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特集「神も仏もない映画」

2016年3月28日

特集 「神も仏もない映画2」⑤ 
私のような美しい娘(1974年 コメディ映画)

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監督 フランソワ・トリュフォー

出演 ベルナデット・ラフォン/アンドレ・デュソリエ

 

シネマ365日 No.1704

憂い顔のトリュフォー 

フランソワ・トリュフォーのコメディって、なんでこう面白くないのだろう。要は理屈っぽいのよ。トリュフォーって、女嫌いなのか、女好きなのか、よくわからない、複雑な男性ね。ひとことで言うと歩くコンプレックスだわ。それでいてよくもてるのよ。カトリーヌ・ドヌーヴといい、ジャンヌ・モローといい、ファニー・アルダンといい、トリュフォーと大の仲良し。あの手の強烈な女性は、トリュフォーみたいなひよわで小柄で、繊細な男性が好みなのでしょうか。この映画はひとりの女性の犯罪史を本にするため、社会学者が獄中の女囚に取材するという形で進みます。愛人を屋上から突き落とした罪で服役する女囚カミーユにベルナデット・ラフォン。社会学者スタニスラスにアンドレ・デュソリエ。ラフォンはトリュフォーのタイプですね。気の強い陽気なワルを、軽快に演じます。彼女は本作の3年後「恋のモンマルトル」でドヌーヴと共演します、その5年後ドヌーヴは「終電車」でトリュフォー作品に出演、同棲に至るのですから輪廻はめぐる、ですね▼ヒロイン、カミーユとかかわるのがサイテーの男たちです。学者先生はカミーユの犯罪歴をインタビューするうち、すっかり彼女の虜になる。最初の男は父親だった。幼児虐待の父親が、屋根にのぼって仕事しているときにハシゴを外し、父親は屋根から転落死。事故死と扱われたがカミーユは確信犯である。つぎは結婚相手のクロヴィス。社会学者は不幸な少女時代の代償を結婚に求めた、と解釈するが、カミーユにすれば「3週間も車でやりまくって、このうえ車で赤ん坊を産みたくないわ」で、姑の猛反対も受け流し、クロヴィスとなかば強引に結婚した。ある日学者先生が取材の続きにいくとカミーユが手編みの黄色い手袋をプレゼントしてくれた。先生がやさしくしてくれるから感激してせっせと編んだ、というのだが、そのつぎにいくと面会禁止だった。理由は同房の女囚の手袋を盗んだから。先生はそっと手袋を隠す▼3人目の男は害虫駆除業者だった。彼らはみな、とどのつまりカミーユと寝ることしか考えていない。しかしその男たちをふりまわすのがカミーユなのである。カミーユの数奇な運命にすっかりのめりこみ、先生は彼女が無実だという言葉を信じて証拠をつかむため現地に飛ぶ。カミーユは殺していない、愛人は屋上から飛び降りて自殺したのだ、偶然その瞬間を8ミリで撮っていた少年がいる、彼をたずね無罪を証明できる材料を先生は入手する。晴れて出所した彼女を昔の愛人が迎え、先生を殴り倒し、先生が気絶しているあいだに、カミーユは男を射殺し、先生の手に拳銃を握らせる、先生は「嫉妬に狂った殺人犯」にされてしまった。先生はムショ暮らしだ。きらびやかに着飾って面会に来たカミーユに「たのむ、ぼくは無実だといってくれ」と先生は泣きそうにいうが「刑務所なんてだれでもはいれるところじゃないのよ、本をもう一冊書けるわ」と女の冷たいこと。先生は弁護士に「姑はカミーユが殺したにちがいない、同居していたとき、オーブンに細工したと言っていた」情況証拠を言う。弁護士は「カミーユに自白させて君を釈放させる。あの女を葬り去る快感を味わってみたい」と意気軒昂で引き受ける。ある日先生が刑務所のテレビでみたニュースは、カミーユがくだんのオーブンのある旧家を買い取り、改装のため跡形もなく整地した、つまり証拠を隠滅させた、その計画は顧問弁護士によるもので、その弁護士こそカミーユを「葬り去る」はずだった男ではないか。先生は力なくうなだれ、刑務所の廊下をモップで拭く…▼ヘンタイばかりの主演者のなかで唯一マトモなのが先生の助手の若い女性エレーヌ。彼女は先生を尊敬しカミーユが煮ても焼いても食えないワルだと直感する。カミーユとは、女に好かれることが難しい女なのである。彼女は服役中の先生を待ちながら、せっせと仕事している。カミーユもカミーユだが、エレーヌの忠告も聞き入れず、まんまとひっかかる先生も先生だろう。同じ穴のムジナではないか。エレーヌが早く先生のばかさ加減に気づくことを祈るわ。というふうに、落ちていく男としたたかな女でこの映画はなりたっています。トリュフォーのとらえる人生の、あるいは男と女の一面の真実には、この種の厭世観が満ち溢れていますね。

 

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