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特集「新宿2丁目を連れて歩きたいボーイフレンド」

2016年4月27日

特集「新宿2丁目を連れて歩きたいBF3」④ 
エイドリアン・ブロディ|ジャーロ(2009年 ホラー映画)

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監督 ダリオ・アルジェント

出演 エイドリアン・ブロディ/エマニュエル・セリエ/エルサ・パタキ

 

シネマ365日 No.1734

不思議な整合性 

エイドリアン・ブロディ|ジャーロ(2009年 ホラー映画)

なんでエイドリアン・ブロディのこの映画なのか。彼にはオスカーを受賞した「戦場のピアニスト」というもっともな作品があるのに。同作の監督はロマン・ポランスキー。彼の奥さん、エマニュエル・セニエとブロディは本作で共演しているがそれは大した理由ではない。いちばん興味があったのは、八の字眉のブロディとダリオ・アルジェント監督の組み合わせが面白そうだったから。正直にいうと「戦場のピアニスト」は、この手のものに弱いハリウッドが高い評価をつけただけで、ブロディはあの通り終始半泣き顔のせいか、主人公はさっぱり精彩を放たなかった。音楽に理解を示しながら割を食ったドイツ軍将校のほうが印象に残っているわ。本作のブロディはダリオのおかげで随分ちがいますよ。イタリアの腕利き刑事でそれもかなり変わり者という設定なのです。監督について全然先入観のない、どんな素直な観客でも「??」と思えるシーンの飛躍とストーリーの唐突感は、ダリオの映画ではフツー。でも彼が凡庸な監督でない証拠は、本作のラストの、センスのいい締め方ひとつみてもよくわかります▼ブロディは刑事エンツオと犯人の二役。ギャラは一人分だったからと、ブロディが裁判沙汰にした映画です。ダリオ・アルジェントについて簡単に書くと、数多くのホラーをてがけているイタリアの監督。「サスペリア」「インフェルノ」「シャドー」「フェノミナ」の佳品があり、なかでも「サスペリア」の大ヒットは「エクソシスト」や「オーメン」などオカルト・ホラーへの道を開きました。ダリオのホラーの見せ方の特徴として、殺人と死体が極彩色なこと。趣味わる〜と思うかもしれませんが、これがどこか耽美的・悪魔的な絵画みたいなのです。額にザックリ斧を食い込ませるとか、唇に大きなハサミを入れるとか、残虐このうえない行為をぎりぎりのところでカメラの角度を変えたり、ストップモーションを使ったりして、最悪の悪趣味から体をかわす。そんなことよりこの刑事とヒロイン、リンダ(エマニュエル・セリエ)の在り方というのがどこまでもダリオ・アルジェント的なのです▼まず誘拐殺人を専門の刑事は警察の地下にデンと一室を構え、食事にピザを注文、妹が行方不明になったと訴えにきた姉リンダを追い返し、妹の写真を見て「美しい」とつぶやく、まるで芸術家のような刑事。ローマに来た外国人女性ばかりを狙った連続誘拐殺人は6件目、みな切り刻まれた死体となって発見されている。妹のセリーヌもつかまり監禁されている。同じ場所で、先に誘拐された女性(これが日本人)が殺され、つぎは自分の番だと思うと生きた心地もしない。犠牲者は「イエロー」というダイイングメッセージが残された。リンダは直感で、犯人は「黄色」ではなく黄疸であると断定する。キミは医者か? ところが刑事はたちまちその判断にとびつき、瞬時に病院を特定し(ローマ中に病院はひとつしかないみたいに)肝臓を患う患者なら定期的にくるはずだと、看護師を問い詰めている最中、チラッと影がみえた男を「あいつだ!」と叫ぶ。何ですぐわかる? 大捕り物となって、といいたいが犯人はあっさり逃げてしまう。刑事は余裕綽々でリンダに「酒でも飲むさ」なんて言うのだ。そもそもいくら誘拐された妹の姉だからと、捜査に素人を同行させていいのかよ。リンダはいつから探偵になったのだ▼刑事には暗い過去があって、少年のとき自分の目の前で母親が強姦殺人にあった。少年は犯人の顔を覚えていた。数年後、犯人をみかけた少年はメッタ刺しにして殺す。現場に来た警官に少年がわけを話すと見逃してくれたというのだ(???)。こんな警官アリか。犯人のアパートに踏み込んだ刑事は、肝臓病の薬をぜんぶ棄ててしまう。いつのまにかリンダの部屋に忍び込んでいた犯人は、リンダに自分を殺したら妹の居場所はわからない、空港までおれを連れて行って無事飛行機に乗せたら居場所を教えてやると言う。というのも、刑事に薬を全部棄てられ、きちんと飲まなくちゃいけない薬が切れたものだから、だいぶ具合が悪そうなのだ。こんなフラフラしている中年男のいうことをいちいち聞かなくても、監禁場所を教えたら薬をやる、命だけは助けてやるからゲロしろと、脅しあげたほうが早いと思うのだけど▼しかしまあ、ああだ、こうだと押し問答しながら犯人は墜落死。リンダは刑事になんで犯人を殺すのよ、これで妹のいる場所はわからなくなった、妹が死んだらあんたのせいよと詰め寄る。刑事はケロリとして、連続誘拐殺人犯のいうことなんか信用できるか、妹はちゃんと探しだすと自信満々だが、妹が助かるのは刑事の捜査のおかげではない(笑)トまあ、わんさかボロが出てくるのに、ついそんなものどうでもよくなってしまう不思議な整合性というか、監督の面目躍如というか、そういうダリオ・アルジェントの映画なのです。ブロディやセリエの、まことしやかな演技が一役も二役も買っているのはもちろんですが。

 

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