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特集「ベストコレクション」

2016年7月3日

特集「7月/真夏のベストコレクション」③ 
マイ・インターン(2015年 社会派映画)

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監督 ナンシー・マイヤー

出演 ロバート・デ・ニーロ/アン・ハサウェイ

 

シネマ365日 No.1801

わたしの大事な人 

特集「7月/真夏のベストコレクション」

高齢社会の活性化と女子力活用の社会的ニーズを背景に、そら、受けるわね、この映画。まして監督がナンシー・マイヤーで、主役ふたりがロバート・デ・ニーロにアン・ハサウェイだから、安心と安定を通り過ぎ、凡庸と退屈に陥らないかと、そっちのほうを心配した映画ファンは多かったと思える。そこを巧みに回避して着陸したところは、やっぱり海千山千のデ・ニーロ旦那の貫禄ですし、アン・ハサウェイも宝塚みたいな美女子が、きっちり板についているからでしょうね。デ・ニーロ演じるベンはリタイア後の男の理想を、いやリタイア後でなく、只今からでも実行できる男の存在感を、ハサウェイは言わずと知れたサクセス・セレブ女子への憧れを、一身に集めてヒットしました。作り込みが上手すぎて、現実離れしている感もあったけどいやみのないところがよかった▼ベンが40年勤務してきたのは電話帳を作る会社だった。「紙媒体氷河期の時代」をまともに受けて潰れ、長年連れ添った妻にも先立たれた。ベンはでも「わたしは不幸じゃない。むしろ逆だ」と思っている。経済的には心配なく、息子は煩わせたくないからひとりでいることを選んだ。ぽっかり空いた心の穴を埋めるのにはどうするか。ゴルフ、映画、読書、トランプ、ヨガ、園芸、料理教室、中国語レッスン、海外旅行、そして葬式への出席(最近増えた)。雨でも7時15分にはスタバに行く。コーヒーを飲むと社会の一員になった気がするからだ。たまたま「高齢者の見習い募集」の張り紙を見て応募した。学歴、家族構成、経歴、得意技、かなりうるさい面接の後、採用になった。配属先は社長ジュールズ(アン・ハサウェイ)のアシスタント。彼女は1年前サイト通販を立ち上げ、社員200人に急成長した。彼女はエクササイズを兼ねて車内を自転車で回り、「もっと写真を大きく、35歳以上の老眼の人にも考慮して」とか、「5」の字をもっと大きく、赤シャツをメーンに、商品構成が一目瞭然でわかるように、などきめ細かい指示を出す。社内で時々拍手が起こるのはインスタグラムで「いいね」を2500以上獲得したときだ。ジュールズは今や前世紀の遺物同然の電話帳を売るため、40年間営業をやった、70歳のベンに期待も関心もない。初対面で、仕事はメールで指示するとだけ言い、ベンはデスクで待機した。着信がないのは用事がないことだ。退勤時刻が過ぎてもベンはデスクを離れない。同僚が「帰らないのか」と訊くと「ボスがまだいる」と答える。フロアは仕切りがないから、ジュールズが仕事中なのは一目でわかる。ベンは仕事を終えたジュールズを、車まで送ってから退勤するのだ▼ベンの勤務が鉄壁である。服装、言葉遣い、専門知識の吸収、全くの畑違いの分野にコツコツと馴染み、プレゼンに出かける若い同僚に「できれば襟の付いた服を着ていった方が、心証よく受け入れられる、そうすればトークにも自信がつく」とさりげなくアドバイスする。彼女と喧嘩した男が「メールを送った。長文メールを、顔文字もつけた、でもダメだった」と嘆くのを聞き、「顔を見て話せ」と断言する。来客とランチョンの打ち合わせをしているボスが、サン・ローランの服を醤油で汚した、と一報が入る。ベンはすぐ会議室に、さっさと上着を脱がせ、応急処置してクリーニングに手配する。何か言いたそうなジュールズには一礼して退室。やることなすこと、手際がいいだけでなく押し付けがましくない。ベンはすっかり若い社員に頼りにされるようになった▼ジュールズに壁が立ち塞がった。投資家たちは社外からCEOを招き、経営を一任すべきだと勧告してきた。会社の成長にジュールズのマネジメントが追いつかず、積み残される課題が増えるにつれ、業務停滞を招いていることが株主の不満だった。「組織と支配権はどうなります?」とベン。「そりゃCEOの下につくものよ」。投資家の推薦するCEOの面接に、ジュールズはあちこちで会うが、適任者がいない。おまけにベンはジュールズの夫の浮気相手を目撃する。彼はジュールズを支援するため、会社を辞めて専業主夫となったのだ。娘も生まれ養育は夫が専念し、理想的な二人三脚のはずだった。でも夫は自尊心を取り戻す場所を他に求めていたのだ。家庭という守りがポロポロと崩れ落ちていく。ジュールズは不安でいてもたってもおれなくなる。でもベンの「鉄壁の勤務」は乱れない。動じない。どんなときも、現実を受け入れ、伴侶と共に「一緒の時間を過ごしてきた」思いやりと、人生をひたむきに築きあげてきた落ち着きと自信が、本物の知性と洞察を彼に与えていた▼結末はマイヤー監督手練のエンディングというべきか、誰かと一緒に見たなら、笑いあって楽しく映画館を出られる作品です。

 

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