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特集「最高の悪役」

2016年6月17日

特集「最高の悪役」⑰ トム・ハーディ 
レヴェナント:蘇りし者(2016年 事実に基づく映画)

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監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

出演 レオナルド・ディカプリオ/トム・ハーディ

 

シネマ365日 No.1785

精彩を放つトム 

特集「最高の悪役」

レオナルド・ディカプリオがオスカー受賞後来日し、いやがうえにも盛り上がった本作。レオ様は筋金入りの環境保護活動家でしょう。受賞スピーチでも「地球を救わなくてはいけません」と熱っぽく訴え、水質汚染を防ぐためシャワーも日常使わないというほどの徹底ぶり。「タイタニック」公開翌年には「レオナルド・ディカプリオ財団」を立ち上げているくらいだから、昨日今日始まった運動じゃないのよ。レオ様といえば昔から、ガールフレンドはスーパーモデルと相場が決まっており、モデライザー(モデルの女性だけが恋愛の対象)と言われていました。でもたとえモデライザーであっても「環境に関心のない女性と一緒にいることはできない」とインタビューでいっているから、相手のモデルさんも大変よ、きっと▼本作がオスカー候補になって、監督賞が2年連続でアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督だとわかったときは、つくづくハリウッドのシリアス贔屓にうんざりしたわ。「アーティスト」あたりからオスカーが変わってきて、素人にとって面白くもおかしくもない映画に価値が見出される時代になったのではないか、映画はつまらなくなるのではないかと、ちょっとしょんぼりしたのよ。それを救ってくれる俳優が、だれあろう、トム・ハーディだったのだ。刑務所をひたすら愛する監獄フェチの「ブロンソン」、腕っ節が強くて純情そのものの鉄板男は「欲望のバージニア」これこそ極めつけは「マッドマックス 怒りのデス・ロード」、「チャイルド44森に消えた子供たち」も、しみじみとしてよかったですよ▼本作は見終わった後、レオ様の喘ぎ声(喉を切られたため声が出ない設定)だけが耳の残っているというしんどい映画だけど、いちばん精彩を放ったのがトム、だと思うの。こういう性格の人って、会社だろうと学校だろうと研究所だろうと、規模の大小を問わず組織には一人や二人、必ずいるのよ。大げさかもしれないけど人間の一種の典型が、実によく描かれていたわ。西部開拓時代の北部アメリカ、大森林の中で狩をして毛皮を採取するハンターチームのガイド、グラス(レオナルド・ディカプリオ)は、子連れのクマに襲われ瀕死の重傷を負います。隊長は仲間を見殺しにせず、急ごしらえの担架でグラスを運ぶが、ジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)は内心(チェッ。どうせ死んじゃうのに)足手まといになるだけだと思っている。でも「これ以上グラスを苦しめるより、楽にさせてやったほうがいい」いかにもグラスのためを思った言葉を口に出します。極寒の山中である。誰が見てもグラスは息を引き取ろうとしている。隊長は「死んだらちゃんと埋葬してやれ」といい、グラスの息子と、いつもグラスに世話になったジムが残ることにしたが、ふたりはまだ少年だ。あとひとり、大人が残れと隊長が指示し、特別手当てを出すとなってジョンが名乗りでたのだ▼彼が考えているのは一刻も早くレオ様が死んでくれること。顔を覗き込み、まだ生きているのかといわんばかり▼ジョンはふたりがいない時にグラスを殺そうとし、それを息子に見られたものだから、息子を刺殺する。さらにジムを騙し、動けないグラスに土をかけ、ジムを促して仲間のいる砦へ、帰途につく。でもレオ様は土の下から這い出て、サバイバルするのだ。本作の見どころと言えば、レオ様の生き残るプロセスでしょうね。死んだ馬の内臓を取り出し、腹腔の中に入って低体温症状を防ぐ。レオ様を助けた親切なネイティブ・アメリカンは、別の部族に吊るし首にされた。体が思うように動けないレオ様は、死んだ獣の生肉を食べ、生け捕った魚はムシャムシャと頭からかぶりつく。獣の骨を見つけたら骨を割り、骨髄を拾い出して口に入れる。彼の一念は息子の復讐だ。ジョンを生かしたままにはしない。何しろクマにぶん殴られ、かぶりつかれたのだ。喉は裂かれ骨は何本か折れたに違いない。足を引きずり半分死にかかってやっと砦に辿りついた。ついにジョンを追い詰めた。ジョンは砦を脱走する。隊長とレオ様が追跡するが、ジョンは隊長まで殺す。一人でも二人でも、こうなればもうヤケクソである。過酷な自然を生き延びたこともさることながら、レオ様といい、トムといい、苛烈な環境で闘志を失わない男たちの対決はガチそのもの、どちらも手加減せず、トムはレオ様の鼻柱をまともに殴って、骨を折ったと伝わっている。これがレオ様だけのサバイバルなら、環境保護のドキュメンタリーみたいだ。物語と言っても(すごかった、しんどかった、大変だった)で終わるところだ。トムの悪党がいたからこの映画は映画になったのだ。レオ様が主演男優賞なら、トムだって助演男優賞を取らせたかったぞ。

 

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