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シネマ365日

2016年3月22日

特集「純愛物語」⑨ 
ロング・エンゲージメント(2005年 ファンタジー映画)

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監督 ジャン=ピエール・ジュネ

出演 オドレイ・トトゥ/ギャスパー・ウリエル/ジョディ・フォスター

 

シネマ365日 No.1698

けっこうなミステリー 

特集「純愛物語」

こういうことって実際にあるのよね。あの人になにかあったら必ず自分にはわかると確信している人。胸騒ぎや胸をしめつけるような不安に襲われる。そのあとで家族や子供の事故死や、大怪我や災害があったりする。ヒロインのマチルダ(オドレイ・トトゥ)は、婚約者のマネクの戦死の報を受けた。でも彼女はこう思う。「マネクになにかあったら必ずわかる。この直感の糸をたどっても、彼の元にいけないなら、自分の首に巻いて死ぬ」。この映画にはスピリチュアルなものが色濃く滲んでいます。マチルダは何度も、何度もマネクが死んだとしか思いようのない報告を受け取るにもかかわらず、「いや、そんなことはない、彼はまだわたしに何も言ってこない」と、ガンとして死を拒否するのです。マチルダは孤児で、叔父叔母夫婦が親代わりになって育てた。このふたりがまたいい人たちで、普通なら頑迷と言うしかないマチルダの行動を支え、見守ります。後見人である弁護士も、いい加減にしないと親の遺産を捜索で使い果たしてしまう、と親身になって心配する。強情なマチルダが独自にやとった私立探偵は、どこまで誠実で仕事熱心なのか、自分の幼い娘にまで手伝わせ、奇跡の一報をもたらすのだ▼だから見ようによっては、ずいぶん調子よすぎるぞ、と文句のひとつも出るはずなのに、そこがジャン=ピエール・ジュネ監督の監督たるところでして、「ロスト・チルドレン」がそう、「アメリ」がそう、「天才スピヴェット」がそうであったように、ファンタジーの本質には、つぎから次「?」で引っ張っていくミステリーが潜んでいることを教えてくれます。マチルダが5歳、マネクが6歳。マチルダは小児麻痺を患い歩行が不自由だった。少年マネクが言った。「足が痛いのかい。ぼくがおぶって灯台をみせてあげるよ」▼マネクは第一次世界大戦に招集され、フランス軍の4人の兵士とともに、軍務を逃れるために故意に自傷したとして死刑の判決を受けた。5人は銃殺ではなく、フランス軍とドイツ軍の中間地に追い出され敵戦闘機の地上掃射を受け、死んだとされた。マチルダは希望を棄てず、戦場で実際になにが起きたのかを調査する。生き残った兵士、その家族をたどっていく。1920年代のパリやブルターニュにいるマチルダの視点と、戦場にいる兵士たちの行動を、フラッシュバックで伝える。あくまで希望を棄てない「陽」のマチルダもいれば、恋人を見殺しにした上官への復讐に燃える娼婦、兵役を逃れるため子作りしたいが自分はタネナシ。親友とやってくれと頼む亭主。妻は拒否するが、会ってみればいやな男ではなく、短い休暇の間に燃える。でも妊娠しなかった。夫は嫉妬で心をむしばみ、妻を責めた。その夫も親友も戦死した。「陰」を受け持つ女たちに、マリオン・コティヤールとジョディ・フォスターが出演します。シーンはわずかですがそらそうね。長々出ていたら、なにしろ少年少女の主役でしょう、パックリやられちゃうからね。それにしてもジョディ・フォスターの、ふくらはぎの筋肉ってこのときからすごいね▼弁護士はマネクが埋葬された墓にまで連れていくのですが、墓に向かってマチルダは「ノン」。こんなところにあなたはいない。マチルダの表情は確信にあふれ晴朗とさえしています。いったい戦争が終わって何年たったのだろう。私立探偵の一報が届いた。「彼は生きています。どこにも行かず、わたしが行くまで待っていてください」。マネクは記憶喪失していた。戦場で入れ替わった認識票に従い、ある夫人の養子となり、夫人は亡くなった。精神科医は、記憶は戻らないだろうと言うが「その限りではありません」と私立探偵は励ます。ラストシーンは、マチルダ、弁護士、私立探偵、叔父叔母夫婦が揃ってマネクを見舞うのだ。大団円である。近づいてくるマチルダを見て、木工から顔をあげたマネクは聞く。「足が痛いのかい?」…なにをかいわんや。ケチをつけるつもりはないけど、ず〜と苦労して探す役目は女で、男は命拾いして、記憶を喪失したからストレスも苦悩も彼を苦しめたふうではなく、金持ちの夫人の養子になって食べるにも困らず、日当たりのいい庭で木工しているのね…まあ、いいけど。

 

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