女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集「男前」

2016年4月20日

特集「男前3」⑦ コン・リー 
マイアミ・バイス(2006年 アクション映画)

Pocket
LINEで送る

監督 マイケル・マン

出演 コリン・ファレル/ジェイミー・フォックス/コン・リー

 

シネマ365日 No.1727

厳粛顔 

マイアミ・バイス(2006年 アクション映画)

この人が出現すると、いっぺんに画面が厳粛になる女優がコン・リーだと思う。ニコリともしない無表情、なにを考えているのか忖度することさえ憚られる冷たさ。閉じられた薄い唇にはいつも緊張がにじむ。大口開けて笑ったことがあるのかどうかもいぶかられる…という映画が多かったのですよ、見た限りでいえばね。「ハンニバル・ライジング」では天才ハンニバルの叔母、博学にしてハンニバルの愛を捧げられるレディ・ムラサキ、「シスター・オブ・ドラゴン 天女武闘伝」では妹を愛する武術家の姉、「シャンハイ」では裏の顔を持つ革命家。べつにゲタゲタ笑わなくてもいいのだけど、イメージが固まってしまうのじゃないかと(大きなお世話だろうけど)心配する。日本人女性と中国人女性の違いは、脚の長さとタイトスカートの着こなしがサマになるかならないか、ではないかと思うときがある。コン・リーはなぜかあのキュッと引き締まったキツネ目とタイトスカートがよく似合うのだ。それならいっそ、天下無敵のタイトでバシッと勝負といくか▼そこで本作をとりあげたのだけど、マイケル・マンの監督のわりにゆるい映画だったわ。コリン・ファレルがやたら目立って、かわいそうにジェイミー・フォックスは出番が削られ、FBI捜査官フジマときたらいかつい顔で登場したわりには、なにしに出てきたのか途中で意味不明になってしまうのよ。フジマに扮するのはキアラン・ハインズよ。BBCの「ROME」ではジュリアス・シーザーに扮した重量感のある人。コワモテの捜査官が睨みを効かせていたのは最初だけ、ソニー(コリン・ファレル)とリカルド(ジェイミー・フォックス)にたちまち主導権が移り、この映画の主軸であるはずの「潜入捜査」の裏切り者がだれか、とうとう最後までわからずじまいのまま捜査は打ち切り。キミら、FBIを馬鹿にして、ひどい目にあっても知らないぞ(笑)。ところがもっとかわいそうなのはジェイミー・フォックス。この人それでなくとも脇なのに「ソックリさん」でオスカーに輝いたばかりに、派手でもなければ地味でもない、主役でもなければ主役を食う脇役でもない、中途半端な使われ方でソンをしている。本作では捜査の最中に女房のナオミ・ハリスが誘拐され救出しなければならない。素朴な疑問としてききたいけど、潜入捜査というのは敵方に潜入して情報を取り、犯人逮捕あるいは組織撲滅のために動く捜査官でしょうが。刑事の女房が人質にとられたということは、潜入捜査の情報がもれたってことでしょ。だったら正体がわかってしまっているのに、なんでいちばん先にジェイミー・フォックスを殺さないのよ。そうか。コリン・ファレルばかり可愛がって、と思われたくないためにジェイミーの出番を誘拐騒ぎまで起こして作ってあげたわけか。こんな見え透いたトロイ筋運びが、映画を失速させたとしか思えない▼それに、ラストがやたらゆるいですね。捜査官は女を逃してやるのだ。この女がイザベラ(コン・リー)で、麻薬組織のなかで資金洗浄を受け持つ。非常に重要な役割だと思うのだけど、イザベラは終始「謎の女」ふう。具体的な分担が希薄で、犯罪の中枢から離れた場所にいて、いつのまにかソニーと愛しあう仲になる。刑事も女も、よくそんなことしているヒマ、あるわね。おまけにタイトルのマイアミがどこの街でもよかったみたいに存在感が酸欠だ。町に「存在感」というのはおかしいかもしれないが、ベガスとか、ロスとか、ニューヨークとか、シカゴとか、ニューオリンズとか、舞台となる街には主役なみの演出が要求されてしかるべきだ。「ゴッド・ファーザー」に20世紀初頭のニューヨークの風景がなかったら、映画の背骨を抜かれたのも同様だったでしょ。最近の作品で言えば「リスボンに誘われて」で、ジェレミー・アイアンズが歩くのがポルトガルの首都でなければ、あの映画の値打ちは半分になっていた。始発の地下鉄が走るロスの夜明けがなかったら、いくらトム・クルーズでも「コラテラル」のケツは閉められなかった▼マイアミという観光都市にして犯罪都市、ワイルドな暗黒面を太陽の下に隠し、世界のセレブの金と欲望を貪欲にすすりこんでいく街。それなのにこの映画のマイアミって、どこまでもノーテンキだわ。それを代表しているのがコリン・ファレルのお坊っちゃん顔だったわ。本作は大ヒットしたけど中身は薄かった。記憶されたのはコン・リーの例によって厳粛な顔。くどいようだけど、ばれたら命はないのが潜入捜査官でしょ。命ぎりぎりの刑事たちのわりには、コリン・ファレルもジェイミー・フォックスも自信たっぷり、心配も疑問も不安もなさすぎる。コン・リーの「厳粛顔」と好一対なのはシャレかい。

 

Pocket
LINEで送る