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シネマ365日

2016年3月17日

特集「純愛物語」④ 
恋しくて(1987年 青春映画)

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監督 ハワード・ドイッチ

出演 メアリー・スチュアート・マスターソン/エリック・ストルツ/リー・トンプソン

 

シネマ365日 No.1693

ショートケーキ 

特集「純愛物語」

青春映画の古典ですって。そんなこといわれたらケチのつけようもないわね。今どきの少女コミックでさえ、もっとひねくれている。これ、高校生女子ふたり、男子ひとりが主役ですが、20代は20代なりに、30代は30代なりに、40代、50代になってもそれなりに胸キュンとさせる青春の甘酸っぱさがある。映画を見ながら(やれやれ、ネタはあがっているのだ、さっさとおしまいにしろ)といいたくなるような、見え透いた展開であるにもかかわらず、最後まで見てしまう。切なくて純情で、登場人物に悪人はひとりもいない、俳優たちは等身大で、むちゃくちゃ美人でもハンサムでもないかわり好感度抜群。こんな映画にグチャグチャ文句をつけて異常人格のように思われるのもイヤだね(笑)。ヒロイン、ワッツにメアリー・スチュアート・マスターソン。幼なじみのキース(エリック・ストルツ)が好きだ。ワッツはドラムを叩いて乱暴な言葉づかいで、男同士の友達のようにキースと付き合っている。マスターソンはこんな性格設定が多いですね。名作「フライド・グリーン・トマト」でも、自分を可愛がってくれていた兄が、鉄道事故で死んでしまってからすっかり人嫌いになり、彼女に手を差し伸べる人にみな突っかかるという反抗女子でした。でも彼女が認められたのはワッツ役でしたから、いうなれば本作はマスターソンの出世作です▼肝心のキースは高校のマドンナ、アマンダ(リー・トンプソン)に夢中。キースはガソリンスタンドでアルバイトしながら、もらったお金は父親に預け、父親は息子の大学進学資金に貯金している、つつましい家庭だ。パパは自分が大学に行けなかったから息子にはどうしてもいかせたい。さいわい成績は優秀だ。キースはでも進学に屈託があるよう。この親父さんがいい父親でしてね、アマンダにウツツを抜かしている息子に、適切な距離をおいて見守る。ワッツも心中おだやかではないが、キースが幸せになるならそれでいいと、一歩身を引いている。口は悪いが心の練れた、いい子である。それにくらべキースがけっこう調子のいいやつなのだ。金持ちのドラ息子ハーディが恋のライバルだ。ハーディは、アマンダは自分のものだと自信満々。キースなんか目じゃない、と思っていたところ、デートには誘うわ、パーティには同伴でくるわ、ハーディにしたら、こいつ、けっこう図々しく割り込んでくる男なのだ。大学にはいかないとあっさり父親の期待を裏切り、では卒業後なにをするかの青写真はまだ白紙、というのもお気楽青春映画らしい。スキンヘッドの不良男子が意外な味方でいいやつすぎるし、ワッツの突っ張りがどこまで続くのか心配になってもくるが、そこはもうあっけないくらい話しのわかったアマンダが、千里眼みたいにキースとワッツの中を見抜いて自分は身を引き、幼なじみの恋人同士はめでたく相思相愛、思いを遂げ合うのだ。いやがらせをいうわけではないが、この映画、女が譲ってばかりで結局のところキースは対して苦労もせず、おいしいところを持っていくのよね▼映画が目の保養になったり、観客が前提とする楽しさに応えるのは、それはそれで映画の役割だと思うけど、あまりノーテンキな位置設定には苦笑するしかないな。青春映画の古典ともちあげておいてひきずりおろすわけじゃないけど、欲を言えば、この年頃の子は、若いことがつらい、そんな自覚が意識するかしないかはともかく、潜在下でうごめくころだ。そこが皆無だからおめでたいといわれてもしかたない。ひとつだけ観客が共感できるとしたら、ワッツの片思いに、だろう。彼女にだけ、少しばかり「若いことのつらさ」がにじむ。自分が自分を充分にセルフコントロールするべきであり、それができれば本来かっこいいはずなのにボロをだした。自己嫌悪に陥らせてもいいところを、映画は青春映画のまるでマニュアルのようにヒロインを救う。多少胃もたれはするが、こういうショートケーキのような映画もあっていいのだ。

 

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