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シネマ365日

2016年4月3日

特集「短くて充実した映画」③ 
真珠の首飾り(1936年 コメディ映画)

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監督 フランク・ボーゼージ

出演 マレーネ・ディートリッヒ/ゲーリー・クーパー

 

シネマ365日 No.1710

「モロッコ」から7年 

特集「短くて充実した映画」

詐欺師マデリンにマレーネ・ディートリッヒ、彼女に恋するアメリカ人トムにゲーリー・クーパー。二人は同い年でこの時35歳だった。ディートリッヒには「自伝」もあるし、娘マリアの書いた大部の伝記「マレーネ・ディートリッヒ」もある。どちらを読んでも母娘とも、ゲーリー・クーパーについて、サラッとしか触れていないのだ。ディートリッヒは作り話の名人であったと娘は言っているから、「自伝」にしてもどこまで信用していいかはわからないのだが、当時ディートリッヒとクーパーの共演となると、話題性には事欠かなかった。「モロッコ」から7年後である。ドイツから渡米したばかりだったディートリッヒは、今や押しも押されぬハリウッドの大女優となっていた。娘の描く母ディートリッヒが最も精彩を放っているのは、監督や共演者や、同時代の女優への辛辣な批判を口にするときだ。逆を言えば強い関心を彼らに持った証拠だろう。してみるとゲーリー・クーパーに、ディートリッヒは興味も関心も薄かったにちがいない▼だからどうだと言うのではないが、なんとなくそんなことを考えながらこの映画を見ていた。フランク・ボーゼージ監督の軽快な手綱さばきで、女詐欺師マデリンは最高級の真珠の首飾りを手に入れ、スペインに高飛びする。パリの高名な精神科医の妻と、パリ随一の宝石店オーナーの妻に同時になりすまし、首飾りをまんまと巻き上げる手口は爆笑ものである。ディートリッヒが終始ニコリともせず、筋金入りの漠蓮女を演じる。彼女は娼婦もやった、子持ちの主婦もやった、女帝もやったし情婦もあった。17歳から働いてきて歌手でも女優でもあったが、可憐な女だけはやったことがなかったと思う。だから自家薬籠中の役柄である。クーパーはこれまた誠実が服を着たような好青年を多く演じてきた。劇中「人好きがするのさ」と自分のことを言っているのには笑う。一言で言うと、この二人がいい仲になるなど滅相もない、クーパーはディートリッヒの辞書のどこをくっても登場しない男性だったし、ディートリッヒとはクーパーにとって、歩く災難としか思えない女性だったのだろう▼その二人がとぼけつつ、恋に落ちる女詐欺師と一途な青年を演じている。ボケがクーパーでツッコミがディートリッヒだ。スペインに高飛びするディートリッヒがオープンカーをぶっ飛ばし、駐車していたクーパーに思い切り泥を跳ねかけてフルスピードで走り去る。二人は会うたびに大喧嘩し、ディートリッヒは窮余の一策で、税関を通る抜けるため、クーパーのジャケットの右ポケットに、盗んだ真珠の首飾りを滑り込ませた。それを取り返すため、食事の時は右側にクーパーを座らせ、それとなく顔を近づけて話しこむふりをする。首飾りを取り返すためディートリッヒと組むのが自称公爵。いつも塀の上を歩いている男が、貴族の振る舞いで、人の良い青年を騙しにかかるが、マデリンしか眼中にない青年は、どんな甘い言葉にも引っかからない。あまりの純情にマデリンはとうとう事実を打ち明け、真珠を取り返し、トムと一緒に持ち主の宝石商に届けにいく▼彼女の場合、もし警察に訴えたら懲役7年だそうだ。これから「アメリカに帰国して結婚するつもりだが、もし告訴されるなら式を延期する、7年間」というトムに宝石商は感動し告訴を取り下げる。ラストシーン。新郎新婦の付添人が騙された精神科医と宝石商のハッピーエンドというオチだ。しつこいようだが、ディートリッヒはクーパーのことを「モロッコ」の時よりはしゃべるようになっていたと言っていたから、よくよく「水と油」なのだ。ディートリッヒがこの映画で熱を入れたのは孔雀のような衣装と(ディートリッヒは有名な衣装フェチだった)宝石だった。劇中身につける衣装の選択に手抜きはなく、奇抜なデザインと裾を引く豪華なドレス、腕や胸に散りばめた宝石は自前だった。ためにセキュリティがいつもディートリッヒの身辺を警護していた。クーパーはおそらく、そういう女性を最も苦手とする男性だったに違いない。

 

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