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特集「神も仏もない映画」

2016年3月25日

特集 「神も仏もない映画2」②  
アパートメント(1996年 サスペンス映画)

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監督 ジル・ミモーニ

出演 ロマーヌ・ボーランジェ/ヴァンサン・カッセル/モニカ・ベルッチ

 

シネマ365日 No.1701

とんがった三人組 

本作の5年後リメイクされた「ホワイト・ライズ」は、熱いラストシーンで幕を閉じました。なにしろ混雑きわまる空港で、床にひざまずいた恋人ふたりが、抱き合ってキスして離れない。それにくらべオリジナルはどうか。厭世観を通り越して嫌世観とでもいうのでしょうか。だれかが幸福になるのが腹がたってたまらないとでもいいたいような作り方です。リメイクはポール・マクギガン監督、オリジナルはジル・ミモーニ監督、「ホワイト・ライズ」に脚本として参加しています。ハリウッドでリメイクの話が出たとき、ただしラストは書き換えてくれ、と注文が出たのでは。ハリウッドはハッピーエンドが好きですからね▼粗筋の主筋はほぼ一致しているのですが、主人公たちの最後が真逆です。苦味・痛みがほとばしっていて、やっぱりヨーロッパ映画だな〜と思ってしまう。主演にヴァンサン・カッセルとモニカ・ベルッチがいます。かれらは本作の3年後結婚します。というのはこの映画が出会いだったのでしょうか。ベルッチは32歳、カッセルは30歳でした。ベルッチは「初の50歳ボンドガール」とか言われましたけど、この人あまり変わらないのですよね。彼女が大輪の花のように、女優としての実力を発揮するのが、本作の4年後「マレーナ」でした。監督はだれあろう、イタリア映画界復活の花形、ジュゼッペ・トルナトーレ。彼はベルッチにほとんど喋らせず、黒髪と茶色の瞳を持つ寡黙で挑戦的な女に仕上げました。未来の「マレーナ」は、この映画ではまだ初々しさを残す青春時代の名残があります。カッセルはキリギリスのように痩せてとんがった顔で現れます。なかなか熱演です。相思相愛のふたりの仲にわりこむのがロマーヌ・ボーランジェ。「伴奏者」から4年。一目惚れしたカッセルが自分の親友、ベルッチと恋仲になったことに耐えられず、ボーランジェはベルッチに預かった手紙をにぎりつぶしてカッセルに渡さなかった、ふたりは2年間引き裂かれてしまう、で、パリで偶然再会したのだけどこれまたボーランジェが横入りして合わせない▼うそばかりついて影で立ちまわっているのがボーランジェでして、でもベルッチとカッセルをすれちがわせてばかりいるのに、自己嫌悪に陥る。とうとう白状するのですが、そんなことして悪いと思わないのかとカッセルが責めると、自分は始めからあなたが好きだった、どうしてもあなたといっしょになりたかったと泣きながら主張、ボーランジェはあの通り可憐な風情ですし、カッセルにしたって一度は一夜を共にした仲ですから憎かろうはずはない、元の恋人のベルッチには男もいるらしい、ボロボロになった目の前のボーランジェを憎めなくなる。ベルッチは彼女を思いきれない中年の男に、部屋に踏み込まれる。男はライターを床にポイ。あっとういまに燃え上がり、爆発。男はベルッチと無理心中です。傷心のボーランジェは空港にいる。登場口に向かう通路にいるのがカッセルだ。ふうん。彼はベルッチではなくありとあらゆる策略を弄して自分を獲りたかったボーランジェを選ぶのですね▼ボーランジェはこんどこそ幸福になれる、と信じて預けてある荷物をとりにいく、待っているカッセルに声をかけたのは婚約者だ。そうそ。カッセルは婚約中でして、日本に出張するはずだったけど、たまたま見かけたベルッチの行方を追うために、放ったらかしていました。彼も相当ね。うろたえるカッセルは仕方なく婚約者とハグ。もどってきて抱き合っているふたりを見たボーランジェは(あ〜、やっぱり自分は幸福には縁がないのだ)とさびしい笑顔で別れを告げる。ひとことで言うと、だれも幸せにならない映画です。とくに自分の知らないところで恋を断たれていたベルッチが、心中させられてしまうのは情け容赦なさすぎ。まさか親友が裏で画策していた事実を知らず、励ましていたという、ヒロイン役としてはもうけ、でしたけどね。オリジナルもリメイクも映画としてはどっちもおもしろかったけど、役者のとんがりかたでは、やっぱりこっちの三人組だな。

 

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