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特集「ベストコレクション」

2016年5月9日

特集「風光る五月のベストコレクション」⑨ 
ザ・レッスン/女教師の返済(2014年 社会派映画)

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監督 クリスティナ・グロゼヴァ/ペタル・ヴァルチャノフ

出演 マルギタ・ゴシェバ/イバン・ブルネフ

 

シネマ365日 No.1746

女って強い 

特集「風光る五月のベストコレクション」

ヒロインのナデ(マルギタ・ゴシェヴァ)は小学校の英語教師。教室で生徒のお金が盗まれた。担任の彼女は盗んだ生徒に「正直に申し出たら警察には知らせない」とチャンスを与えるが犯人は名乗り出ない。家に帰ると銀行から借金の督促に来ている。夫は返済に充てた金を使い込み、3日以内に全額返済しないと家は取られるのだ。ナデは金策に走り回ることになる。恋人の窮状を救うため、20分で10万マルクを用意しなければならなかった主人公が、ベルリンの街を走り抜ける「ローラ、ラン・ローラ」という傑作があったが、本作もそれに負けない。ナデは自分から縁を切った父親に、恥を承知で借金を頼みに行く。父親は娘の頼みなら聞くがどうせ原因はそこにいるダメ亭主だろうとズバリ。こんなやつと結婚するから、母さんは泣きながら死んだのだと夫を面罵するが、どうやら親父の言うことが事実らしく、夫は一言も反撃しない▼この映画、ナデの借金返済までの3日間を取り上げたもので、アクションも不倫もありませんが、家を取られまいとする生活感にあふれた彼女の、獅子奮迅の解決策に引きずり込まれます。父親の条件はただ一つ。後妻に対する無礼な行為(彼女の写真を黒く塗りつぶした)を謝罪せよ、なのだが、逆にナデは「父さんは、母さんが死んですぐ女を引き込んだ」と父親への鬱憤を爆発させ、金策は潰れる。ナデは副業に翻訳のアルバイトをしている。報酬の支払いは遅れがちで、社長にかけあうと、振り込みがあり次第払う、そういうがその日まで待っておれない。ナデは町のサラ金に頼み金を入手して銀行に払い込む。ところが間もなく銀行から電話。利子がついて、まだ足りない、今日の閉店時間までに支払わないときは、家は差しおさえられる。ナデは走りまわって金をかき集め、銀行が閉まる7分前に駆け込んだ。息も切れ切れにカウンターで小銭を差し出す。女性行員は冷たく「振り込み手数料が必要です」。金額は日本円にして100円かそれ以下だろう。でもナデの手元には一文も残っていない。ナデは町に出て、道行く人に寸借を頼むが、だれも貸してくれない。もう恥も外聞もない、ナデは噴水に腕を突っ込み、投げ入れられた小銭を集め銀行に走る。「閉店です」とガードマンが突き放す。「いいのよ。事情があるのだから」とさっきの女子行員が受け付け、コンピューター処理が間に合えばいいけど、とつぶやきながらコードを試し、「入ったわ、完了です」とニッコリ▼ナデは精も根も尽き果て、ヨレヨレになって帰宅。夫に足を揉んでもらう。夫が何を話しかけても返事もできず眠りこむ。次なる問題はサラ金の返済である。翻訳の支払いが入れば払えるはずだ。そこへ翻訳会社の秘書が真っ青になって学校にナデを訪ねてくる。会社は倒産、社長は逃亡した。ナデはサラ金に行き事情を話し、返済期限の延長を頼むが彼の返事は「全額払うまでここに来ておれをフェラしろ」。どっちを向いても神も仏もいない。ナデはしかし教室で、犯人の生徒が犯行を認めないばかりか、さらに盗みを働いていたことがわかる。盗んだのはナデの財布からで、なぜわかったのかというと、彼女は札に赤い小さな印をつけていたのだ。その札が売店のレジに入っていた。ナデは札についた指紋から犯人はすぐわかる、あと1日、最後のチャンスを与えるから、放課後、誰もいない時に教室に来なさい、と通告する。で、ナデはどこに行ったか。もっさりした教師の服を脱ぎ捨て、ショートスカートに濃いアイライン、燃えるような紅を引き、サングラスにハット、胸の開いた黒いブラウスでドアを開けた…。ここはサラ金屋。入ってきたナデはテーブルにドンと現金を積む。親父は金額を確かめ証文を破る。ナデは再び地味な姿に戻り、教室にいる。生徒が一人、おずおずと入ってきた。少年が返しに来た金を受け取り、ナデは訓戒を垂れた。その日のニュースが報道された。市中の小さな銀行に押し入った、推定30〜40歳の女が現金12万何がしを奪い、逃走した。行方はわからない…。翌日ナデはいつもの通り、教室の黒板にチョークを走らせている。書き忘れていたが、ナデは精巧なおもちゃの拳銃を、生徒から取り上げてまだ返していなかった▼全編に緊迫感がみなぎります。しっかりした女にダメ男。これでもかと生じるトラブルが、お金・親子・夫婦・職場・倒産・夜逃げ・借金、それぞれの連鎖が現実生活を浮き彫りにし、ヒロインの最後の行動が一つも浮いていない、ただもうたまげるだけである。ナデのしでかしたことが、犯罪だろうと何だろうと脱帽。女って強いね。

 

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