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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年2月5日

特集 LGBTー映画にみるゲイ167 
ナイトメア〜血塗られた秘密〜(2015年 ゲイ映画)

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監督 ジョン・ローガン

出演 エヴァ・グリーン/ジョシュ・ハートネット/ティモシー・ダルトン

 

シネマ365日 No.1652

選ばれし者 

フランケンシュタイン。ドラキュラ、切り裂きジャック、ドリアン・グレイという多彩な主人公が一堂に会しますので、ジャンルとしてはホラー、サスペンス、ミステリー、アクション、ちょっと無理があるかもしれませんが、ファンタジーだとしてもいけなくはない。それをゲイとしたのはひとえに主役エヴァ・グリーンの奮闘によります。いつのまにあいつ、こんな難問をスラスラ解けるようになったのだろうと絶句する、トビ級的秀才が突如クラスに出現したときの驚倒に似ています。エヴァふんするヴァネッサは、19世紀後半の典型的なイギリス上流階級のお嬢さん。となりの屋敷には同い年くらいの親友ミーナがいて、家同士、イケイケのつきあいだった。娘たちがいつでも行き来できるように、通用門は閉ざされたことがなかった。「あの日までは…」と意味深なヴァネッサの告白で、波乱怒涛の物語の幕はあがります▼すべての登場人物に暗い秘密があります。ヴァネッサのミーナへの思いが屈折して一大事件を呼び込んでしまうのですが、その前に主演級の登場人物を紹介すると、マルコム卿(ティモシー・ダルトン)は世界的な探検家。ひとり娘ミーナが失踪し、ヴァネッサとともに行方を探索中。イーサン(ジョシュ・ハートネット)はアメリカ人。曲芸撃ちの腕を見込まれ、ミーナ探しに加わる。なぜアメリカからイギリスに来たか、残虐な過去の理由がある。天才外科医のフランケンシュタイン博士は、密かにクリーチャー(人造人間)誕生に野心を燃やす。ヴァネッサが持ち込んだ怪物を解剖すると、皮膚の内部に古代エジプト語で絵文字が書かれていた。簡単にいうと、アマウネトはアメン・ラーの妻。アメン・ラーは初代・蛇の王だった。再生能力があり人の魂を喰うことにより永遠の命を保つ。アマウネトとアメン・ラーがいっしょに描かれていた。つまりアマウネトはアメン・ラーと交わり悪魔の子を産む意味となり、ミーナの失踪は魔物の到来を予言していた。ドリアン・グレイは不老不死の力をもつ耽美的・退廃的な魅力を備えた美貌の青年貴族だ▼ヴァネッサのキャラを一言でいうと、外は女神で内はモンスター。ヴァネッサの母とミーナの父が不倫する現場をみたとき、ヴァネッサの中にいる悪魔が振り向いた。「あの夜がきっかけでわたしの本性が現れた。美しく成長したあなた(ミーナのこと)は、わたしよりさきに恋人を見つけた。彼はインドに赴任する。インドは遠い。あなたに会えなくなる。どうすればいい」ヴァネッサは明日がミーナの結婚式という夜、ベッドでミーナを腕にくるみ、暗闇を凝視する。やおら床を出てミーナの恋人を誘惑し、起きてきたミーナにセックスを見せつける。結婚は中止。ヴァネッサは出入り差し止め。その日以来門は閉ざされた。ヴァネッサは重い病気になりロンドンの精神病院に入院。水攻めに薬物注射、頭はスキンヘッドで外科手術を施され、拘束衣でベッドにしばりつけられる。荒療治で、やっと正気を取り返したヴァネッサは、来る日も来る日もミーナに手紙を書いた。「あなたを必ず助ける。それだけがわたしの生きる目的。永遠の愛をこめて、あなたの親友、ヴァネッサ」何通もの手紙が引き出しにびっしりだった。しかしドリアン・グレイとの激しい交情がヴァネッサの中の魔物を解き放ちました▼ヴァネッサはたびたび助けを求めるミーナの幻を見ます。ミーナを裏切った罪の意識が、ヴァネッサを「中世界」(この世とあの世の中間にある呪われた人間がさまよう場所)に引き込みます。本作は「シーズン1」であって、ミーナが生きているのか死んでいるのか、彼女を連れ去った魔物の正体は何か、明らかにされません。ヴァネッサは自分の中にいる魔の存在に翻弄され、4週間にわたって生死の境をさまよう。マルコム卿、イーサン、フランケンシュタイン博士はヴァネッサの魂を奪われないよう死力を尽くして対抗します。敵の目的はミーナの恋人をヴァネッサが奪わせ、それによって嘆くミーナを失踪させ(魔物の巣窟に捕らえている、生死は不明)、裏切りに苦しむヴァネッサが、霊感を駆使してミーナを探しに来るところを待ち受けている、なんとなればヴァネッサこそが悪魔の子を産む能力の持ち主だから、というわけね。それならなんで初めからヴァネッサを拉致しないのかと思いますが、たぶらかすにしては、ヴァネッサの性格が強すぎたのではないですかね▼イーサンとドリアン・グレイが妖しい雰囲気のうちに意気投合する思いがけないシーンもあります。イーサンも謎の人物でして、彼も内部に悪を秘めているが、彼の悪魔はとことん邪悪ではないらしく、もだえ苦しむヴァネッサの額に封印を押し、彼女の悪の跋扈跳梁を鎮めてやる。自分を傷つけ歯を剥き、髪を振り乱し、下着をズタズタの血だらけにして、凄惨な形相を帯びたヴァネッサは(このシーンの一連の狂い方こそ、トビ級ものの驚きでした)静謐な肉体と魂を取り返します。いよいよ最強の4人はヴァネッサの霊感の導きによって、ミーナの居場所へ向かう。そこは劇場のくらやみ。天井や床下にひそむ魔物との死闘が繰り広げられ、ヴァネッサはミーナの呼ぶ声に振り向くが…▼底なしに強い魔界の霊力。ミーナを取り返せず、自信を喪失したヴァネッサは悪魔祓いの「エクソシスト」を神父に頼みにいきます。しかし彼はいう。「本当に悪魔祓いが必要でも、それは長く危険な闘いになる。数ヶ月あるいは数年もかかり失敗に終わることもある。自分の心を見つめ直し、答えてくれ。悪魔が君に触れたら神の手の裏側が触れたのと同じだ。ある意味で聖なることだ。特別で賛美すべきことだ。君の苦しさも神の恵みだ。そこで聞きたい。君の悪魔祓いがうまくいったとして、君はフツーの人間になりたいか?」ヴァネッサの瞳は不安のうちに大きく見開かれ沈黙。ここで「シーズン1」はエンドです。やりますね。悪魔との共存は神の手の表と裏だ。その苦しみを選ばれた者に与えられる恵みであり力であると受け止めるか、返上してフツーの人間になるか、腹をくくって答えてくれと神父は言う。「2」からその答えが展開されます。楽しみだわ。

 

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