女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集「新宿2丁目を連れて歩きたいボーイフレンド」

2016年4月25日

特集「新宿2丁目を連れて歩きたいBF3」② 
ゲイリー・オールドマン|裏切りのサーカス(2011年 事実に基づく映画)

Pocket
LINEで送る

監督 トーマス・アルフレッドソン

出演 ゲイリー・オールドマン/コリン・ファース/ベネディクト・カンバーバッチ

 

シネマ365日 No.1732

標的は「もぐら」 

ゲイリー・オールドマン|裏切りのサーカス(2011年 事実に基づく映画)

とうとうめぐってきたヤな男、ゲイリー・オールドマン。いくつかの作品でたいていケチをつけてきたから、今回は総集編といこう。なんだっていっぺんにカツラだとわかるアタマでいきなり現れるのよ(笑)。東西冷戦下、イギリスとソ連諜報部が水面下で情報戦を展開していた時代。ゲイリーの役はイギリス諜報部(通称サーカス)の幹部スマイリー。上司であるコントロールは部内に二重スパイ「もぐら」がいることを確信していた。調査を始めたが失敗、その責任をとって彼と右腕のスマイリーは引退を余儀なくされ、スマイリーの部下ピーター(ベネディクト・カンバーバッチ)は閑職に追いやられる▼サーカスの現地実働部隊であるリッキーは情報が筒抜けになって恋人が殺されたことにより、サーカス内部の「もぐら」の存在を思い知り、情報部監視官に連絡、監視官は引退したスマイリーに調査を命じ、スマイリーはピーターを呼び戻し、ロンドン警視庁のメンデル警部とともに調査を始める。コントロールによって「もぐら」と目されるのは4人の幹部。現サーカスのリーダーであるパーシー(コードネーム鋳掛屋)、パーシーを傀儡として実権を握っているとされるビル(テイラー=仕立屋、コリン・ファース)、ブランド(ソルジャー=兵隊)、エスタヘイス(プアマン=貧乏人)だ。スマイリー自身も(ベガマン=乞食)として候補にあがっていた。ソ連諜報部(KGB)の大物スパイ・カーラと「もぐら」の結びつき、スマイリーと妻アンの関係、パーシーらが強硬に進める「ウィッチクラフト作戦」の実態。米ソ大使館内部の寝返り、KGBのし掛けた巧妙な偽装、作戦の失敗で死んだとされていたプリドーの生存、プリドーとビルはゲイの関係だった▼登場人物も多いし、事実関係がこみいっているから粗筋だけでもけっこう複雑なのだけど、知っておかないと説明のしようのないことがあるから最小限度、簡単に書きますね。スマイリーは幹部4人全員があやしいと網をかけ、そのひとりエスタヘイスを追及して隠れ家を聞き出すと、リッキーを使ってパリからニセ情報を流してパーシーを揺さぶる。隠れ家で待ち伏せするスマイリーの前に姿を現したのはビルだった。彼は「ぼくは東側を選んだ、西側は醜くなった」と自分の選択を述べ「カーラが、君は優秀で危険な人物だ、ただひとつの弱点は妻だと言った。ぼくがアンの愛人になれば君の判断が曇ると思った、その通りだった」と巧妙な分断作戦を明かす。拘束されたビルは屋外にいたときブリドーに狙撃され死ぬ。ブリドーはビルが「もぐら」だと気づいていた。愛憎相半ばしたのか、せめて自分の手で死なせようと思ったのか▼ゲイリー・オールドマンは引退の年齢に達した老スパイですから、派手なアクションはもちろん、目立った動きもなく、小腰をかがめて歩く姿は老人そのものです。最愛の妻は不倫、自分は退職(解雇のようなもの)、あとは時間がきて死ぬだけという落魄の身に、突如まいこんだ現役復帰ですから、少しは張り切るかと思うと全然。どこまでも思慮深く、自制心が強い。自分は無害な男だと周りに思わせることができ、通りですれちがってもすぐ忘れられる、だがよくよくみれば彼の知性や頭脳の凄さがわかる、彼が入ってくると部屋の温度が変わるという男の役です。いくら奥さんに不倫されても、それさえプラスアルファになるような、かっこよすぎるきらいがあります(笑)。一時頬が丸くなり(ああ、みっともない、チェッ)と思ったけど、体重をしぼりダークな三つ揃いを着て、細身のナイフみたいに登場する。サーカスのオフィスがこれまた陰気な空間で、薄暗い小部屋に無機質なデスクが並ぶ。70年代を再現するために古い電話、タイプライター、それらだけでなくぎっしりファイルのつまった古典的な資料室。きめこまかいセットも本作のみどころです。命令は絶対で文句をいう部下はひとりもいない。彼ら他人の人生をさぐり、秘密をあばき、懐柔し裏切りを仕掛ける。自分の人生はない。他国に潜入して一生帰国できないこともそこで落命することもある。そら陰気にも寡黙にも無口にも、なりますわね。彼らはみな学生時代から優秀で、外務省のスカウトの目にとまっていた人材ばかりです。思想に生きることを選んだ男たちの抑制が、スクリーンの緊張感を保ち、ラストはこれ。入室したスマイリーが無言で椅子を引いたのは幹部会の最上席。彼は引退どころかサーカスのトップとなったのだ。監督、ちょっと、そこまでやるか(笑)

 

Pocket
LINEで送る