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シネマ365日

2016年5月17日

特集「ケイト・ブランシェット」② 
エリザベス ゴールデン・エイジ(上)(2007年 伝記映画)

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監督 シェカール・カプール

出演 ケイト・ブランシェット/ジェフリー・ラッシュ/アビー・コーニッシュ

 

シネマ365日 No.1754

敵艦見ゆ

特集「ケイト・ブランシェット」

本作は歴史の表舞台に登場した後のエリザベスであるから、各エピソードは世界史の定番だ。それらがきちんと描破されているのと同時に、エリザベス(ケイト・ブランシェット)の私生活が、見てきたように描かれているのが面白い。特にこの女性、ベス(アビー・コーニッシュ)なんかそう。彼女はエリザベスが寵愛する侍女です。姿が見当たらぬと「ベスは」とすぐ女王は聞く。次々出るエリザベスの指示は、あっという間に処理しなければ機嫌が悪くなるから、ベスは、なかなかそばに座ってなど居れないのであるが「仕事はやれ、そばにはいよ」と平気で言うボスである。このときも走って戻り女王の前にかしずくと、「遅い」頭の上で低い声がする。言い訳すると火に油を注ぐ。ひたすら平伏。女王は短く「許す」そして(…)そこへ、とアゴで示し、ベスにしかわからぬようウィンクをする。夜は夜で「またシワが増えた」と女王が鏡を覗いている。「笑いジワです」とベス。「わたしがいつ笑った?」ベスが微笑むと「ほら、お前にもシワができた」女王は笑顔のまま「お前にも夫を見つけねば。どんな人がいい? 理想の男は?」「正直でやさしい人です」「新大陸からでも正直者を探そう」女王はふざけて扇でベスの頭をはたく。気難しい女王がベスにあんまり屈託がないシーンがいくつかあって、ひょっとしてエリザベスはゲイじゃないかと思ったわ▼最大の強敵スペインは着々と英国攻撃準備を整えている。フィリップ2世は宗教上の聖戦と称し、争いをふっかけ近隣諸国を支配下に置いてきたが、ヨーロッパでただ一つ、いうことを聞かないのがエリザベスの英国だった。「売女め」スペイン王は呻き「世界の海が未だ見たことのない艦隊を誕生させる」と誓う。エリザベスはもちろん、腹心ウォルシンガム(ジェフリー・ラッシュ)の諜報網によって、スペインの無敵艦隊の存在を知っている。ひとりになって祈るのは「夜、恐怖の影に怯えぬ力をお与えください。真の危機が迫った時、それに負けぬ勇気をお与えください」。そしてベス相手にカツラをとった女王は、一緒にアヘンを吸って束の間安息する。エリザベスは自分に「フツー」の状態が許されないとわかっている。入浴しながらベスに「女王でなく、わたしという女に好意を寄せる人がいると思う?」「わたしはあなたという人が好きです」「ベス。お前が男に好かれるのは美しく、女王のお気に入りだからよ。もちろんお前の体も狙っている。男の欲望は果てしないから。男はみな同じよ。お前が羨ましいわ、ベス。わたしが持てないものを持てる。わたしの代理の冒険者」とかいいながら、ベスに好きな男ができると…しかもそれが新大陸帰り、女王が新規の情報や彼の体験やビジネスの可能性を聞き、側近にしたウォルター・ローリー卿である▼ついにスペインは宣戦布告する。1万の兵を乗せたスペイン艦隊が英国に出航した。「もし英国が敗れたら、わたしはスペインの牢獄で死を迎える」エリザベスの神経がいやましにとんがっているときにベスの妊娠がわかる。しかも相手はローリー卿。女王は怒り狂い「ベス、妊娠は本当なの? 裏切り者。わたしの許しも得ず男と寝たのね、このアバズレ」「陛下、はしたない。それが女王の言動ですか。どうかお慈悲を」ウォルシンガムがとりなすが、でも返り討ち。怒りは静まらない。「女王の侍女に手を出した男を逮捕せよ!」と命令を発し、ベスには「女王はお前を庇護せぬ!」ベスは平身低頭「仰せの通りに、陛下」「出て行け!」もう子供と一緒なのですけどね▼敵艦隊はイギリスに向かっている。気を落ち着けたエリザベスはある賢人を訪う。「この世を司る力は人間を超えています。たとえ女王でもその力を従わせることはできません」「では一つだけ。嵐に襲われたとき、人のとる行動は?」「それぞれ異なります。ある者は逃げ、ある者は隠れ、ある者は鷲のように翼を広げ風に乗って舞い上がります」エリザベスの目に光と力が戻った。水平線に敵艦隊の影が見えた。エリザベスはウォルシンガムを呼ぶ。最強の敵を迎えたのだ。「気休めは言わない。この戦争に負けると厳しい宗教裁判が待つ。英国の良心の自由、思考の自由は失われる。敗北だけは避けねば。攻撃を食い止めねば。鐘楼を鳴らし野で働く者をかり集め、手に武器を持たせなさい。囚人たちは自由の身にせよ。彼らも英国の民です。ローリー卿も許す。このわたしにも神の許しを」。エリザベスは甲冑を身に付け、海峡を見下ろす断崖に布陣した自軍に姿を現わし、白馬を輪乗りしながら呼びかける。「愛するわたしの民よ。敵艦の帆が目に見え、敵砲が海を渡ってくる。すぐ敵と相まみえる時がくる。わたしはここで戦いのさなかに身を置き、あなた方と生死を共にする。我々が立ちはだかる限り、侵入者を通すことはない。たとえ地獄の軍隊を連れて来ようとも。戦いの日が終わったら天国で再会を、あるいは勝利の野で再会を祝おう」…雄弁とは多弁ではない。決意と哲学が、詩的ですらあることです。

 

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