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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年2月17日

特集 LGBTー映画にみるゲイ179 
これが私の肉体(2001年 ゲイ映画)

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監督 ロドルフ・マルコーニ

出演 ルイ・ガレル/ジェーン・バーキン/メラニー・ロラン/アニー・ジラルド

 

シネマ365日 No.1664

女の浮遊感 

祖母(アニー・ジラルド)は認知症、息子をひとり失い、残った一人息子アントワーヌ(ルイ・ガレル)を、腫れ物のごとく扱っている両親、パパは大企業の創業者でゆくゆく息子に跡を継がせたい。息子は名門高校に通い成績優秀であるものの、自信がなく行き暮れて自分探し。たまたま小劇団のオーディションを勧められ、気むずかしい女性監督ルイーズ(ジェーン・バーキン)と出会う。アントワーヌには恋人クララ(メラニー・ロラン)がいる。クララはダンサーの卵。いつかデビューするためにレッスンに励んでいるが、最近アントワーヌのセックスがお義理である。ルイーズはルカという若い恋人がいた。彼はゲイだったがルイーズによれば「ルカは初めて女に欲情」し、何日か知らないが窓を閉めきってやったそうである▼死んだルカの欠員補充のための新人募集だ。ルカは体を売って生活しており、だれとでも寝ていた。ルイーズはそのルカが忘れられない。一目でアントワーヌに惹かれたのもルカの面影があったからだ。アントワーヌも成熟したルイーズに引き寄せられ、軽率にも役者になると決める。パパは怒って息子を家から追い出す。クララは「心ここにあらず」状態のアントワーヌに「あなたを失いそうで不安なの。本当にいまの生活を捨てるの? 理解できないわ」と嘆く。よくあるよね、一時の病気みたいな青春彷徨とかいうのが。アントワーヌにしても役者が好きでたまらないからなりたいわけじゃない、恵まれた家庭環境にありながらふわふわと、手応えのない自分に戸惑っているだけ。アントワーヌに紹介され、ルイーズに会ったクララは、ルイーズがゲイに興味を持つ女であることがすぐわかった。アントワーヌが席を外したとたん単刀直入に「寝た?」と聞く。ここがジェーン・バーキンとメラニー・ロランのからみだ▼クララの質問にルイーズは(ばかばかしい、フイッ)とばかり顔をしかめる。この(フイッ)の呼吸が言語道断といわんばかりの否定になっている。アントワーヌなんか愛していないが、ただひとりでいるのが肌さびしいのだ、という女の御都合主義がよく出ていた。ロランはそれを受け「のぼせないで!」とかぶせる。バーキンがうんざりしたように「行きなさい」ニワトリでもおいはらうように言う。クララはルイーズが放散しているペシミスティックな感性に、アントワーヌとはセックスはないと直感する。予算不足のため映画製作は中止。「ぼくはどうなる」アントワーヌはお先真っ暗。学校までやめたのに。そうそうパパは息子の馬鹿さ加減がショックで、心臓発作で倒れたのよ、命に別状はなかったみたいだけど。ルイーズがさっさと荷物をまとめながら「資金繰りのため打ち切りなんてよくあることよ」と完全に他人事。「ひどいよ、おいて行かないで」「何日か泊めただけよ」。泊めたというが、ルイーズだって友人か知人の家に仮住まいしていただけである。安ホテルに移ったルイーズをアントワーヌはおいかけていく。バーキンが例の低いしゃがれ声で「2年間女性と寝ていたわ。だから好きなのは女の体だと思っていたけど、でも違った。なにが好きなのかわからないから映画を撮るのかも。カラカスに行くわ、ルカを忘れるため旅をするだけよ。いっしょに来る? でも恋だと思わないでね」▼そうまで言われ行くやついるか? さすがのアントワーヌもこれ以上話してもむだとあきらめ、この煮え切らぬ若い男はすぐクララに方向転換。シーンは一転、クララがステージで前衛的なダンスを踊っている。よくみると相方はスキンヘッドの女性ではないか。ふたりのダンスがけっこうエロチックである。演技は絶賛、楽屋に引き上げたクララたちにひきもきらず関係者が訪れる。アントワーヌがやっと話しかけるがクララの反応はあっさりサヨナラ。くねくねとスキンヘッドがそばにいるのがどことなくアブナイ▼直接的なゲイのシーンではありませんが、全体にしゃれていて退屈させません。ジェーン・バーキンは傑作「ラ・ピラート」以来こういう女が合いますね。だれを愛しているのかちっともはっきりしない、いや心の底のではハッキリしているのだけど、現象面でコロコロ変節する。本作でも若いアントワーヌにすがりついたり突き放したり、結果どうでもいいとわからせて風のようにバイバイ。空気のように性の垣根を行き来する、女の浮遊感をよく出していました。「ラ・ピラート」の後日譚みたいなとこが、本作にはあったわね。メラニー・ロランが気性のしっかりした若い女性を好演しています。ルイ・ガレルはまたまた得意の「年上に愛されキャラ」です。今回は母親でなく、他人でしたけど(「ジョルジュ・バタイユ ママン」で、イザベル・ユペールと共演)。

 

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