女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集「ベストコレクション」

2016年3月7日

特集「春の麗らのベストコレクション」⑦ 
チャイルド44 森に消えた子供たち(2015年 ミステリー映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ダニエル・エスピノーサ

出演 トム・ハーディ/ノオミ・ラパス/ゲイリー・オールドマン

 

シネマ365日 No.1683

よかったですよ 

重厚だわ。製作にリドリー・スコットが噛んでいるのね。お気に入りのノオミ・ラパスがちゃんと出ている。トム・ハーディは爆走マッド・マックスよりこっちのほうが主役らしくてよかった。ノオミ・ラパスのとんがった風貌は、どことなく翼竜の険しい顔を思い出させるのだけど、そういう妻をトムは愛している。彼ってこういう一途な男の役が多いですね。「欲望のバージニア」でも男の中の男だがジェシカ・チャスティンの手も握れない。ゲイリー・オールドマンとトムは4度目の共演です。オールドマンは「将軍」とは名ばかりの、田舎の自警団の責任者です。事なかれ主義だった彼が、モスクワから追放されてきたトムの、正義への情熱にうたれ事件究明に協力する。誠実な人柄と捜査官としての能力をトムは信頼し、自分が創設した新体制で直属の部下とします。オールドマンが明るく広いオフィスに引っ越し、ダンボールやらファイルを黙々と片付けている。半白の髪に日差しが差し込む。思わず声をかけたくなるような、素朴な公務員の姿を浮かび上がらしています。今さらですが、すごい役者ですね▼1953年のソ連。スパイの嫌疑をかけられた妻をかばったために、MGB(秘密警察)のエリート官僚、レオ(トム・ハーディ)は、荒廃した地方都市、ヴォリスクに左遷される。妻ライーサ(ノオミ・ラパス)は、レオが求婚したとき1週間泣き、独裁体制下で、生き延びるため結婚したというツワモノだ。妻が自分を愛していないことをレオは知っているが、共産党の集団思考体制から外れてだれも生きていけない社会であることもわかっている。「おれがきらいでも、この町がいやでも、いまはここにいるのだ」とレオ。ところがこの片田舎で、モスクワにいたときと同じ殺人が起こった。手口は同じだった。被害者は9〜14歳の少年。遺体は線路沿いの森か公園で発見され犯人は臓器を摘出する。開口部の手際がよく、外科の心得があると推測できた▼全体主義の非人間的な体制と、主人公夫婦のすれちがう内面の葛藤と、連続少年殺人事件。捜査を進められない理由は、事件はすでに解決しているからだ。スターリン体制下では「楽園に殺人はない」が原則で、少年たちの事件は事故として処理されていた。レオは犯行が止んでいないと結論、地元のネステロフ将軍(ゲイリー・オールドマン)を説得し、古い保管資料から少年の死亡事件を洗いなおす。同様の手口は44件にのぼった。目撃者をたずねてレオは妻とモスクワに行くことにした。妻は「この国で真相を究明するのは危険よ。粛清されるわ」「おれたちはもう死んでいる。さらに犠牲者が増える。犯人は旅行者だ。犯行はすべて駅の近くだ」「なぜわたしが協力するの」「ひとりで放っておけない」とまあ、この時点で妻は全然協力的じゃなかったのですが、命がけで自分を守ろうとする夫に段々ほだされ、もともとアタマのよい女性であるから、夫を助けて窮地を切り抜ける。拳銃はぶっぱなすわ、鉄パイプで殴りつけるわ、どうしてどうして、なかなか頑張るのです▼犯人は戦争の悲劇をそのまま背負っていました。第二次世界大戦中のヒトラーの報復舞台が各地に残存し、隊員たちは特殊な薬物によって少年の血を求めるようになった、犯人はそいつらのうちのひとりだという、地元の風評があった。レオがおいつめた容疑者のヴラドは、ドイツの捕虜収容所に2年間いた男で、ナチの手先として敗戦の報復に送り込まれた、彼は少年の犠牲を求め抑えがたい衝動にかられつつ犯行を繰り返していた、というわけ。そこにいたるまでに、妻に横恋慕したレオの部下の襲撃とか、解決までにいろんな妨害は入るのですがレオと妻は頑張る。モスクワに呼び返されたレオは、昇進のかわりに「殺人課」の創設を提案する。もはや時代は変わり、市民・国民の安全に国は責任をもたねばならないと表明する。組織のトップとなったレオは、将軍を呼び自分の右腕とします▼誤認逮捕のため銃殺され、孤児となった姉妹をレオと妻は施設に訪ねる。「ぼくと妻がきみたちのパパとママになる。妻は学校の先生なのだ。勉強を教えてくれるし学校にも行ける。家でいっしょにごはんを食べたり、絵本を読んだりもできるよ。心配はあるだろうがぼくらは精一杯、君たちを守っていく」「ふたりで話し合ってみてくれる?」。ボロボロの普段着に収容所カットの短い髪、心細そうに話を聞いていた姉妹は、おぼつかなげに部屋に戻った。廊下のベンチで我慢強く待機していた夫婦は、小さなトランクをさげた少女たちが、部屋を出てきたのを見る。決心がついたのだ。さあ、いこう、いこう。レオ夫婦が子供たちと手をつないで、階段を降りるうれしげな後ろ姿。暗い映画でしたが後味はよかったですよ。

 

 

Pocket
LINEで送る