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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2016年5月26日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力3」③ 
しあわせ色のルビー(1998年 家族映画)

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監督 ボアズ・イェーキン

出演 レネ・ゼルヴィガー

 

シネマ365日 No.1763

サタンは大事な友だち 

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力3」

伝統と宗教と閉塞感のなかで自分自身の輝きを取り戻そうとするヒロイン、ソニアがレネー・ゼルヴィガーです。トム・クルーズ共演の「ザ・エージェント」でブレークした直後の作品です。彼女は29歳でした。レネーの30代は充実していました。「ブリジット・ジョーンズの日記」だけにとどまらない。「ベティ・サイズモア」の哀感をただよわせる田舎の看護師、スターを夢見ながら刑務所に収容される踊り子同士が、波瀾のデュエットでサクセスする「シカゴ」。「コールド・マウンテン」では、すでにオスカー女優だったニコール・キッドマンの影が薄くなるような好演でアカデミー助演女優賞。重厚というか暑苦しい役者というか、あのラッセル・クロウを相手に重量感と存在感でバンバン渡り合った「シンデレラ・マン」。超美人ではなく、平凡とも見られる「フツー」感覚の彼女が、スクリーンを制圧していく勢いと演技力に目を見張りました。最近はいってくるゴシップでは整形の失敗だとか「その前・その後」の画像だとか、レネー本来の実力が鳴りをひそめているのが残念です。自分を阻害するものはなにもかもふり棄て本筋に帰るべきです、この映画のヒロインのように▼一言でいえばソニアの自我の成長物語ですが、ソニアの少女時代に死んだ最愛の兄ヨシの霊と、ソニアの出生にまつわる伝説の存在「サタンの化身」が、劇中ヒロインにだけ見えるイマジネーションとしてしばしば登場します。彼らの形象といいイメージといい、明るい幸福に満ちたものでは決してない、どころか、曖昧でとらえどころがなく、皮肉と諧謔を駆使し、悪さえ使嗾しながら、彼らが示すサディッションは豊かな知恵に満ちています。ヨシ少年は聡明な洞察力をヒロインに与え、サタンの化身は、自分が自分自身であろうと努力する限り、人は苦しみ戦わねばならぬ、そのときはもし神様がドン臭いならば、サタンという貴重な存在と手を組めと教える。現代の聖人といわれる夫メンデルの戒律漬けに窒息しかけていたソニアは、息を吹き返します。純粋なヨシの魂にせよ、サタンの悪の分身にせよ、もともとソニア自身の心のなかにいたのですけどね▼映画の冒頭、ソニアの「美しい虚無」の源泉になった伝説が述べられます。ヨシが妹に語って聞かせるものです。「100年前、ロシアの娘が森へ消えた。父親は娘を学者と結婚させようとしていたが、娘はそれを嫌い、真冬の森へ逃げ込んだ。家族は家出とは思わず雪の中で迷ったと考えた。ある日突然娘が帰ってきた。お腹に子を宿していた。雪の中で迷った娘を悪魔が助け妻にしたのだと村人はいい、その春、娘は女の子を産んだ。名前はイェッタ。ぼくらのおばあちゃんだ。年老いて死んだイェッタは天国へ行ったが、神様が嫌い地獄に送った。地獄のサタンは彼女が姪だと知ると、苦しめたくないと思い、僕らの世界に送り込んだ。以来彼女は地上をさまよっている」。だからソニアはサタンの血をわけた子孫なのよ。人間社会からはみだすはずだわ(笑)。有数な宝石鑑定士だった父親の血を受けたソニアは、宝石の鑑定とデザインでメキメキ頭角を表す。彼女が発掘した黒人のデザイナーと組み、彼の励ましを受け共に生きていこうと決めます▼ソニアの義兄は「今聖人」といわれる弟とちがい、かなりの悪漢だが、ソニアは仕事上の自立のためには彼との関係も受け入れ、めどがたったところで手を切るのだからたいしたものである。サタンの化身「足の疲れた女」はホームレスの老婆の形をとり、ソニアがどうしていいか迷っているときに現れる。廃屋みたいな建物で一夜を過ごすことになった。サタンは自分を猜疑の目でみているソニアに「人の親切は受けるものよ。わたしたちには共通の友達がいる(イェットのこと)。彼女は神ほど年をとっている。美しく、とても賢い。味方にすべきなのにわたしたちは彼女を恐れ、憎む。それで彼女は復讐に燃え怨みの炎でわたしたちを焼く。彼女は怒りっぽいの。でも親しくなれば貴重な存在よ」「神はなんとおっしゃるかしら?」「神にも気にいられておくことね。でも弱いものいじめをつけあがらせてはダメ」「神でも?」「神は特に」神が弱いものいじめをするという発想はおもしろいですね。神も仏もないと泣くときがそういうときなのかもしれません(笑)▼老婆はすう〜と立ちあがり出て行った。どこへいくの、とソニアがあとを追うと、窓の下にはヨシが立っており、こっちへ、と招くのだ。ヨシの連れていったところが黒人のデザイナーの工房です。ビジネスパートナーとして彼を口説くソニアは彼に「成功する保証は?」と聞かれます。「ないわ。でもそれが人生よ」夫の実家で肩身を狭くしていたときを思えば、いや〜強くなりましたね(笑)。夫のメンデルがやり直そうといって、ソニアの誕生石のルビーをプレゼントに持ってくるのですが、ソニアは微笑んで祝福を与え、ヤンワリと拒否する。ルビーを身につけるより「わたし自身がルビー以上の宝石になるわ」ってことです。

 

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