女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年2月27日

特集 LGBTー映画にみるゲイ189 
キャラメル(2009年 ゲイ映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ナディーン・ラバキー

出演 ナディーン・ラバキー/ジョアンナ・ムカルゼル

 

シネマ365日 No.1674

ときめきっていいね

ヒロインは4人。美容室のオーナー、独身で30歳のラヤール(ナディーン・ラバキー)、スタッフとしてシャンプー担当のリマ(ジョアンナ・ムカゼル)、カット担当のニスリン、中年の常連客で女優志望のジャマル。ご近所の高齢姉妹で認知症気味の姉の面倒をみているローズもいる。リマはふらりと入ってきた女性客に惹かれる。彼女は落ち着いた物腰で、予約はしていないがお願いしてもかまわないかと尋ねる。年の頃は30代半ば。リマは快く招き入れる。ナディーン・ラバキー監督の女性の感性がいかにもよくわかるのはここである。初対面のリマと客の彼女が交歓するのは、髪によってである。リマの指が彼女の髪をほぐし、温かい湯をかけ、シャンプーでときほぐしていく。頭皮をもむ心地よさに彼女はうっとりと目を閉じる。もともとリマは彼女をみた瞬間、気にいっているのだから、それはもう、やさしい指の動きである▼女性の髪には独特の繊細な感覚がある。一度確かめたいと思っているが、知る限りにおいてネコ、イヌ、ウサギ、ハトのつぎに人間の女性は撫でられるのが大好きだと思う。トラでもライオンでも、ヒョウでもウマ(撫でるのはタテガミか首)でもよく似た反応ではないか。リマのシャンプーに彼女はほとんど身を任せる。見上げる彼女とリマの視線がからむ映像は、心の温度を伝えるように明るく温かい。タイトルの「キャラメル」は、中東で(本作は、日本では珍しいレバノンの映画)脱毛に用いられる「キャラメル」の意味。中東の風習・礼儀として頭髪・まつげ・まゆげ以外にムダ毛があってはいけない、とされる。腕・脚・脇すべて。自宅で自分でも処理できるが、美容室でもやってくれる。だからラヤールの店でもキャラメルの脱毛を施す。オープニングに作り方が出る。砂糖、レモン汁を浸した水を煮詰め、琥珀色のカラメルを肌に塗り、乾いたところを一気にはがす。熱いし痛いが、慣れるとあまりにきれいなツルツルの仕上がりのため、この方法しか考えられなくなるそうだ▼ヒロインたちはそれぞれの問題をかかえている。ラヤールは不倫の相手がいる。男はいっこうに妻と別れる気配はない。ラヤールは店の外でクラクションが鳴ったら仕事もそっちのけで飛び出していくが、恋の終わりは時間の問題だとどこかで自分にいいきかせている。リスニンは婚約中だが処女でないことで悩む。中東では初夜に処女でないとわかったら殺されることもある。美容室の友人たちはリスニンのため処女膜再生手術を受けさせる。彼女をタクシーに乗せ「さっさと縫って新品に復活よ。電話がきたら仮縫い中だと言って」「当日は大きなハトを殺してシーツに血をつけなくちゃ」とまあ陽気なお友だちばかり。ラヤールは誕生日を祝おうとホテルを予約することにした。初めて知ったが、レバノンでは夫婦でないと同じ部屋は貸さない、夫婦であるという証明書がいるのだ。どこのホテルでも断られ、汚い安宿を見つける。狂ったように掃除してケーキやシャンパンや風船を用意したが、男は現れない。美容室の仲間たちに電話して事情を話すと、やってきたリマにニスリンにローズは、男をボロクソにこきおろし、飲んで食べて大騒ぎして友だちの誕生日を祝う。ラヤールは憑物が落ちたように、スッとした気分で救われる▼ローズは服の寸法直しを頼みにきたアメリカ人の初老の男性にデートを申し込まれる。ローズはちょいちょい、仕立物を美容室に届けに来る。ラヤールたちは「ローズ、すわりなさいよ、きれいなのに、ちょっと髪を直してあげるわよ」と言うが、ローズは姉をひとりにしておけないと、そそくさと帰るのだ。でもその日ローズが「お願いするわ」と言った。美容師たちはワッとばかり、ローズを女王さまも顔負けに仕上げる。デートにでかける夜、姉はローズにイヤミを言う。そんな姉をローズは見捨てることはできない。男はまちぼうけ。ローズは男をあきらめ、さびしくメークを落とす。ジャマルはあちこちのオーディションを受け、女優として「飽くなき挑戦」をやっていくつもりだ。ラヤールは彼女に好意的な警官とうまくいきそうだ。ローズは姉の手をひいて夕日の道を散歩に出た。ニスリンはめでたく結婚。リマは恋人の彼女の長い黒髪を、思い切り大胆なショートカットにした。恋人はそのスタイルが気にいっている。歩きながら、ショーウィンドウに写った自分に思わずほほえんだ。だれの人生にも必ずときめきがあるね…そんな思いにしてくれる映画です。

 

Pocket
LINEで送る