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特集「最高の悪役」

2016年6月8日

特集「最高の悪役」⑧ ジョン・マルコヴィッチ 
コン・エアー(1997年 アクション映画)

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監督 サイモン・ウェスト

出演 ニコラス・ケイジ/ジョン・キューザック/ジョン・マルコヴィッチ

 

シネマ365日 No.1776

あんたこそ気色悪い

特集「最高の悪役」

コン・エアーとは極悪犯ばかり移送する飛行機。終身刑・死刑囚。二度と娑婆の空気は吸えない人たちばかり。凶悪犯たちが脱走しようとコン・エアーを乗っ取る計画を立てた。リーダーが「猛毒のサイラス」ことサイラス・グリサムだ。ジョン・マルコヴィッチが演じます。何しろ極悪人を束ねる極悪人だから、その辺のワルではない。こういう役になると、マルコヴィッチは燃えます。理由ですか? この人異常な役が好きなのよ。頭が禿げて絵になる男優って、ショーン・コネリーとマルコヴィッチだと思っています。ユル・ブリンナーは自分から剃っていたから、年齢とともに禿げた頭ではないのよ。マルコヴィッチの一度見たら二度と忘れない特異性は、演技の力もあるけれど、エイリアンの父親のような、あの頭に負うところが大きいです▼サイラスとは39歳のうち25年間を刑務所暮らし。獄中で勉強し学位を二つ取り、囚人を11人殺し、3度の暴動、脱獄2回、殺した人間は数知れず。サイラスはコン・エアーが離陸すると、皮膚に埋め込んだ針金を抜き出し、早々と手錠を外し、極悪人たちを解放する。機内は折り紙付きのスペシャル・ゲストばかりになった。妻の浮気を見つけ彼女の実家に行き、家族を皆殺しにしたのがダイヤモンド・ドッグ。女性23人を強姦したジョニー。サイラスはジョニーにいう。「俺は強姦が嫌いだ。お前の気色悪さは乾いた口のネバネバやゴキブリと同じだ。一度でもムスコを外に出したら、お前を外に放り出す」。サイラスは強盗・誘拐・殺人の罪ですが「強姦は嫌いだ」という一言が、どことなくマルコヴィッチに似合うな、なんて思ってしまうのです▼キャメロン(ニコラス・ケイジ)と同じ独房で服役していた黒人の囚人、ベイビー・オーは糖尿だ。コン・エアーの暴動でインスリンの入った瓶と注射器を壊され、摂取できなくなってしまった。キャメロンは囚人の入れ替えがある途中の空港で、降りられことになっていたが、オーの注射器を手に入れるため、コン・エアーに残る。男気の塊である。監督のサイモン・ウェストは本作がデビュー作。このあと「将軍の娘/エリザベス・キャンベル」「トゥーム・レイダー」「エクスペンダブルズ2」などのヒットが続く。それを言うならこの人も。製作はジェリー・ブラッカイマーだ。過剰なまでにド派手なアクション。暴力性、破壊力、と思えばラブコメあり、ファンタジーあり、硬軟どちらのジャンルでもヒット作を連発する。サイラスと、彼を追い詰めるキャメロンが、ラス・ヴェガスにコン・エアーを着陸させるまでの爆破・炎上は、一発勝負の本物のビルをぶっ飛ばしました。劇中、麻薬取締局捜査官のマロイが「間違った刑務所システムが、あんな悪人どもを生んだのだ」というシーンがありますが、国家・政治体制の怠慢に一言、言わずにはおれないのもブラッカイマー映画の特色です▼サイラスはジョニーを「気色悪い」と言いますが、気色悪いことにかけてはマルコヴィッチこそ、どんな俳優にも引けを取りません。代表作のひとつ、クリント・イーストウッドと組んだ「ザ・シークレット・サービス」は変装名人の暗殺者。「クリムト」では画布に、黄金のエロチシズムを描いたグズタフ・クリムト。「リプリーズ・ゲーム」では、詐欺師にして殺し屋を迎え撃つ、武闘派のリプリー。確かに「リプリー」でも「太陽がいっぱい」でも、魅力あるリプリーではありました。原作者のパトリシア・ハイスミスが本来描き出したい奸智、狡猾、博学という、複雑な男性像がいちばんよく出ていたのは、リリアーナ・カヴァーナ監督の同作だと思えます。もともとマルコヴィッチは「危険な関係」のヴァルモン子爵、「見出された時〜失われた時を求めて」のシャルリュス男爵、若いときの「二十日鼠と人間」のレニー・スモール、数カ国語のセリフで進行する会話劇「永遠の語らい」のワレサ船長など、文学系に強いのです。

 

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