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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年2月19日

特集 LGBTー映画にみるゲイ181 
マルコヴィッチの穴(1999年 コメディ映画)

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監督 スパイク・ジョーンズ

出演 ジョン・キューザック/キャメロン・ディアス/キャサリン・キーナー

 

シネマ365日 No.1666

意識だけの性的人間 

「意識高い系男子」の失笑のモトという「用語ベスト5」がある。「カテゴライズ/ゼロベース/コミット/セルフ・プロデュースあるいは自己投資/リスケ」。半端なカタカナ語をふりまいてカッコいいつもりでいるのがイタイということか。新国立競技場の整備費をめぐって下村文科相が舛添都知事に「当事者意識をもってやってもらいたい」と注文をつけていました。意識が高いとか低いとか、意識があるとかないとか、意識が軽いとかはイコール人物の価値レベルに直結している。意識とその人の人格を決定する代物。でも意識にはそれを入れる器(身体)がないと行き場がない。本作は一言で言うと、登場人物たちの「意識」が、俳優マルコヴィッチという「身体」を、出たり入ったりする幽体離脱をくりかえしているうちに、とうとうひとりが、女を奪いたいためにマルコヴィッチの脳を乗っ取るという、荒唐無稽なサイケな発想であっといわせました▼主人公クレイグ(ジョン・キューザック)は、腕はいいがうだつのあがらない人形師。女房ロッテ(キャメロン・ディアス)はペットショップに勤め、家にはいつも犬やらチンパンジーやオウムが同居していて、ロッテは旦那より動物のほうが大事みたい。クレイグは毎日せっせと人形をあやつり、たとえひとときでも人形と一心同体「他人になりかわる」願望を満たすことで、ショボイ現実の自分を耐えている。クレイグはやっと就職先をみつけた。7階と8階のあいだにある「7と2分の1」のフロアで、天井が低いため入居者はオフィスでも廊下でも腰をかがめて歩かねばならない。クレイグの上司はマキシンという美人だ。クレイグには目もくれない。ある日クレイグは壁にみつけた小さな穴にもぐりこみ、その穴がマルコヴィッチの脳に直結していて、クレイグの意識は15分だけマルコヴィッチの脳のなかにおれる。15分過ぎたらマンハッタン近郊の高速道路脇に肉体ごと放り出される。その体験をロッテに話し、ロッテはさっそくマルコヴィッチの脳に侵入した。戻ってきて「わかったの、わたしは変態性愛だわ。わたしは男になって女を愛したいの」と打ち明けた。夕食に招待されたマキシンとロッテは意気投合する▼マキシンをめぐってロッテとクレイグの三角関係が生じた。マキシンはロッテに「男のあなたが好きなの」というものだから、ロッテはマルコヴィッチの男の身体を借用し、マルコヴィッチになっているときだけ愛しあえる。具体的にどうやるかというと、マキシンが実際のマルコヴィッチを訪問する時刻を決めておき、その何時何分にロッテがマルコヴィッチの脳に入る、マキシンがセックスするマルコヴィッチは、ロッテが占有したマルコヴィッチだ。置いてきぼりにされたクレイグは面白くない。ロッテを監禁しマルコヴィッチの脳に入り、ロッテだと思っているマキシンに会う。彼は人形遣いの名手であるから、同様にマルコヴィッチをあやつり彼の脳を占領してしまう。クレイグ入りマルコヴィッチはある日俳優引退を宣言し、マキシンをマネージャーにして人形師として独立、たちまち名声を得る。いっぽうで壁に穴のあるオフィスの社長、レスター博士は、だれかの脳を棲家とすることでその人間に成り代わり、つぎつぎ、次のだれかの脳に移り住むことで代々生きてきた「脳乗っ取り屋」であり、このたびはマルコヴィッチの脳に入り込もうとしていた。そのためには居座っているクレイグを追い出さねばならない。博士はマキシンを誘拐し、マルコヴィッチの脳から出て行かないと女を殺すと脅す。マキシンが自分を棄てたと、アタマにきていたロッテが、穴の中まで追いかけてマキシンをおいつめると「この子はあなたの子よ」と思いがけない告白。ロッテ入りマルコヴィッチのときに妊娠した子である、よって「ロッテ、あなたの子よ」というのだ▼マキシンは「ロッテの子」を産み、母娘3人幸福に暮らしている。話をはしょるが、クレイグはマルコヴィッチの脳からでたものの、マキシンの娘の脳に入ってしまった。子供の脳は大人よりパワーが強いので、マルコヴィッチをあやつったときのようにあやつれない。クレイグは子供の脳に閉じこめられている。この映画でいちばんおもしろかったのは、意識と身体が別々で、ロッテはマキシンと女同士のセックスをしたいが、そのためにはマルコヴィッチの体を借りなければならないってとこ。皮膚や体温のない、意識だけのセックスをなりたたせているところは、生身の性的人間がいつか過去のものになるのでは、なんていう、アンドロイドとか人工知能を予想させて、ちょっとシュールだった。

 

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