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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年2月21日

特集 LGBTー映画にみるゲイ183 
スカーレット・レター(2004年 ゲイ映画)

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監督 ピョン・ヒョク

出演 イ・ウンジュ/ソン・ヒョンア/オム・ジウォン

 

シネマ365日 No.1668

イ・ウンジュに 

三人の女とひとりの男。ン? 三角関係にしたら女がひとり多いのでは。そうなのよね。写真館の店主が殺された、現場の発見者が妻のソン・ヒョンア(役名でなく俳優名で表記します)だ。刑事のハン・ソッキュは現場に急行し、妻のちょっと謎めいた雰囲気にたちまち関心を示す。刑事の妻がオム・ジウン。従順で貞淑な妻。オムの音楽大からの親友がイ・ウンジュ。ふたりは愛し合っていた。でもイ・ウンジュは刑事の愛人となり熱愛中。で、写真館の妻はどういう役割か。これがはっきりしないのですけどね〜。ホントいうと彼女が登場したばかりに話がややこしくなっただけで、要らないエピソードだったと思うのですけど、皮肉なことに、三角関係に全然関係ない彼女が、さびしい孤独な女をいちばんよく現しているのです。彼女は劇中「写真館にひとりでいるととても退屈で、彼が話しかけてくれると、うれしく、ありがたかったわ」。こんな率直なさびしさの告白に比べたら、夫の愛が薄れた刑事の妻も、クラブの歌手やっていて妊娠してしまった愛人の不安も、ちょっとパフォーマンスが大袈裟だったわね▼話を順序立てていきますね。刑事は妻と愛人の間を調子よく泳いでいるが、妊娠中の妻につきそって行った病院で、偶然看護師が「今度は中絶しないように」と話しかけているのを小耳にはさんで疑惑が広がる。そう。妻はイ・ウンジュを愛するあまり妊娠した夫の子を中絶したのだ。ならばなぜ刑事と結婚を。いうなればガールフレンドを刑事に取られたくなくて、いっそ自分が男と結婚してしまえば彼女は結婚できない、つまり彼女を奪われずにすむと考えたのでしょうね。複雑かもしれないけど、そうなのよ。ところが男とは愛人関係になっちゃった。刑事の妻は精神的に限界にきて、イ・ウンジュにもう夫とあわないでくれと頼みに行く。女が夫とあっていると考えるとつらくてたまらない。夫はどうでもいいみたいです。夫は妻も妊娠したし、愛人とは別れようと話をつけに行くが、妊娠している女に男の反応は「病院にいっしょに行こうか」で、女はアタマにくる。この映画、女がみな、妊娠だ、中絶だと生々しいのです。写真館の妻も夫の子供を産むのがいやで中絶を繰り返していた。登場人物たちの愛は、すべてどこかでくいちがい、いとしさとか、いつくしみとか、楽しさとか、愛情が本来相手に与える安らぎをひとつもかもしません。男がひとり女の間をバタバタ行ったり来たりしているだけで、だんだん退屈になってきます▼それを救うのはやっぱりイ・ウンジュです。ピアノのシーンがとても自然で上手で(自分で弾いています)、こんな詩的感性にあふれた若い経済力のある女が、なんであの自信過剰の女性蔑視さえある、給料も知れた刑事の愛人になったのかわからない。彼女のマンションの豪華なこと。メゾネット・タイプで室内は二階建て。斜面のガラス窓の下の浴室は広々として、はるか夜景が見渡せる。おお、室内ジムまで設置してあるのだ。どんなギャラもらっているのだろう。ひきかえ刑事は…これがたかが刑事の給料なんて、あわてて取り消さねばならぬほど立派なマンションなのだ。妻の実家はセレブにちがいない。だから音大まで好きな音楽の勉強をさせられるのだ。本題にもどらねば。イ・ウンジュはピアノだけで本作を救っているのではありません。男を愛したが男は妻と別れる気はない、おまけに車のトランクにとじこめられたとわかったとき「ぜんぶお前のせいだ、どうしてくれる、このメス犬」なんて言語道断であろう。流産した女は出血がひどくなり、身動きできないトランクの中は血の海だ。女は苦痛に耐えかねいっそ殺してくれという、男は殺してしまう。現職の刑事が音信不通でまる4日、とうとう探し当てた捜索班がトランクをこじあけると、素っ裸で全身血まみれでかろうじて生きている男と、頭部をシャツでおおわれた女の遺体。男はスッポンポンのまま転がり出、部下があわててズボンをはかせる▼何年かたったのだろう。男は警察をやめ、たまたま通りかかった写真館の前で夫殺しの容疑者だった妻にあう。容疑は晴れて犯人もわかり妻は写真館を続けている。妻は初めて警察の尋問でいわなかった事実を打ち明けるが、男にはもうそんなこと、どうでもよかった…元刑事と妻はもちろん離婚、イ・ウンジュは死に損、生き残ったのは写真館の妻。本作のあとイ・ウンジュは24歳で自殺しています。映画はたいしたことなかったけど、彼女のシーンにはキラっとしたものがあったのに、惜しかったわね。

 

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