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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年2月10日

特集 LGBTー映画にみるゲイ172 
ミス・アンの秘密の日記(2011年 ゲイ映画)

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監督 ジェームズ・ケント

出演 マキシン・ピーク/アンナ・マデリー

 

シネマ365日 No.1657

2015年6月26日

映画史上初めてホモセクシュアルを登場させたのは「Victim」(1961)だとボーゼ・ハドリーは「ラヴェンダー・スクリーン」で書いている。主演はダーク・ボガード。彼の役は既婚の法廷弁護士メルヴィル・ファーだった。当時ホモセクシュアルは法律で禁止されていた。ハドリーは男性のそれに対し、女性の同性愛が違法にならなかったのは、ヴィクトリア女王の想像力不足のおかげだとしている。ファーはゲイの友人バレットとプラトニックな関係にある。この時代脅迫の被害者の90%はゲイの男性だった。同性愛者を食い物にしている脅迫者の一味が、かつてファーとバレットの間にあったスレスレの関係に勘付き、一味はバレットを口説いてファーをゆすらせる。ファーが逮捕されるとバレットは激しく後悔し、ファーのキャリアと結婚生活を守るため自殺する。本作「アンの秘密の日記」の時代は1821年のヨークシャーだから「Victim」より100年以上古い。本作が劇中注意深く「レスビアン」という言葉を避けているのは、まだ「レスビアン」という概念がなかったからだ。もちろん女性が好きな女性はいたが、彼女らは仲のいい友だち同士であり、ちょっと変わった女達だという見方にくるまれていた。同性愛が異常者であるとか病気だとか言い出したのは、19世紀後半、台頭しだした性科学のとらえかたにも影響がある。とくにそれまで比較的ゆるやかだった女同士の関係に社会が厳しくなったのは、女を縛る男のルールからゲイの女たちが反発し、男の反対勢力になったのが一因だと、リリアン・フェダーマンの「レスビアンの歴史」にはある▼そんな重苦しい根っこがあることを考えると、本作のヒロイン、アン・リスター(マキシン・ピーク)は直情径行というか、冒頭の告白がこうである。「わたしが愛し愛されるのは女性だけ。それ以外の愛をわたしの心は受け入れない」さすがにハッキリ言い過ぎると思ったのか、アンは独自に考案した暗号で日記を書いた。この日記が解読されたのは150年後である。1970年代だ。ゲイ運動は社会運動になりつつあった。アンは貧乏貴族の一門。たいした財産ではないが資産家は資産家である。恋人のマリアナ(アンナ・マデリー)は医師の娘だから、結婚する以外食べていく方法はない。二人は熱愛関係だが世間体を気にするマリアナは、アンになんの相談もせず、富豪の年寄りの男性と結婚する▼いますぐ夫と別れ自分の家でいっしょに暮らそうというアンに、マリアナは現実的。「彼は日々老いているから死んだらあなたのところへ行くわ」「わたしの妻として?」「あなたを真の夫として」とはいうものの、マリアナは煮え切らず、アンとちょいちょい会うたびに、将来はいっしょに暮らすとなだめるばかり。夫は金持ちだからマリアナはなんの不自由もない。夫の機嫌をそこねて追い出されたら、アンと違って資産のない彼女は路頭に迷うだけだ。いくらアンが養うといっても、マリアナはアンほどお嬢さんではないし世間知らずでもない。爪はじきされ世間の笑いものになるのは目にみえている。自分たちの関係が公になるなら死んだほうがマシというマリアナに、アンはブチ切れる。自分との関係を恥ずかしいと思っているマリアナをアンは許せない。「あなたはわたしの求める女性ではないわ。わたしは強い女性がほしいの。あなたの長所はベッドだけ」マリアナも言い返す。「わたしなしであなたは生きられないわ。わたし以外の女性を愛せる?」▼アンはけっこう割りきった女性でして、兄を亡くしたばかりのミス・ウォーカーが遺産をひきつぎ、若くしてヨークシャー、いや国一番の資産家になったことを知ると、炭鉱を買い取る資産調達のため彼女に近づく。彼女が純情な気立てのいい子でしてね。強引でわがままで、ふつうなら欠点とみなされがちなアンの短所がひとつも気にならない。ミス・ウォーカーの伯母さんたちは、アンの家に留まり続ける姪を引取にくるが、ふだんおとなしい彼女がきっぱりと「わたしはここにいたい」と宣言する。驚いたのはむしろアンで「どういう噂がたつのかわかっているの? あなたとわたしがこうすることも本当にわかっている?」とキスするがミス・ウォーカーは落ち着いている。町ではアンの炭鉱乗っ取りに失敗した相手が、女同士が結婚したと新聞でスキャンダルに仕立てるが、ふたりはいっしょに暮らし平安な日々を得る。ある日マリアンヌが訪ねてきて「新聞に書いてあったのはホントのことだったのね。今なら夫と別れられるわ」と蒸し返すが、アンは「ミス・ウォーカーが大好きよ」といって昔の女を帰す。マリアナの夫は89歳まで生き、彼女は亡くなるまで連れ添った。アンとミス・ウォーカーは共に暮らし、コーカサス山脈を旅行中アンは熱病で死亡した。49歳だった。アンを熱愛する幼なじみのティブがいるが、アンは彼女の愛に応えず、ティブは未婚のまま家族のもとで生涯を過ごした。アンの肖像画が残っています。やや面長の、瞳のくっきりした美人です。2015年6月26日米連邦最高裁は全米の州で同性婚を認めました。アンの夢が叶えられるほうへ、世界は動いています。

 

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