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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年2月23日

特集 LGBTー映画にみるゲイ185 
キャロル(下)(2016年 ゲイ映画)

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監督 トッド・ヘインズ

出演 ケイト・ブランシェット/ルーニー・マーラ

 

シネマ365日 No.1670

天国と地獄のキャロル 

2016年オスカー各賞の発表は2月29日です。本作は主演・助演女優賞、脚色賞、衣装デザイン賞、撮影賞、作曲賞にノミネートされました(2月12日現在)。どの賞を取るかまだわかりませんが、1月、日本公開に合わせ来日したケイト・ブランシェットは「監督やルーニーといっしょだとよかったが、自分一人なのが残念、アカデミー賞の前哨戦は知っているが、ルーニーも候補だったのが嬉しい、日本の皆さんの言葉もルーニーに伝えます」と共演者と監督ら、チームの仕事をそつなく強調していました。「女性との恋愛をどう思うか」の質問には、「映画のこと、それともプライベートで?」と聞き返しています。彼女はインタビューの内容によっては「なぜその程度の質問しかできないの」と叱りつけるくらい真摯な人です。このときもはぐらかしたのではなく、女性との恋愛はあったと自ら明らかにした、と大方の見方は一致しました▼裕福なキャロルに比べ、テレーズは孤児同然の身の上です。写真の勉強をしているがろくなカメラを持っていない。安物のカメラでテレーズが自分を撮った写真を見て、ピンボケであるにもかかわらず、キャロルは自分がよく捉えられていることがわかる。結婚生活に不安を抱え、生活をも人生をも、支えるものを見いだせていない。自分に向けられている混じり気のない愛情に応えたキャロルですが、「娘を取るか、テレーズを取るか」の選択に迫られ、「テレーズ、あなたにはまだ先がある、つまずいてもやり直せる、あなたが幸福になるためならなんでもするが、今は私ができる唯一のことをするわ。あなたを解放すること」。そんな手紙を残してキャロルは去る。テレーズにしたら完全な裏切りです。「私ができる唯一のこと」をしてくれなどとだれが頼んだ。大きなお世話ではないか。自分より娘を愛しているから自分を棄てたのではないか、ボーイフレンドの言ったとおり、2週間で棄てられた。寂しさに耐えきれずキャロルに電話したら、短い沈黙のあと切られた。しかしキャロルはキャロルで、手紙に書いた「いつかあなたを迎えるときがくるまで」の言葉に偽りはなく、結婚生活に決着をつけテレーズとの再出発に向け進んでいた。弁護士立会のもとに、夫が弾劾する女性の恋人の存在を認め、しかも自分から誘ったことであり、ホテルで盗聴された内容は事実であるとキャロルは断言し「娘の養育は父親に委任する、しかし面会だけはさせてもらう、これだけは譲れない、もし断るなら裁判ですべてのいきさつをテーブルにのせる」。夫がこだわるのは社会的な対面であることを熟知したうえで、捨て身の交渉に出ます▼テレーズは「一度会いたい、もし来てくれなくても理解します」というキャロルからの手紙を受け取ります。迷いつつ会いに行ったテレーズに、キャロルは過去を清算し「仕事を持ち、家を借りたの、広いから二人でもいっしょに暮らせる、どう?」テレーズはまだ棄てられたというしこりが残っているから、いやだと断る。キャロルは「そう。それが答ね」。そこで二人はそれぞれ約束のある場所に行くのですが、テレーズはパーティーを途中で抜け、キャロルのいるレストランに向かう。心の中では夢にまで見たキャロルとの生活が始まることで胸がいっぱいだ。でも、ここは注目していいシーンだと言えますが、パーティーを出てからラストまで、キャロルもテレーズも一言のセリフもないのです。特にテレーズは硬い表情で無言を通す。レストランに来た。テレーズは「予約は」と止められたが「約束があります」とだけ言って奥に入る。騒めきの中で、テレーズの瞳だけが生き物のように動く。ルーニー・マーラは綺麗な目をしていますね。往年のオードリー・ヘプバーンを思い出します▼柱の陰になっていたキャロルに視線が止まります。パトリシア・ハイスミスはこう書いています。彼女はこの文章を書くために、400ページを費やしてきたのです。「キャロルが片手を上げてゆっくりと髪をかきあげるのを見てテレーズは微笑んだ。あまりにもキャロルらしい仕草だったからだ。テレーズが愛している、いつまでも愛するキャロルだった。もちろん以前とは違う形で愛することになるだろう。なぜならキャロルは前と同じキャロルではなく、一から知り合うのも同然なのだから。それでも彼女はキャロルであり、他の誰でもないキャロルだった。二人でこれから訪れる千の都市、千の家々のキャロル、二人が巡る異国の地、天国あるいは地獄のキャロルだった」

 

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