりしろと言いたくなる、やりきれない光景だ▼所長はある日、祖母から折檻されている少女ドヒ(キム・セロン)をみかける。ドヒの母親は失踪し、今は継父のヨンハと暮らしている。ヨンハはドヒを「クソガキ」と呼んで暴力をふるう男だ。祖母が飲酒事故で死ぬ。ある夜家に逃げて来た少女の体のアザで、所長はドヒが日常的な虐待を受けていることを知る。ドヒは、はじめて自分にやさしくしてくれた所長に吸い込まれるように傾いていく。そんなとき、ソウルから若い女性が所長を訪ねてきた。ソウル時代の恋人だった。だれもいない夕日の海辺。「まさかこんな…」ひどいところに来なくても、と恋人はいいたい。安食堂に入り、今からでもやり直せないか、夢だったオーストラリアへ行っていっしょに暮らそうと、恋人はかきくどく。所長は無言。恋人は「いつもそうなのね。傷ついて逃げるのよ」大きなお世話だと所長は強がるが、恋情もだしがたく恋人にキスする。さあそれを目撃したのが天敵ヨンハだ▼外国人労働者を違法雇用しているヨンハを逮捕した。彼はすかさずリベンジに打って出て、所長を未成年者への性的虐待で告発した。取り調べを受ける所長に同性愛が問われ、差別的な事情聴取がなされる。「服を着替えさせ虐待の傷をみた」「風呂にいれた」「痛々しくて抱きしめた」それらの行為をゲイへの偏見が歪めてしまう。ドヒは事情聴取で「所長にやさしくされたか」に「ハイ」、人形をテーブルに置き、どこをさわられたか実際にさわって教えてくれといわれ、なにも考えず脚やら胸やら、人形のスカートまでめくる。ドヒは若い警官に「所長はどうなるの」と聞く。「もしホントにドヒになにかしたのだったら刑務所だよ」ギョッ。(えらいこっちゃ)ドヒはあわてたであろう。愛する所長をどうすれば助けられる。あらん限りの知恵をめぐらす。保釈で出てきたヨンハは「変態女にべったりのクソガキ」とドヒを殴るが、ドヒは言い返す。「クソ野郎がばかなこと言っているわ。殴ってよ、女しか殴れないくせに」その夜ヨンハにさんざん酒を飲ませ、酔いつぶれたヨンハのそばでドヒは服を脱ぎ、全裸になって身を横たえる。送ってくれた若い警官が「もし殴られることがあったら連絡しろ」と教えたケータイを、オンにしてふとんのそばに。ヨンハをゆり起こし、だきつき「痛いわ、パパ、やめて、すごく痛い、どうかお願い、やめて」目が覚めたヨンハは「なに言ってンだ、このクソガキ、アバズレ、うるせえ、静かにしろ」大声で怒鳴りゆさぶる。はたから見れば大の男が少女を組み敷いている構図に、警官が踏み込んだ▼ここ、できすぎだとケチつけるよりDV男の逮捕に胸スカですね。ドヒは前回の聴取も「パパに言えと言われた通り言った」と訂正し、すべての罪をヨンハにかぶせた。所長は栄転の辞令をうけ(たぶん)ソウルに。ドヒに別れを告げに行く。「ごはんを食べ、学校を休まず、夜は出歩いたらだめよ」。ドヒは養護施設に預けられるらしい。送ってくれるパトカーの中で、所長は現場に踏み込んだ若い警官にきく。「あの晩何があったの?」「とにかくドヒは急いで電話したらしく、途中で聞き取れなくなり、あとはただごとでない悲鳴でした」そして続ける。「ドヒのことは可哀想に思いながら、よくない印象を持っていました。殴られて育ったせいか普通の子とはちがう。本心を隠し子供らしくない、小さな怪物みたいでした」…所長にすべてが一閃した。ドヒは体を張ったのだ。モンスターになって。車を先に帰らせ家にひきかえす。ドヒはいない。さがしまわると埠頭にいた。海をみている。所長は細い小さな背中を見つめる。ふりむいたドヒの両肩を持ち、身をかがめて聞く「わたしと」ヒタと見つめるドヒに「いっしょに行く?」所長にしがみついたドヒの目から、大粒の涙が、あとから、あとからこぼれおちる。キム・セロンは「韓国のダコタ・ファニング」なんて言われているけど、そんな言い方、おそらく必要なくなるわね。チョン・ジュリ監督のデビュー作。本作でベ・ドゥナは、コン・リー(「妻への旅路」)や宮沢リエ(「紙の月」)を抑え、第9回アジア・フィルム・アワードの主演女優賞を獲得。警官の制服がりりしく、よく似合っていました。

 

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