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特集「フリーク/変態の詩人たち」

2016年6月27日

特集「フリーク/変態の詩人たち2」③ 
墓地裏の家(1981年 ホラー映画)

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監督 ルチオ・フルチ

出演 カトリオール・マッコール

 

シネマ365日 No.1795

みごとなほどの無節操 

特集「フリーク/変態の詩人たち2」③|監督 ルチオ・フルチ

「ビヨンド」を出したから、同じ監督・女優でこれも。ルチオ・フルチの映画、あんまり見ていると頭がおかしくなりそうなのですけど、出演したら余計でしょうね。カトリオール・マッコールは(これくらいが限界)と思ってフルチとのお付き合いを切り上げたに違いない、そう「ビヨンド」で書きましたけど、本作を見てますますそう思いました。思考とか人物の関係性とか、ごく通常の意味で映画が備える物語性とかを、フルチは完全に無視するのです。血しぶきが吹き出ればいいのか、首が飛んだらいいのか、ありえない生存方法があってもいいのか、こういう質問など彼の映画には無意味。もちろんあって「よろしい」のです。なんで? さあね。気にいらなければ見なきゃいいだろ。そういわれながら見てしまう。そして「あ〜。やっぱり、思った通りだわ。フルチめ。ははは」笑いながらも半分苦々しい。フルチの泰然自若とさえいえる手法の堅持に、ひょっとしたら天才かもしれない…などという、ある種の畏敬すら覚えるではないですか▼泰然自若と書きましたが、フルチは、例えば「どんでん返し」という、映画の醍醐味を与える作劇に全く関心がないのです。何らかの惹起があって怖いもの、恐ろしげなもの、不気味なものに主人公たちがアプローチする。その近づき方は、断言しますが、伏線もヘチマもありはしません。そういう姑息な(ト彼だけが思っている)手段を、フルチは取らない。なんたる大胆不敵、万事出たとこ勝負なのです。本当に予算だけのせいかしら、こんな無茶苦茶をやるのは。さて本題に入ります。歴史学者ノーマンは、自殺した同僚の研究を引き継ぎ、彼が従事していたフロイトステイン博士の研究を調べるために、博士の所有だった屋敷に引っ越す。博士は違法な人体実験のため医師免許を剥奪されたのだ。屋敷がボストンの郊外、もの詫びしい風景であるのもそのはず、すぐ隣は墓地なのだ。仕事とはいえ、こんな不気味な家に引っ越さなくとも、とノーマンの妻ルーシー(カトリオール・マッコール)は不安と不満を隠さない。おまけに小さな息子ボブは「家の窓に女の子がいて、来てはいけないと言っている」などという▼マッコールはもちろん「ベルばら」のオスカルだ。でも不幸なことに日本におけるベルばらの成功は、フランスの映画化では生じなかった。監督はジャック・ドウミ。「シェルブールの雨傘」の奇跡を思えば、信じられない愚作だと評され、抜擢されたマッコールがミスキャストだったのだと、マスコミは彼女に集中砲火を浴びた。かわいそうに。失敗はマッコールのせいではない。原作者・池田理代子の意図を完全に読み違えた製作側の失敗なのだ。オスカルは性を超越した「オルランド」だったのに、監督も製作者もオスカルに軍服を着せただけ。演じるマッコールに肉体も翼もカリスマも与えることができなかった。しかしもし「ベルばら」の失敗がなかったら、わたしたちは「墓地裏の家」に出演している彼女を、見ることはなかっただろう▼ボブが女の子メイにもらった怪しげな人形も、結局気色悪いだけで、何の呪いもあるわけではない、子守のアンはほとんど喋らないが、正体不明の犯人が殺人を犯した床の血を拭いているとき、ルーシーが外出先から帰り、アンがいるのを見て「ゆうべは寂しかったわ」といきなりいう。思わず(そんな大事なシーンあったかしら)とあわてるが深い意味はなく、血潮でボトボトの床を拭いているアンを、ルーシーは「何をしているの」と普通に聞き、アンはそれに「はい、コーヒーを」とルーシーに渡し、ルーシーは受け取って「ありがとう」とにっこり、何一つ訝るふうもなくキッチンを出て行く。脈絡ついた?▼真夜中にギギッと軋む音、廊下に出てみれば無人の暗がり。すやすや眠る息子にノーマンが毛布をかけてやる。またもやギギギ。墓地にはメリー・フロイトステインの墓があった。ボブが見ているとメイがやってきて「博士の奥様よ。でもこのお墓は偽物なの。空っぽよ」。では本物の墓はどこにあるのだ。ルーシーは絨毯の下に床にはめ込んだ墓石があるのを発見した。夫に言うと「昔この地方は家に墓を作る習慣があったのだ。冬は寒くて外に出られないからね」。鳩くらいもある大きな太ったコウモリがノーマンを襲い、手の甲に噛みつき、牙を立て、引き剥がせない。とうとうナイフでコウモリを引き裂く。夫婦はさすがに引っ越すことにした。不動産屋のローラにその旨を伝える。新しい物件のことで相談に来たローラは、何者かに惨殺される。アンは首を掻き切られた。地下に化け物がいる。地下に生きていたのは100年以上前に死んだ博士だ。博士は犠牲者の肉体を自分の肉体の一部と取り替えながら生きていたのだ。ノーマンが博士の腹を割くと腐ったドロドロの肉が流れ出し、そのあとウジムシが山のように湧き出た。それでも博士は死なず(半分死んでいるから、今さら死にようがないのかも)、ノーマンを殺し、ルーシーも血祭りにあげる。あっけなく主役二人は死んじゃうのね。残った息子だけ隙間から這い出るが、そこにいたのは博士の妻メリーと女の子メイだ。奥様は生きていた。でもどうやって。なにを食べて、どこに。すべてどうでもいいらしいのだ。奥様はメイに言いつける。そもそも二人の関係もわからないが、奥様の指示は「メイ。ボブに教えてあげるのよ。我がフロイトステイン家の悪魔のしきたりを」勘弁してくれ。しきたりだろう何だろうと、本件はこれにて終了にさせてもらいます。

 

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