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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年2月6日

特集 LGBTー映画にみるゲイ168 
晴れ、ときどきリリー(上)(2010年 ゲイ映画)

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監督 ファビアンヌ・ベルトー

出演 ダイアン・クルーガー/リュディヴィーヌ・サニエ

 

シネマ365日 No.1653

闖入してきた妹

「姉妹もの」はゆうに映画の一ジャンルをつくるのではないでしょうか。古典である「若草物語」を引き合いにだすまでもなく、揺るぎない姉妹の絆は時代を越えて受け継がれ、銀幕に生きている。いくつか、思いつくままあげると「レイチェルの結婚」「姉妹」「姉のいた夏、いない夏」「イン・ハー・シューズ」「つぐない」「ブーリン家の姉妹」「アナと雪の女王」「プラティカル・マジック」。姉妹愛は不滅ですな。たいてい粗筋は、できの悪い妹にできのいい姉とか、困らせる妹にやさしくかばう姉とか、才能のある妹を姉が助け世に出すとか、姉もしくは妹のピンチをどちらかが救うとか、母代わりに姉が一家の面倒をみるプチママであるとか、いろんなバージョンがあるのですが、驚くなかれ、本作にはそのすべてが含まれているのだ。驚異といわずなんという▼この映画、ダイアン・クルーガーが34歳、リュディヴィーヌ・サニエが31歳の作品です。ダイアンはこの2年後「バツイチは恋のはじまり」で新境地を開きますが、そのイントロが本作にあったような気がします。では本作はどんなダイアンなのか。完全に、いかれてしまう女を、あのクール・ビューティで大まじめに演じる(笑)。彼女はこの映画でコメディエンヌのキモみたいなものをつかんでいる。ファーストシーンのサニエのクローズアップもいいですね。ノンメイクで、ワイルドで挑発的です。この子、いつのまにこんな腹のすわった顔になったのだろうと思いました。ストーリーは「困らせる妹に対応するよくできた姉」のパターンですが、ありきたりの定番ものに、生き生きした独自の肉体を与えたのが女優ふたりのスキルです。ゲイ映画としましたが、少なくとも潜在的にゲイだと思います。姉は妹ために、弁護士という恵まれた仕事にいる夫と家庭を放り出して離婚する。妹は妹で「いつまでもわたしといっしょにいるといったくせに、話がちがうじゃない」と自分ひとりのものにならない姉に食ってかかる。あろうことか「姉さんの結婚は失敗だったわね」とうれしそうに言う。お前のせいだろ▼腹が減ると「姉さん、クレープが食べたい」「いいわ」いそいそと台所に立つ姉。妹は野生児であるから髪に櫛などいれたことがない。姉がとかしてやると「母さんよりうまいわ」そして急にしんみり「わたしは姉さんのお荷物ね。ピエール(義兄)といっしょにいたいでしょ」当たり前ではないか。一日中妹は遊びまわり、姉は妹に添い寝して童話を読んでやる。目が覚めると妹は男をひきこみ、義兄には、つぎの週末にくるときはディズニーの腕時計を買ってきてくれとねだり、買ってくれた時計をみて「悪くないけどバカっぽいわね。要らない」。姉は母の死後、ひとりにしておけない妹のために(劇中ではふれられないが、軽い知的障害と思われる)近所の主婦に家政婦をたのむが、妹は彼女の息子をセックスにひきこむ。万策つきた姉クララ(ダイアン・クルーガー)は自分が田舎の実家にひきうつり、妹リリー(リュディヴィーヌ・サニエ)といっしょに住むことにした▼夫ピエールの実母は、絵に描いたようにうまくいっていた息子夫婦の家庭に、闖入したリリーという異分子に嫌悪を隠さない。女同士の直感で、こいつは疫病神だとわかるのである。知恵もおくれている。それを指摘すると、息子は「やめろよ」とたしなめるではないか。母親は「リリーはあなたたちの子供なの!」と叫ぶ。当然ね。ピエールが妻に会うのは週末だけである。情緒不安定な妹にふりまわされている妻は、すっかり疲れはて夫を頼りにし「会いたかったわ」とピエールにかじりつく。妹は面白くない。彼女は夜、寝室の外にしゃがみこみ、気配でドアをあけたクララは仰天「そこでなにしているの!」「終わるのを待っていたの」ストーカーか、お前は。月曜の朝「旦那は帰った?」とリリーがきく。「きょうは何をしたい?」と姉がきき返す。完全に保護者である。クララは一日中妹に密着し、妹はそれを当たり前としているのだ。

 

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