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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年2月16日

特集 LGBTー映画にみるゲイ178 
秘密のかけら (2005年ゲイ映画)

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監督 アトム・エゴヤン

出演 コリン・ファース/ケヴィン・ベーコン/アリソン・ローマン

 

シネマ365日 No.1663

ひねりが効きすぎ~

いくつかの側面がからみあいながら進むので、ものすごくフクザツ。しまいに面倒くさくなってくる。マイアミの一流ホテルでアルバイトをしていた女子大生が、人気のデュオの部屋で一夜をすごし死んでしまう。デュオとはラニー(ケヴィン・ベーコン)とヴィンス(コリン・ファース)だ。女子大生モーリーンは大学の学生新聞のため取材を申し込んだところ、ルームサービスを注文してふたりの部屋に呼ばれたのだ。ラニーとヴィンスのモデルは50年代に人気絶頂だったジェリー・ルイスとディーン・マーティンだといわれる。スターの生活というのはおよそ無茶苦茶なもので、睡眠剤と覚醒剤にどっぷり。当局も注射でなければ野放しだったから、常習者は廃人の危機一歩手前にいるとしても大袈裟ではなかった。ラニーは女に自堕落でヴィンスは薬で神経をやられた狂気の暴力男。マイアミのホテルにいたモーリーンがニュージャージーのホテルでバスタブにつかって溺死した。睡眠薬と酒の飲み過ぎで事故として葬られたが、この事件でケチがついたラニーとヴィンスは人気絶頂にもかかわらず解散に追い込まれた▼15年後ジャーナリスト志望の野心に燃えるカレン(アリソン・ローマン)は、今は引退したヴィンスの自伝発行のためのインタビューを引き受ける。ヴィンスの提示したギャラは100万ドル。カレンは少女のころポリオ撲滅のキャンペーンで寄付運動に挺身していたラニーに励まされ、勇気を得た。以来ラニーは彼女にとって理想の男性だった。取材は暗礁に乗り上げる。ヴィンスは少女といってもいい若い歌手アリスを自宅に呼び、酒とクスリでハマったカレンとアリスのベッドシーンを映像に撮り、「モーリーンの件についてはいっさい書かない」条件を出す。いったいあの部屋でなにがあったのか、なぜモーリーンは殺されなければならなかったのか。謎を深めるカレンのもとに、ラニーが執筆中だという自伝の第1章が届く。つぎに第2章が届く。第3章で、モーリーンを殺したのはヴィンスだとラニーは告白している。なぜならあの部屋には3人しかいなかった。自分はやっていない。残るのはヴィンスだけというシンプルな消去法による▼たったここまでの展開に、ラニーとカレンの情事や、そのきっかけとなった飛行機内のエピソードや、英国紳士ふうヴィンスが豹変する暴行事件や、カレンの少女時代の思い出のラニーや、ちょこちょこ、ちょこちょこ、挟まってくるものだから凝っているのだ。彼らふたりが解散に至った真相は、モーリーン殺害もさることながら、ヴィンスがゲイであった、というのが真因だった。モーリーンの取材がおわってラニーがモーリーン相手にセックスしはじめたら、後ろからヴィンスがかぶさってきたのだ。ラリっているヴィンスを制止できず、ラニーは突き飛ばす。「お前のことは好きだが、おれは絶対にいやだ」と決定的な決別を告げる。一部始終をモーリーンは見ていた。当時1950年代は、ゲイやバイとわかっただけでショウビズ界は追放も同然だった▼さて、ふたりの最大の秘密を知ったモーリーンが一変するのだ。「わたし、ジャーナリストになりたいの。このことを書こうかしら。口止め料にいくら出す? 出すもの出してくれたらつきまとわないわ。眠いわ。ツイナールのせいよ。泊まっていくわ。あなたって世界一キュートなお尻、しているのね。ヴィンスもそう思ったのね。おやすみ」それが生きている彼女を見た最後だったとラニーの手記にある。たいした女子大生だな。そういえばアリスとの情交に及んだカレンの言い分はこうだ。「一線を超える女に興味があった。本当の自分と快楽に身を委ねる自分…。モーリーン、アリス、わたしまでも」いまだから「一線を超える」なんてきくと(なにを大げさな)と思うけど、この物語の時代である1970年代ではおかしくなかったのね。しかしこの映画の「フクザツ」はまだまだ底があって、カレンはとうとう最後の鍵をにぎる人物にいきつく。ラニーの秘書ルーベンだ。ラニーの女性関係の「後始末」が彼の仕事である。「ラニー様の女性の扱いは病のようでした」と言うほどだから「さぞや」と思われるが、このルーベンもどっこい、一筋縄ではいかないのだ。ルーベンはまず、ヴィンスがゲイであることを知ったモーリーンを、眠り込んでいる時に枕で窒息させる。翌朝モーリーンが死んでいるのを知ったラニーとヴィンスは大騒ぎになり、地元のマフィアの親分が贈ってくれた氷詰めのロブスターの木箱にモーリーンを積めニュージャージーのホテルに発送する。ニュージャージーで発見されたモーリーンの遺体は、その筋が手を回して事故ということにしてしまった▼それから15年、ヴィンスの庇護者であるマフィアのボスが生きている間、ルーベンはヴィンスに手を出さなかったが、彼が死ぬと過去のすべてをばらしてやる、いやなら100万ドルよこせと恐喝してきた。ヴィンスが自伝発行に100万ドルのギャラを要求したのは脅されたからだ。自業自得とはいえヴィンスは疲れ果て自殺を選ぶ。よくわからないのだが、ルーベンはなぜヴィンスを脅迫し、ラニーはそのままにしているのか。「わたしは礼節のある男だ」と自分で言っているように、かつてのご主人さまへの仁義か。そのあたりがタルイのだけど、まあなんとかこれで、登場人物が少ないわりに魑魅魍魎だったお話の決着はついたわけ。あ〜、疲れたのはこっちよ。寝るわ。

 

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