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特集「ベストコレクション」

2016年7月11日

特集「7月/真夏のベストコレクション」⑪ 
悪党に粛清を(2014年 西部劇映画)

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監督 クリスチャン・レヴリング

出演 マッツ・ミケルセン/エヴァ・グリーン

 

シネマ365日 No.1812

いいぞ、エヴァ 

珍しい北欧西部劇。エヴァ・グリーンは本作を受けた理由を「西部劇に出るのが夢だった」それもエンリコ・モリオーネが流れてくる「昔ながらの西部劇が好き」。例えば「ダンス・ウィズ・ウルブス」とか「ウェスタン」で、憧れの役は「カラミティ・ジェーン」ですって。知らなかったわ。でもホントかしら。この映画は主人公ジョンに「北欧の至宝」マッツ・ミケルセン。彼に絡むのが、舌を切られてしゃべれなくなったギャングの情婦マデリン(エヴァ・グリーン)。だからエヴァのセリフは一言もありません。終始一貫、何かいいたげに凝視する目の演技です。それが気に入ってオファを受けたとインタビューに答えています。マデリンが「男を誘惑しないところも好き。彼女は家族もいない、いつも無表情で、男たちの世界で気丈に生きているの。色目を使わず欲しいものを手に入れるのよ」ふうん。これまでスパッと脱いでいた役とは全然ちがうってことね、エヴァちゃん▼尺が90分の割には、いろいろ中身が詰まっていて面白かったわ。ハリウッドの西部劇とは肌合いがちがったし。ミケルセンがあの通り、静かな人でしょう。「カジノ・ロワイヤル」では悪党をやって、エヴァと共演しているけど、もともと作曲家のストラヴィンスキーとか、デンマーク王室の侍医とか、学校の先生とかがストロング・ポイントなのよね。今回の主人公でも、デンマークから兄と二人渡米し、兄弟で懸命に土地を開拓して7年、やっと家族を呼び寄せられるようになった、汽車から降りてくる妻と息子を、プラットフォームで首を長くして待っている、おお、妻だ、息子だ…飛びつきたくなると思いません? ちがうのだ、どっちも見つめあって手を握る程度。兄は町に残ってジョンと妻と息子が先に駅馬車で帰ることになった。相乗りしてきた男が二人。見るからにいやらしい目つきで妻を睨め回し、ジョンを馬車から突き落とす。ジョンは必死で馬車を追いかけるのだけど、相手は馬だから勝負にならない。停まっている馬車まで走ってきたら、息子は殺され、妻は強姦され殺されていた▼ジョンは復讐の鬼と化し犯人を撃ち殺す。でもその男はギャングのボスの弟で、妻がマデリンだった。ボスは弟の仇だとジョンを狙い、ジョンは案外簡単にやっつけられます。ハリウッドの無敵のヒーローと全然ちがいます。雑貨屋の16歳の少年が祖母を殺され、ジョンに加勢しますが、彼も無慈悲に射殺される。青少年保護はまったくないみたい。ついには再々ジョンの窮地を救ってくれた兄貴までやられる。とにかくジョンに味方した人はみな死んじゃうのよ。ミケルセンが鉄板みたいな硬質の顔でニコリともしないから、しまいに疫病神か貧乏神みたいに見えてしまうのね。苦労性な主人公だわ▼やっとエヴァちゃん、行動を起こします。それまでなに考えていたのかわからなかったけど、男たちの留守中、金庫さらえて有り金全部カバンに入れてずらかります。汽車に乗って(やったぞ)そう思った途端、情夫の手下たちが追いかけてくる。好きなように扱い、気が済んだら喉を斬れ、と男は残酷な指示を出す。そこへジョンがたった一人で悪人どもをやっつけに来る。いちばん先に、抱き込まれて散々悪事を働いた町長を粛清し、棺桶に入れて悪党に送りつける。細部にわたって過去の西部劇にオマージュが捧げられています。撃ち合いにはなりますが、そう派手な銃撃戦ではありません。ジョンは危ないところをマデリンに助けられ、悪党どもを皆殺しにする。どっちかというと陰気な映画で、ジョン・フォードの名作にあるカタルシスはないのですが、いつも歯を食いしばっているようなミケルセンと、一言も発しないエヴァちゃんのコンビネーションが、妙な叙情を出していまして、これがセリフべらべら、これでもかというクライマックスの盛り上がりだと、何かがぶち壊しだったことまちがいない▼ミケルセンとしては、持ち味にさほど変化はなかったようと思います。それより、あえてセリフなしに挑んだエヴァのチャレンジを買います。たくさんの映画のオファが来ていると思いますが、ガツガツ働く気配、全然なさそう(笑)。相変わらずのマイペースで、映画賞にも関心があると見えない。母親譲りの綺麗なブロンドを、黒髪に染めているのはデビュー以来変わらない。ヘンな子だけど、この映画でいちばん記憶に残るわ。

 

 

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