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特集「最高の悪役」

2016年6月20日

特集「最高の悪役」⑳ バート・ランカスター 
成功の甘き香り(1957年 社会派映画)

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監督 アレクサンダー・マッケンドリック

出演 バート・ランカスター/トニー・カーティス

 

シネマ365日 No.1788

かわいそうなお兄さま 

特集「最高の悪役」

原題通りだけど、いいタイトルですね「成功の甘き香り」なんて。それだけで物語が立ち上がってきそうだわ。原題のズバリ英語読みタイトルが増えて、なんのことだかピンともシャンともこなくなった映画が増えて困っていたのよ。といってもまあ、1957年の公開だから「最近の傾向」なんて通用しませんけどね(笑)。バート・ランカスターの渋いこと。トニー・カーティスは劇中「おい、アイスクリームヅラ」なんて呼ばれる甘い目鼻立ち。ランカスターの強面といい対象です。ランカスターのJ.J.ハンセッカーは大統領さえ動かせる力のあるジャーナリスト。彼のコラムは読者が取り合いして読む人気の読み物だ。シドニー(トニー・カーティス)は野心に燃えるプレス・エージェント。早く言えば広報記事専門の「書き屋」だ▼彼はJ.Jに自分の記事を売り込みにいくが、ボツにされてばかり。借金も少なからず、事務所に帰るたび、秘書の女性に当たり散らす。彼女がそろそろ蓄えも少なくなってきたと告げると「大物相手にでかい仕事をするのだ。そこは甘い香りがし、若造呼ばわりもされず、使い走りもしなくていい場所だ」「何をしようとあなたの勝手だけど、でもあなたを見ていると辛いわ」と秘書は、シドニーの足元の覚束なさに不安を吐露せずにはおれない。J.Jにはスーザンという妹がいる。一度結婚に失敗し兄の元にいる。 J.Jはこの妹が可愛くて仕方ない。父親代わりと言ってもよく、近づく男に目を光らせている。シドニーは自分の記事がボツばかりになるのは、自分の実力不足ではなく、J.Jの仕返しだと思っている。J.Jは酒場のバンドでギターを弾く男、スティーヴと妹が恋仲であることを知り、仲を裂くようシドニーに指示したが、彼はまだ成功していないのだ。かなり強引なお兄さんで、スティーヴと話し合おうともしないで毛嫌いするのです。妹は兄を恐れてピリピリしている。シドニーが兄の命を受けて別れさせようと立ち回っていることも知っている。シドニーはスーザンにJ.Jは偉大なジャーナリストだと褒めるが、スーザンは「いつかあなたの本音を知りたいわ。自分を犬みたいに扱う人を好きになれる?」と醒めている▼J.Jの妹に対する愛情は過剰です。兄妹の域を超えた濃い情愛が漂っています。スティーヴもスーザンを恋する男の直感として、J.Jにただならぬライバル意識を持ちます。バート・ランカスターの男っぽい渋ヅラがますます歪む。兄貴は刑事まで抱き込み、スティーヴが麻薬取引に手を出しているとガセネタをでっち上げ、まんまと逮捕させるのだ。さすがにシドニーはJ.Jのやり口についていけなくなるが、「俺は妹にあの男を忘れさせるために、しばらくヨーロッパーに連れて行く。留守中、俺のコラムを埋めるのは君が適任だと思うが」と飴を見せびらかし、シドニーを懐柔する。兄の呪縛から抜けられそうもなかったが、スティーヴを刑務所に入れてまで引き離そうという兄に、とうとう反旗を翻す。密かにスーザンを愛していたシドニーは、最初の夫の自殺も J.Jのしくんだことだとぶちまける。J.Jはシドニーの裏切りに激怒、警察に電話し、スティーヴに麻薬タバコをもたせたのはシドニーだと告げ、シドニーは連行。邪魔者を追い払い、やっと妹と二人きりになったものの、妹は「かわいそうな人」と兄に憐憫の一瞥を投げ、スティーヴとの暮らしに向けて家を出る▼登場人物が少なく、いってしまえばたかが家庭内の揉め事が、犯罪映画のような起伏に富んでいます。バート・ランカスターは政治家、詐欺師、終身犯、殺人者、犯罪者、貴族、大学教授、刑事、およそありとあらゆる役をやったと思いますが、器用貧乏とはほど遠い重厚さを、最後まで貫いた稀有な役者です。

 

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