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特集「ベストコレクション」

2016年7月4日

特集「7月/真夏のベストコレクション」④ 
フレンチアルプスで起きたこと(2015年 社会派映画)

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監督 リューベン・オストルンド

出演 ヨハネス・バー・クンケ/リーサ・ローヴェン・コングスリ

 

シネマ365日 No.1802

意固地な夫、しつこい妻 

特集「7月/真夏のベストコレクション」

東北の場合は知らなかったけど、阪神大震災の後は離婚が増えたのよね。理由? この映画と似たような状況だったわ。夫(あるいは妻が)助けてくれなかったとか、自分だけ先に逃げたとか。本作ではスウェーデンの4人家族が、5日間の休暇をアルプスのリゾート地で過ごすことになり、第1日目に雪崩が起こったことから始まります。大きな雪崩が生じた、ホテルの屋外レストランにいた宿泊観光客はびっくりして避難しようとする、エバ(リーサ・ローヴェン・コングスリ)は、夫のトマス(ヨハネス・バー・クンケ)が、プロが起こした人工雪崩だから心配ないというので安心した、でも雪の壁はだんだん大きくなり、猛スピードで接近し、レストランを白い雪煙で覆ったばかりか、不気味な地鳴りさえする、誰も彼も食事を放り出して蜘蛛の子を散らすように逃げた。エバは「あなた、子供たちを」と言い、振り向いたら夫は雲をかすみ、飛んで逃げている。エバ呆然▼レストランの一歩手前で雪崩は止まり事なきを得たが、パパの行動に呆れた子供たちは口を利かなくなる。妻は夕食で同席になった宿泊客に日中の雪崩事件の顛末を話す。「そこで彼は逃げたの」「逃げていないよ」「逃げたわよ。わたしと子供は置き去りよ」「やめろよ」同席者も相槌の打ちようがなく、ギクシャクしたムード。部屋に戻っても「へんだわ。自分のしたことを認めないなんて」と妻。「雪崩があって怖かったが、誰も怪我しなかったし、結果的には何も起こらなかった、だからいいじゃないか。すんだことだ」。妻、釈然としない。翌日エバは昨夜レストランで知り合った女性に訊く。「男が浮気したら嫉妬しない?」「彼が楽しいならいいじゃない」「別れてひとりになる怖さを感じることない?」「誰だってひとりはイヤよ。でも夫や子供だけでなく、わたしの人生で大切な人はたくさんいる。妻と母親の立場だけじゃ自尊心を満たすだけの自信ないわ。親としての責任はあるつもりよ。子供たちを健康で幸せに育てようと努力しているわ。でもわたし自身が喜ぶことも大切よ」「それって、社会への挑発だとわかっているの? 気楽な考えに驚くわ」女性は四角いエバが面倒になってきて、会話を適当に打ち切る。エバって夫に依存する部分がかなり大きいのですね▼夫婦の友人二人が到着してエバたちと合流した最初の夜。エバ、再び雪崩の話題を持ち出す。「トマスは手袋とケータイをつかんで一目散に逃げたの。トマス、何か言ってよ。せっかくの休暇に、素敵なホテルに来ながら、わたしは悩んでいるのよ」トマスは「それほど大げさな問題じゃないよ。人は同じ経験をしても同じように認識するとは限らないよ。君としては劇的な経験だったとしても他の人はそうじゃない場合もある」。トマスは謝ろうとせず、妻は引き下がろうとしない。三日目、四日目、事態は悪化の一途をたどり、エバは一人で滑りに行くし、子供は不安を察し「ママと別れないで!」とパパに頼む。トマスがセックスしようと手を出してもエバは応じない。4日目、トマスは床に尻をついて膝を抱き、泣き出す。エバ、動ぜず「嘘泣きね。全然涙が溢れていない。サイテーね」芝居がばれたトマスは「君は僕が理想の男でなかったことに失望したかもしれないが、僕は僕自身に失望した。自分が大嫌いになった。子供とゲームしてもズルはする、嘘泣きはする、呆れ果てた男だ。被害者は君だけじゃない、僕自身も僕の被害者だよ」どこまでバカバカしい男だろう、それに妻もしつこいわね、こんな男にいつまで付き合っていなくちゃいけないのよ。でも男の屁理屈に動かされ(あるいは動かされたふりをして)、最終日はめでたく家族揃ってゲレンデに出る。天候が悪く、妻の姿が見えなくなる。今度はどうする、パパ。「パパが探してくる、お前たちはここで待て」とパパは力強く息子に言い、降りしきる雪の中に消える。しばらくして現れたパパは、しっかりママを抱きかかえていた。「パパ、ママ」と子供たちは駆け寄って、パパはみごとに失地回復。帰途のバスに乗る。運転手が下手で、バスは崖っぷちで急停車したりノッキングしたり。ママは金切声を張り上げ「運転手さん、危ないわ。おろして。歩いていくわ」強引にバスを止め、ママの意見に賛成した乗客はぞろぞろバスを降り、乗ったまま麓まで行くのは、ママに「社会を挑発」していると言われた女性だけ。みんなで道を歩き出すが、道のりの遠さに疲れてきて口数も少なく、まるで難民の群れだ。トマスが容易にママの意見に屈しようとしなかったのも、普段のママの、こんな一方的な性格を知っていた故か。彼は腹の中で(チェッ。バスに乗っていればよかったのだよ)と思っていたかも。ダメなものはダメだろうけど、打算であれ諦めであれ、妥協であれ、すり合わせてやっていくのが結婚生活だから、好きにすればいいわ。退屈だったけど、場面転換のとき、ビヴァルディの「四季」(夏)が効果的に鳴り響き、気分を覚醒させてくれたのが新鮮だった。

 

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