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シネマ365日

2016年4月2日

特集「短くて充実した映画」② 
縛り首の木(1959年 西部劇映画)

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監督 デルマー・デイヴィス

出演 ゲーリー・クーパー/マリア・シェル/カール・マルデン

 

シネマ365日 No.1709

縛り首の木は新しい人生

特集「短くて充実した映画」

むろんゲーリー・クーパーの映画ですが、マリア・シェルもいいですよ。くどくどした説明なし、ムダな情景なし、テキパキときりかわるシーン、ほぼ一言で終わる主人公の短いセリフは、のちの「ダーティー・ハリー」に受け継がれたのではと思えるほど。クーパーは不倫した妻と弟を焼死させた過去をもつ医師フレール。金の採掘で湧くモンタナの片田舎にふらりとやってきた。コソ泥の若い男ルーンを助けてやり、召使に雇う。フレールとは(はかない)の意味です。過去を語らず、世間に深入りせず、そのくせ優秀な医師でポーカーはむちゃくちゃ強く、さっさと勝ってさっさと引き上げる。かくも孤影がついてまわる男はクーパーの独壇場である。彼は背が高くやせている。190センチはある。ひょろりと細長い体躯は「孤影」のヒーローにうってつけだ。クリント・イーストウッド然り。ずんぐり・むっくりではこうはいきにくい▼マリア・シェルはスイスから移住してきた娘エリザベスだ。父親は駅馬車強盗に殺された。馬車が崖から転落し、かろうじて助かったものの、彼女は意識不明のまま放置され、発見されたときは強度の日焼けと脱水状態で生死の境をさまよっていた。発見者は町の顔役フレンチ(カール・マルデン)だ。田舎町で、女といえば古女房しか見たことのない男たちは、垢抜けたエリザベスがまるでお姫様。それなのに彼女は医師のフレールが診療所に連れていってしまった。フレンチはしつこく彼女の周辺に出没することになる。やけただれた皮膚の炎症もおさまり、失明も免れた。フレールは部屋を暗くしてエリザベスの目の包帯を外すことにした。マリア・シェルが瞳を開き、はじめて顔の全貌をみせるのがこのとき。あどけなくて清楚で、落ち着いている。代々のシェル家の「目」であろう、実弟のマクシミリアンは男だけあって鋭かったが、やはりいい目をしていた▼フレールは過去の罪の重さから、エリザベスの愛を受け入れない。ルーンはエリザベスが好きである。フレールは人使いの荒い腹のたつ男だが、人命を救うのにわけへだてなく、躊躇しない彼を尊敬している。病癒えた自分をスイスに追い返そうとするフレールに、エリザベスは、この町に残って小麦を育て、牛を飼い、ひとりで生きていってみせると宣言する。フレンチは自分になびかないどころか、金鉱採掘のビジネス・パートナーとして契約をもちかけたエリザベスの芯の強さに、「ほれぼれするぜ」とますます恋慕をつのらせるのだ。カール・マルデンときたら、脂ぎった、汗臭いまでの恋情が体から立ち上ってくる、そんな男を演じてサイコーです。なかなか見つからない金鉱に業を煮やしてフレンチはもうやめた、と採掘を投げ出す。そのとき地震があった。根こそぎ倒れた大木の根っこに、エリザベスとルーンは、鈴なりにくっついている金の粒をみつける。フレンチは居酒屋を借りきって町中の男たちに酒をふるまい、古臭いものを全部焼き捨てセレブな買い物をするのだと、町の広場で焚き火を燃やす。エリザベスにはそれが不吉な予兆だった。フレールは妻と弟を焼死させて以来、炎に異常な反応を示すのだ▼往診から帰ってきたフレールはエリザベスを襲っているフレンチを射殺する。興奮した群衆は「あいつは悪魔だ」と叫ぶ占い師の挑発にのって、フレールを小高い縛り首の木にひきずっていく。縄の輪が首にかかったとき、フレールはルーンと坂道をかけのぼってくるエリザベスを見る。エリザベスは大きな袋から金をつかみだし、これをあげる、採掘権の権利書もあげる、全部あげるから彼を離してと言う。男たちは我先に金を奪い合い、権利書をひらひらさせて去った。エリザベスは、フレールに駆け寄りたいが彼はまたスイスに帰れというのではないか、そんな不安もあっておずおずと近づく。ルーンはフレールがどうするつもりかと見ている。もし女につれなくしたら、今度こそ自分の出番だと思いながら。でもそうじゃなかった(笑)。ラストシーンに流れる主題歌「縛り首の木」が決まっています。「生きることは命がけだ/おれの人生はそうだった/金とひきかえに自由を手にし/縛り首の木からおれは立ち去る/愛する人と肩を並べて/そのとき初めて気がついた/あの木は新しい人生/希望を与え運んでくれる/思い出の縛り首の木」

 

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