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特集「フリーク/変態の詩人たち」

2016年6月28日

特集「フリーク/変態の詩人たち2」④ 
ビヨンド(1981年 ホラー映画)

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監督 ルチオ・フルチ

出演 カトリオーナ・マッコール/デヴィッド・ウォーベック/サラ・ケナー

 

シネマ365日 No.1796

「オスカル」その後

特集「フリーク/変態の詩人たち2」④|監督 ルチオ・フルチ

さて「ラテンアメリカ光と影の詩情」でちょっとふれた「ベルばら」のオスカルこと、カトリオーナ・マッコールの主演作です。「ビヨンド」とは「〜を越えていく」「向こうへ行く」つまりこの映画でいえば、この世を越えて「向こうへ」行くことですね。ラストにその意味するところの幻想的な映像が現れます。ルチオ・フルチの映画って、むちゃくちゃを通りすぎて、しまいに憎めなくなるのよね。凄惨な場面が出てきても笑っちゃうような。本作だってまともに取り上げればかなりえげつない残酷シーンがあります。ファーストシーンはセピア色のスクリーンに、恐い顔をしたおじさんたちがボートに乗り、とあるホテルに漕ぎ着ける。時代は1927年のルイジアナ。冥界と現世をつなぐ七つの門を開けようとした画家が、町の有力者のおじさんたちのリンチにあう。チェーンで殴打し、血まみれになった画家を、腕に五寸釘を打って磔にし、硫酸をかけて顔をドロドロに溶かす。酸鼻です。そして舞台は現代へ▼資産家の叔父からホテルを継承したライザ(カトリオーナ・マッコール)がニューヨークからやってきて改装にかかる。作業中のペンキ職人は足場から転落死、水道工事人は壁からニュッと突き出た手に顔面をつぶされ死亡。ライザが買い物に行く途中、はるか彼方の道路にぽつんと人影が。近づくとみるからに賢そうなシェパードを従えた、盲目の女性エミリー(サラ・ケナー)だった。このシーンとてもいいですよ。地平線まで続くはるかな一本道に、背の高い、痩せた姿勢のいい金髪の女性が、見えぬ目でまっすぐ前を見て、シェパードはまるで正座するように脇にはべっている(DVDのパッケージの写真がこれだったので買ったようなものです)彼女は車を止めたマッコールに話しかけ、自分の家に案内する。風雅な趣味のいい家の客室で彼女はここからすぐ立ち去るようにライザに警告する。でも時は既に遅く、惨殺された画家の怨念により地獄の扉は開け放たれていたのだ。エミリーは何者だって? 知りません。それらしい説明はなにもないし、呆れたことにエミリーはあの賢そうなシェパードに噛み殺されるのだ。いきなりよ。理由もわからずシェパードはおかしくなってガブっとやる。エミリーは狼の牙みたいな犬歯に喉を噛まれドクドク血を流しながら絶叫するのだ(おかしいじゃないの。声がでるはずないだろ)▼水道工事人の奥さんは娘といっしょに、警察に来て、夫の遺体に服をきせようとする。いい忘れたがその隣に掘り返された画家の遺体が横たえられている。遺体を処置する奥さんは不意に昏倒し、その顔の上にいつのまに、なぜそんなものが置かれていたのか不明のまま、大量の硫酸が棚の容器からこぼれおち、娘が入ってきたときは顔面の肉が崩れつつあるときだった。娘はショックで呆然、でもその目は白い。この映画で目が白くなるということは死人になったというしるし▼ホテルの見取り図を調べに、図書館にきたライザのエージェントは、高いはしごの上にある資料を取ろうとして足を踏み外し落ちる。四方八方から毒グモが無数に這い出し、男の眼球や鼻孔や唇をこじあけ肉を食べ、男は血だらけになって死ぬ。因果関係は不明。医師のジョン(デヴィッド・ウォーベック)はライザに好意を持つが彼女がゾンビに襲われたとか、盲目の女性がいたことを信じない。だいいち「君がエミリーに会ったという家は50年だれも住んでいない」と言う。古書に地獄の門云々と書いてあるのを読んで、ライザとともに事実を究明しようと病院にもどったところ職員も医師も、もぬけのカラ、猫の子一匹いない病院にぞろぞろ出現したのはゾンビの群れだ。なんで彼らが…知りません。ジョンはバンバン拳銃(それもマグナム)を撃ちまくるが胸に当たっても腹にあたっても死なない。頭をぶちぬくと倒れた。急所は頭なのだ。それなのにジョンは再び大事な弾丸を胸やら腹に撃ちまくるのだ。手がつけられん▼防戦一方にまわったふたりは非常階段のドアを開け下に降りると、そこはホテルの地下だった。観客に無断でワープするな。ジョンとライザが呆然とあたりを見回すと、そこはいつのまにか画家の絵にあった風景になっていた。茫漠としたセピア色の空と大地。ところどころ土が盛り上がっているのは死体を埋葬してあるからだ。天にも地にも立っているのはふたりだけ。そこで顔を見合わせるとヤヤッ、お互いの目はきっちり白くなっている…たどりついた場所は冥界だったのね。でもいつ死んだの? 知りません▼マッコールは「ベルばら」公開のとき25歳、26歳でフルチの「地獄の門」と本作、そして「墓地裏の家」が立て続けに公開されました。フルチ映画出演が3本でパタッと終わったのは、フルチがいくら「イタリアのホラーの帝王」とはいえ「まともな」映画にも出たいと思ったからではないでしょうか。映画は「MOTHERマザー」(2004)のあと、テレビで活躍しています。相変わらずほっそりと、すらりとした金髪できれいでしたよ。

 

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