女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

シネマ365日

2016年4月6日

特集「短くて充実した映画」⑥ 
ダーククリスタル(1983年 ファンタジー映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ジム・ヘンソン/フランク・オズ

シネマ365日 No.1713

よみがえる「操り人形」 

特集「短くて充実した映画」

本作はアニメではなく空想上の生物(クリーチャー)を、アニマトロニクスで動かした映画です。監督の一人ジム・ヘンソンは、世界最高の操り人形師であり、マペット作家の一人です。技術的な説明で紙幅を費やすのは、映画評の禁則事項だとわかっていますが、マペットについて簡単に触れたほうが、この映画の魅力や、技術の卓抜さとか面白さが増すと思えるので少しだけ。マペットとは操り人形です。もっと簡単に言えば動く人形ですね。ドールが抱き人形、飾り人形であるのに比べ、指で動かす指人形、片手遣い人形、棒遣い人形、あるいは腹話術の人形も含めた動く人形です。アニマトロニクスとは、着ぐるみでは表現できない恐竜や、実在しない動物や怪獣などの生物を模したロボットを使って撮影する技術。「ジュマンジ」のライオンやワニなどがそうでした。映画だけでなくテーマパークにも使われています。本作は巨大なカブトムシや、カメの一族や、怪鳥に似た一族というクリーチャー(空想上の生物)を、コンピュータ制御による、リアルで精密な動きで演出しています▼物語はファンタジー映画の王道です。1000年前、宇宙を支配するクリスタルが欠け、悪の化身スケクシスと善の化身ミスティクスに分かれた。世界は悪のスケクシスが支配し、3つの太陽が重なる大会合の前に、欠けたクリスタルを完全な姿に戻さないと、世界は永久に悪に覆われる。人間は一人も出てきません。人間らしき形象の男の子と女の子は出てきますが、何しろ地球外生物の世界ですから、彼らは「アバター」みたいなものです。少女キーラは植物と動物を動かす力を備え、少年ジェンは世界を救う使命を一身に担う救世主である。悪玉のスケクシスも善玉のミスティクスも、残存人口(?)は9人という、なんだか信じられないくらいのミニマムなスケールなのだが、悪玉は次の王位を狙って椅子の取り合い、善玉は残る力を振り絞り、クリスタル城に向かう。何となればその城こそ、今は悪漢どもがのさばっているが、もともと良識派ミスティクス一族の根拠だったのだ。暴力によって追放されたが、次なる平和の時代を築くであろう、ジェンに全てを託し、彼の行動によって悪玉たちは滅亡するであろう、という予測のもとに城へ帰還の旅に出たのだ。かなり大雑把な前提だと思うが、まあいいでしょ▼キーラもまたジェンと同じ種族の少女である。彼女も両親がスケクシスの侵略で殺され、善良な村人に育てられた。本来ならジム・ヘンソンが得意の操り人形で動かしたであろう、ジェンとキーラが、アニマトロニクスによって糸のない造形物として再起動しています。造形の妙を言うなら、悪玉・善玉の二大派閥は、それぞれ鳥とカメのバリエーションです。巨大な嘴、猛禽類の眼、威嚇するトサカ。王位継承争いは侍従長と将軍の、剣による決着となりますが、たださえ残存人員が少ないのに、これ以上減員は許されない、よって殺しあうのではなく、岩を剣で斬った方が勝ちという、合理的な決闘なのです。負けた侍従長は羽をむしられ、スーパーに並んでいる手羽先みたいに、ツルツルになった体で放り出されます▼善玉のミスティクス一族はカメの化身らしく、すべてにゆっくりである。身ごなし、動作、しゃべり方、歩き方、長い首を巡らし、ジェンにとくとくとサバイバルの使命をとき、オウグラを訪ねよ、と指示して長老は息を引き取りました。オウグラとは何者。それがびっくりするような醜怪な魔女です。善玉・悪玉がこの星に現れる前から宇宙を観察しているが、暴力や圧政に立ち向かう力は備えていない。彼女はしかし欠けたクリスタル片を保存しており、それを譲り渡すべき、正しい継承者を探している。ジェンは彼女のテストに合格し、クリスタルの一片を懐に、いざ、悪のスケクシスの城へ。本作の制作は1982年ですからもちろんCGはありませんが、造形物たちの精巧な作り込み、空想上の生物にふさわしい合理化がなされています。例えばスケクシスは手足二本ずつの生物だが、もう一組の手を隠し持っている。ズバリ「奥の手」です(笑)。侍従長のキャラは策謀家ですが、将軍が彼を嫌う理由は、声がキンキンしているというのだからひどい。キーラはジェンをかばい戦闘の最中、殺されますが星の未来を託す宇宙の支配者によって命を授けられ、ジェンと共に平和と愛を象徴する。「アバター」は本作のオマージュだったのでは。そう思えるくらい、一つも古くなっていません。

 

Pocket
LINEで送る