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特集「ベストコレクション」

2016年5月4日

特集「風光る五月のベストコレクション」④ 
キャリー(2013年 ホラー映画)

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監督 キンバリー・ピアース

出演 クロエ・グレース・モレッツ/ジュリアン・ムーア/ジュディ・グリア

 

シネマ365日 No.1741

クロエとジュリアン 

特集「風光る五月のベストコレクション」

ブライアン・デ・パルマの「キャリー」は最高だった。にもかかわらず本作を見たくなったのは、あの完成度の高さをどうやって越えるのだろうと興味津々だったことと、監督がキンバリー・ピアース、キャリーにクロエ・グレース・モリッツ、母親マーガレットにジュリアン・ムーア、体育のデジャルダン先生にジュディ・グリア。このメンバーと監督となると(うまそうだな)と舌舐めずりするか、食指が動くか、しない? ピアース監督はオリジナルに忠実です。奇をてらったことは何もしていません。ただ、冒頭、ジュリアン・ムーアの絶叫が響き渡ります。スッピンで、血だらけになってベッドでのたうっている。ものすごい形相です。こういう物の怪の憑いた役に、とことん、張り切るのがジュリアン・ムーアという人ではないでしょうか▼そうだ、何故ジュリアンは七転八倒しているのかを言わねば。彼女はお産をしているのです。奇妙でしょう。産院でもなければ助産婦もいない場所で、たった一人「この痛さは何なの。もしお召しになるのなら、神さま、安らかに死なせてください」と叫びながら荒れ狂っている。いい年して、お産だってことわからないの? マーガレットの「ぎゃーっ」とひときわ高い叫びとともに、血まみれの頭が現れます。脚の間に横たわる赤児にマーガレットはパニック状態。夢中で裁ち鋏を振りかざし、赤ん坊を突き殺そうとした寸前、自分を見る目に吸い寄せられかきいだく。神とバイブルに頭を焼かれた母親の、狂信的なキャラはそのままなのですが、娘に及ぼすジュリアンの比重が重くなっています。母親は娘が普通ではないと感づいている。だからこの子を守るには世間から隔絶するしかない。勉強も学校でなく、自宅学習を申告したが受け入れられず、学齢に達したキャリーは母親の危惧の通り、高校生になっても「クイア」(変わり者)とからかわれ、いじめられている。しかしキャリーの念動力は年齢とともに成長し、自分をからかった男子の自転車をひっくり返す、鏡を割る、本を引き寄せるなどから始まり、だんだん世界を支配しうる予兆を顕在化していきます▼イジメ女子グループが、散々キャリーを笑い者にします。キャリーは高校生になっても、初潮が来たことがわかりませんでした。母親が「血は欲情の結果であり汚らわしい」として、女の子に生理があることを娘に教えなかった、これも奇妙ですし、学校でそれなりの指導もしていなかったのか、腑に落ちないこともあるのですが、とにかくキャリーはショック状態に陥る。体育のデジャルダン先生だけがやさしく、何も怖いことではないと教え、お母さんに会って話したいというと、キャリーは異様に震え上がる。キンバリー・ピアースとは言うまでもなく「ボーイズ・ドント・クライ」で一躍注目を集めた監督です。今年(2016)48歳。シカゴ大学、コロンビア大学に学ぶあいだに短編映画を製作し、初の長編「ボーイズ・ドント・クライ」で絶賛されます。彼女自身ゲイであることを公表しています▼母親のキャリーへの執着が異常に濃く、キャリーもまた、母親の束縛を逃れようとしながらも強く愛している。母親に刺されながら、逃げるばかりで母親を傷つけようとはしない。ただ防御のため強い念波を発すると、家中の刃物が母親に突き刺さり、結果的には死なせてしまうのですが。キャリーに対するイジメが悪質なあまり嫌気がさし、グループからイチ抜けたスーは、ボーイフレンドのトミーが、キャリーの詩を褒めたことから「プロム(卒業パーティー)には、キャリーをエスコートしてあげて」と頼む。今までの罪滅ぼしだというのです。最初はからかっているだけだと警戒を解かなったキャリーですが、トミーが真面目に自分を扱ってくれているとわかり、パーティーに着ていくドレスを自分で作る。ところがキャリーの動画をネットに流したため、停学になったクリスは逆恨みし、とんでもない復讐を企んでいた▼クライマックスのキャリーの超能力炸裂はもはやノンストップ。でもオリジナルではひとかけらの理性もなく、全員を血祭りにあげるキャリーですが、本作ではちょっと違う。プロムの会場(体育館)で、原因不明の惨事が起きていることをニュースの速報で知ったスーは、クリス一味の仕業と見当をつけ、キャリーとトミーを助けに駆けつける。すべてを破壊して、クリスも車ごと炎上させてキャリーは帰宅した。行かせまいとさえぎる母親を納戸に閉じ込めて、パーティーに行っていたのだ。母親はどこにいる…。母親はキャリーを殺そうとします。強姦され身ごもり、産まれたとき殺すはずだったのに殺せなかった、それが仇となり、娘は異様な超能力の怪物になってしまった。キャリーは「ママのせいじゃない、おばあさんか、パパに似たのかもしれない」と庇うのです。クロエちゃん、健気。キャリーは家ごと壊滅させる。その直前、心配のあまりやってきたスーに「女の子よ」と一言。スーは妊娠していたのです。キャリーはスーに「出て行って」と命令し、念力でそっと家の外に出し、地面に下ろす。やさしいではないですか。オリジナルのキャリーは殺戮マシーンと化していましたけど。暴力的な破壊力で言えばオリジナルの鋭さには及びませんが、本作に盛り込まれた母娘の、壮絶なまでの愛情がドラマに厚みと繊細な叙情をもたせています。おどおどしたクロエの顔が、だんだん魔物じみてきたのは怖かったです。ジュリアン? 彼女の女優力こそ念力というに等しい。

 

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