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特集「男前」

2016年4月22日

特集「男前3」⑨ ダイアン・クルーガー 
ラスト3デイズ(2008年 サスペンス映画)

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監督 フレッド・カヴァイエ

出演 ダイアン・クルーガー/ヴァンサン・ランドン

 

シネマ365日 No.1729

妻を脱獄させる夫 

ラスト3デイズ(2008年 サスペンス映画)

副題が「すべて彼女のために」です。ヒロインのリザ(ダイアン・クルーガー)が帰宅した。警察が踏み込んできて殺人罪で逮捕した。夫ジュリアン(ヴァンサン・ランドン)は驚いて止めようとするが警察はわけも言ってくれない。妻は20年間の実刑で刑務所へ行くことになる。これに対しジュリアンはどんな行動をとったか、というのがこの映画の内容です。地味だけどよくできていると思うな。どこかひとつでも(おお、やるな)と思ってしまうシーンがある映画って、記憶に残るものね。ハリウッドの「スリーデイズ」は本作のリメイクです。ところで、あなたがリザと同じ立場になったとする。あなたの夫はどんな行動をとり、どんな状態になると思いますか。▽面会室で家事育児が大変だと妻に嘆き、泣く▽妻の顔を20年の間みないですむから、どこかしら、うれしそうである▽必死で弁護士をさがす▽世間体が悪いので子供を連れて引っ越す▽妻を逮捕した警察に火を放ちにいく▽とじこもってウツになる…▼ジュリアンの場合はこうでした。妻の無実を信じ一人息子のオスカルを連れ、こまめに面会に通う。夫以外のだれもがリザが犯人であると疑っていない。リザは退勤後、会社の駐車場で知らない女にぶつかり、消火器が転がっていた。消火器を所定の場所へもどし車を発車させた。リザの車のかげに彼女の女性上司の死体が横たわっているのは見えなかった。遺体発見後、警察は消火器についた指紋と、犯行の直前、リザがその上司と口論していた情況証拠によって逮捕したというわけ。口論くらいで殺人になるなら、うちなんか命がいくつあっても足りないわ。かなり大雑把な警察だと思いますが、20年の刑ときたら冗談ではない。子供は母親を避けるようになり、自分は家族のお荷物だと感じたリザは自殺を図る。一命はとりとめたが、きちんとインシュリンをとる必要のあるリザは治療を拒否し、緩慢な自殺を試みる。最愛の妻が生きる気力を失くしつらい思いに陥っている。ジュリアンは居ても立ってもおれない▼ジュリアンには真犯人を追及するとか、裁判で無罪を勝ち取るとかの発想は全然なく、脱走あるのみだったのは「妻といっしょにいたい、子供もいっしょに育てたい、離れたくない」家族愛一筋なのね。20年も別々に暮らすなんて言語道断である。だれにもそんなことさせない!という固い決心があるのだ。7回脱獄に成功した男が書いた本があり、ジュリアンは著者に会いに行く。彼が伝授した「脱走の教え」が、じつに具体的で現実的なのだ。いわく「どんな刑務所にも隙がある」「脱獄後は家族・友人・恋人と縁を切り、一切連絡を取らない。たいていの脱獄犯は家族や友人宅で捕まっている」「子持ちの警備員でも殺す覚悟を持て」「脱獄後の生活には莫大な金がかかる。まず大金を用意しろ」「30分で道路は封鎖される。速やかに国外に脱出しろ。他の国の空港から新聞も届かない小さな国へ行け」「パスポート、身分証明書を偽造する」。ジュリアンはこれを忠実に実行し、パスポートの偽造で騙されボコボコにやられたり、麻薬密売人を殺して金を奪ったり、今までの国語教師とはうってかわった暗黒の男をやってのけます。それもこれも「すべて彼女のため」▼ジュリアンの父と母、弟にもひそかに別れを告げる。父親は息子がなにを企んでいるかわかるが、止めようとしない。警察が踏み込んで息子の行方に心当たりはないかと尋問しても「あんなやつと口もきいたことはない」と憎らしげに言って騙し通す。リザが刑務所を移送されるまであと3日。脱獄決行の日が迫る。それまでに淡々と描かれてきた何気ないシーンが一挙に意味を持ちます。リザのデータをニセデータといれかえ、入院させるよう持っていく。病院についたリザは夫の計画に仰天するが白衣を着せられ強引に車に乗せられる。脱獄逃走犯は夫婦に男児の家族3人連れという情報が流され、道路は封鎖。厳しいチェックをかいくぐったのは、ジュリアンが事前に手配しておいた「相乗り」で「同乗者6人」は検問から外れていた。空港にファックスで入った似顔絵は一瞬のタイミングで搭乗手続き後に。病院の脱出から「小さな国」を歩く家族3人のシーンまで、息もつがさない緊迫がいい。憂鬱好きのフランス映画にしては珍しいハッピーエンドです。

 

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