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特集「最高の悪役」

2016年6月14日

特集「最高の悪役」⑭ ジーン・シモンズ 
天使の顔(1953年 サスペンス映画)

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監督 オットー・プレミンジャー

出演 ロバート・ミッチャム/ジーン・シモンズ

 

シネマ365日 No.1782

恋がさめるとき 

特集「最高の悪役」

ジーン・シモンズのヒロイン、ダイアナもいいけど、なんといってもロバート・ミッチャムだわ。ミッチャムの扮する救命士フランクが大邸宅に駆けつけ、ガス中毒で死ぬ寸前のダイアナの継母の一命を取り留める。帰りがけ、ピアノを弾いているダイアナに、お母さんは無事だ、心配ない、と声をかける。するとダイアナは泣き出し、慰めるフランクにいきなりビンタを食らわすのだ。フランクは動じない男で、ダイアナの横面をはりかえし「落ち着け、ママは助かったのだ」と安心させるが、ダイアナが泣いたのは継母が助かったことに対する悔し泣きなのだ。フランクが余計なことをしなければ死んでくれたのに…。ダイアナはパパっ子。幼いとき母親が亡くなり、作家である父の愛を一身に受けて大きくなった。父は再婚。ある日父親にこっそりプレゼントをあげようと書斎に入ると、机の引き出しには真っ白は原稿用紙がぎっしり。「パパは結婚してから一作も発表していない。作家としてダメになったのよ。かわいそうなパパ」▼要は父親を継母に取られた嫉妬です。継母もたまったものではない。彼女は財産家の出で、作家の収入がなくとも充分、ハイソな生活を維持していける。男として肩身は狭かったかもしれないが、娘が憎むのは筋ちがいだ…ダイアナと付き合ううち、覚めた男であるフランクはそう考える。フランクには婚約者メアリーがいたが、フランクは彼女が夕食を用意して待っているというのに「サンドイッチを食べて帰る」と電話し、ダイアナと踊りに行く。メアリーは、彼女がまた大した女性だ。ダイアナを呼び出し自分はフランクと結婚するつもりだ、あなたは彼とどういうおつきあいをしたいのか、と尋ねる。フランクは、ゆくゆく車の修理工場を経営したい、そのための資金を貯めているとダイアナは聞いていたから、自分が1000ドル出資しよう、フランクには内緒にしてほしいと、秘密の共有を持ちかける。類は類を呼ぶ。メアリーもフランクに釣り合うほどの覚めている女で、ダイアナの出資話など信じない。フランクに会い、あなたとは当分距離を保つと、冷却期間を置く。フランクは言う。「君は自分では気が付いていないかもしれないがナイス・ガイだぜ」。今でいうハンサム・ウーマンね。そうだと思うわ▼継母殺害をあきらめないダイアナは、車に仕掛けをする。思いがけず、父もその車に同乗したから、二人一緒に崖から墜落し死んでしまう。大好きなパパまで死んじゃった。フランクとダイアナの関係が明らかになり、容疑はフランクにかかる。弁護士は裁判戦略として二人が熱愛関係にあり、悲劇的な状況にもかかわらずダイアナは愛を貫くためフランクと結婚するという、純愛物語で陪審員の心証に訴え無罪となる。フランクは、自分が殺人者ダイアナに引きずり回されていることがわかっている。「君と俺は住む世界が違う。君はドレスに豪邸、遠からず莫大な遺産を相続する。俺の財産といえばこの手だけだ」「わたしの望みはあなたよ」「関わりたくない」「少しでもわたしを愛している?」「おそらく愛の気持ちはあると思う。しかし君を相手に自信はない」と、荷造りをする。「わたしを連れていって」「君は逃げおおせた。俺は用済みだ。弁護士さんに離婚手続きを頼んでくれ」ダイアナは強気だ。「メアリーは戻らないわよ。あなたはわたしを憎めないわ」「憎んでいないが、去る」あの眠そうな目で淡々という、ミッチャムのセリフまわしにしびれます▼フランクの決心が固いと知ったダイアナは弁護士を訪ね、自分が父と継母を殺した、フランクは関知していない、そう供述書を書くから裁判をやり直してくれと頼む。弁護士は供述書でもなんでも書けばいいが、一事不再理だ、どうしようもない、ただ一つ方法はあるが、そのためには君を病院送りにするしかないと相手にしない。ダイアナは50万ドルの遺産を相続する。ところが彼女は自ら運転する車で、フランクと無理心中しちゃうのだ。なにこれ。このへんが男のこしらえた悪女の限界よね。50万ドルの遺産が入って死ぬ気になる女がいるかしら。供述書だ? 一事不再理くらい高校生でも知っているわよ。フランクを道連れに死んじゃうのが愛の証でしょうか。そんなバカらしい決着より、本当に現実的なのはメアリーです。彼女はフランクの気持ちがダイアナから離れられないことがわかっていた。男にも女にも、恋や愛となると正しさと理屈だけで処理できない暗渠のあることくらい想像がつく。フランクを追えば、ダイアナの本質を知った彼は自分のところに戻るだろう、でもそれは形の上だけのことで、恋情を片付けることはできない、フランクも自分も安らぎは得られない。そう結論して別の男と別の人生を選ぶメアリーが、やっぱり「ナイス・ガイ」でした。

 

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