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特集「最高の悪役」

2016年6月7日

特集「最高の悪役」⑦ イザベル・ファーマン 
エスター(2009年 サスペンス映画)

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監督 ジャウム・コレット」=セラ

出演 イザベル・ファーマン/ヴェラ・ファーミガ/ピーター・サースガード

 

シネマ365日 No.1775

お見事なタネ明かし 

特集「最高の悪役」

イザベル・ファーマンが本作で主役エスターを演じたとき9歳でした。子役のワルでは「悪い種子」(1956)がすぐ思い当たるけど、本作には最後の種明かしがあり、それが実に見事です。エスターの正体がとんでもない子供だと、観客は最初から察しがついているのだけど、そこに絡んでいく詰めがきっちりできているから、全くタルミがありません。ヴェラ・ファーミガはスタントなしで、氷の張った真冬の湖から這い上がってきたの? 散々エスターに翻弄され、夫に見放された「孤立した母親」を奮戦しています。でもいちばんがんばったのは、言葉の話せない末娘のマックスですね。ジョン(ピーター・サースガード)とケイト(ヴェラ・ファーミガ)の二人の子供たちは、息子がダニエルで娘がマックスだ。どっちも可愛い盛りの小学生。ケイトは三人目の子供を死産したショックから立ち直れず、アルコール依存に奔り、やっと回復し今はカウンセリングを受けている。夫の10年前の浮気を持ち出し、責めることもある。エスターを養女にもらうことになった背景にはギクシャクした夫婦の関係が織り込まれています▼ロシアの養い親が火事で焼死し、孤児となって引き取られてきたエスターは、施設の院長が保障する優秀な子供だった。ケイトもジョンも安心してエスターを家族に迎える。首と手首にいつもリボンを巻いていた。エスターはたちまち手話を覚え、マックスと会話できるようになる。ダニエルだけは、家中の話題を独り占めするエスターが気にいらない。やがてエスターは徐々に仮面をはがしていく。学校でエスターの服がダサいとからかった女の子が滑り台から落ちて骨折する。傷ついた鳩に石を打ち下ろし「楽に」させる。弾けないと言っていたピアノ、それもチャイコフスキーを完璧に弾き、「あなたが教えたがっていたから弾けないフリをしたの」とケイトに言うのだ。雷の鳴る夜、エスターはマックスを連れて夫婦の寝室にやってき、怖いから一緒に寝かせてと頼む。ジョンは優しくベッドに招き入れるが、ケイトはエスターにいやらしいものを覚える。自分の疑問を夫に言うと「君の考えすぎだ。あの子は9歳の子供だ」「あなたの前ではネコ被っているのよ」ことの成り行きでジョンの浮気、ケイトのアルコール依存を蒸し返し「許してくれたはずだろ。僕は君を許したじゃないか」「わたしは病気だった、あなたの場合はスケベよ」夫婦の亀裂に、エスターだけが北叟笑んでいる▼ある日施設の院長が訪問した。エスターは面会を拒否し、応対したケイトに「エスターのことで、わたしは間違ったかも」と院長は疑義を漏らす。「エスターは問題を引き寄せる子なのです。以前いた孤児院の話では、ケンカの現場に必ずエスターがいた。男の子がハサミを持って倒れ、顎を貫通していた、そばにはエスターがいた。養い親の家の火事も放火の疑いがあります」。その帰りエスターは雪道で待ち伏せしていた。シスターの運転する車の前にマックスを突き飛ばして急停車させ、事故を装いシスターを惨殺し、他言すればお前も殺すとマックスを脅しつけた。ケイトは一連の事故はエスターの仕業と疑わない。ジョンは言い募るケイトに「君こそ異常だ。施設に行け、でなきゃ離婚だ」と夫婦仲は最悪に。ケイトは情報を検索し、過去に遡り「エスター」という入所者がいた施設を突き止め、担当医師に代わる。彼は言うのだ。「ここは孤児院ではありません。精神病院です」ラストまで謎解きは一瀉千里です。「エスターがお宅にいるなら、ご家族を避難させてから警察に通報してください。彼女は珍しいホルモン異常による下垂体性機能不全です。発育不良で子供のような体格ですが1976年生まれ、33歳です。首と手首に傷跡があります。非常に凶暴な患者で職員を守るため拘束しました。それでも暴れたので消えないほどの傷跡が残ったのです。知る限り7人を殺した危険人物です。生涯のほとんどを子供で通してきた。エストニアで養子になり、父親を誘惑して失敗すると家族を皆殺しにして家を焼いた。ここへきて1年前に脱走したのです」うわ〜、助けてくれ〜▼エスターが歯医者に行かなかったのは子供の歯ではないからだ。歯型をはめ綺麗な歯を装っていたが、ボロボロの黒い歯だった。メークを落とした皮膚はシワと肌アレを露出した。イザベラ・ファーマンが9歳の少女から33歳に変身する、このシーンの「老けメーク」が凄い。母親を助けようと、物を言えないマックスが小さな手に銃を握りしめる涙ぐましさ、でも父親はエスターにグサグサに刺され息絶えるのです。反省・後悔・憐憫のかけらもない「地獄の使者」エスター。ジャウム・コレット=セラ監督はバルセロナ出身。本作の後、ニーアム・リーソンと「アンノウン」「フライトゲーム」「ラン・オールナイト」でヒットを飛ばしました。「記憶探偵と鍵のかかった少女」で主演したタイッサ・ファーミガは、本作の主演、ヴェラ・ファーミガの実妹。7人兄弟の2番目と末っ子の姉妹は21歳年が離れています。姉は全然その気のなかった妹を説得し、自分の監督作品でデビューさせ高い評価を得ました。細面で、笑うと目元が姉とそっくりな妹は、ハリウッドのネクスト・ブレイクとして注目を集めています。

 

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