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シネマ365日

2016年3月16日

特集「純愛物語」③ 
ロッキー(1976年 恋愛映画)

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監督 ジョン・G・アヴィルドセン

出演 シルベスタ・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/カール・ウェザース

 

シネマ365日 No.1692

「エイドリアン」

特集「純愛物語」

筋書きはおろか、セリフまで覚えてしまった映画なのに、何回見てもラストの「エイドリアン」の絶叫で胸が熱くなってしまうわ(笑)。脚本を書いたシルベスタ・スタローンが「ロッキー」の主役は自分がやるとガンとして言い張り、映画会社はどこのウマの骨かわからない奴が主演して当たるものか、そんな企画に金は使えない、予算は100万ドルだ、と突き放した。シルは劣悪な条件をのみ、手持ちカメラ、最小限のスタッフ、エキストラはフィラデルフィアの下町の人たちの協力、撮影はもっぱら昼、夜だとライティングの経費がかさむからで「太陽はタダだ」と監督。ジョン・G・アヴィルドセン監督との相性はよかったのだろう、シルはロッキーシリーズの締めくくりである第5作目をアヴィルドセン監督に任せている▼手作りというか、家庭内工業というか、そんな作業が続く撮影で、献身的に協力(むろんギャラなしだ)したのが、シルの妻サーシャだ。結婚は2年前だった。出会ったころのシルは、仕事といえばポルノ映画とか用心棒やボディガードもやって日銭を稼いでいた。「ロッキー」のような純愛物語を地でいくようなロマンスがあったのかもしれない。サーシャはシルの不遇時代をささえた糟糠の妻だ。ところが男とはまったく仕方がない、シルはサーシャと10年の結婚生活ののち離婚。ロッキー第4作目「炎の友情」で共演したブリジット・ニールセンと結婚する。よせばいいのに、と思ったシルのファンは多いはずだ。ブリジットはモデル出身。シルやドルフ・ラングレンと並んでも見劣りしない立派な体格なのだ。もちろんだからどうこう言うことはないのだが(正直いうとちょっとこわいが)、スタッフにまじって縁の下の力持ちをやるような地味な女性ではないはずだ。この結婚は2年で終わった。原因はブリジットの浮気だと本人が告白しているからホントだろう。なんでつまらぬゴシップ話を長々と書いたかというと、本作のヒロイン、エイドリアンとはいうまでもなく、シルがいちばん好ましく気の合うと思える女性であり、サーシャや現夫人はエイドリアンに原型があるのではないか、そう勝手に想像しているのだ。もちろん大きなお世話だろうけど▼エイドリアン(タリア・シャイア)はペットショップの店員である。兄貴のポーリー(バート・ヤング)はロッキーの親友で肉屋に勤めている。ロッキーはエイドリアンが好きで、毎日店に寄り、ジョークを言って笑わせようとする。エイドリアンが初勤務の日、亀を2匹も買って気をひこうとした。試合でボコボコに殴られ気絶しそうな日でもエイドリアンの顔を見に来る。その日はこうだ「今日はロッカーを取り上げられた。未練はないよ。寒いな。家まで送ろうか」「…」「ぶっそうだから気をつけろよ。じゃ、おれは帰るよ。(店の小鳥に)明日もジョークを聞かせてやるよ」エイドリアンは極端な内気で男の顔もまともに見たことがない。しまいにロッキーは兄貴に言う。「お前の妹は冷たいぜ。毎晩冗談言っているのに黙ってオレを残飯みたいに見ているだけさ」。兄貴が強引に説得しやっとデートにこぎつけた。スケートが好きだというからリンクに連れて行く。スケートは足首に悪いからロッキーは滑らず、エイドリアンのそばを歩きながらせっせと話しかける。「親父は、お前は頭が悪いから体を使えと言った。だからボクシングを始めた」「わたしの母は体が弱いから頭を使えと言ったの」「こんなこと言い出しておれもバカだな。バカと内気か。いいコンビになるよ」▼帰りにロッキーはエイドリアンを部屋に招く。部屋と言っても狭苦しい汚いボロアパートである。ロッキーの楽しげなおしゃべりは続く。「君の店でこの亀を買ったのだぜ」「わたしが売ったのよ」「君が勤めた最初の日だ。おれは覚えているよ。亀とエサ、底にひく小石もだ」エイドリアンはぎこちなくうつむいたきりだ。「おれがキライなのか」「居づらいの。あなたをよく知らないし男性の家も初めて。そんなに親しくないのに」「おれだって居づらいさ。たのむから居てくれ。メガネを取りなよ。きれいな目だ。ついでに帽子も脱げよ。美人だよ」「からかっているのね」「本当さ。キスしていいか。いやならじっとしてな。オレがするから」たのむから居てくれ、なんていう男をおいて女は帰れないですね(笑)。こんなセリフを自分で書いたシルの恋人同士のシーンって素敵でした。シルが体で馴染んだフィラデルフィアの下町、というよりスラムの雰囲気が良く出ています。シルがトレーニングで走っているシーン。手持ちカメラで撮っているので露天の店の親父やおばさんはだれも映画の撮影だと思わず「しっかり走りな」と、だれかがオレンジを投げたシーンはシナリオにありませんでした▼ロッキーにアルバイトで借金の取り立てをやらせている地元のボスは、世界チャンピオン、アポロ(カール・ウェザース)との試合が決まると「よくいままで頑張った。その日は特等席で応援するぜ。なにかと入用だろ。当座の小遣いにとっときな」と500ドル差し出す。ポールは妹とロッキーがすっかり仲良くなって、仲間はずれになったみたいでおもしろくない。エイドリアンのどこがいいのだときくと「しっくりくるのさ。いっしょにいるとお互いに安心できるのさ」。こんな素朴な愛の言葉もいいなあ、そうだなあ、と観客に(うん、うん)とうなずかせながら「ロッキー」はついに、アメリカ映画史上最大のサクセスをとげたクライマックスへ。ファイトシーン? もちろんよかったですよ、でも最後にこの映画を決めたのはやっぱり「エイドリアン!」だわよ。

 

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