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特集「B級映画に愛をこめて」

2016年7月15日

特集「B級映画に愛をこめて3」④ 
ツイステッド(2004年 サスペンス映画)

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監督 フィリップ・カウフマン

出演 アシュレイ・ジャッド/サミュエル・ジャクソン/アンディ・ガルシア

 

シネマ365日 No.1816

うまそうに喰うヒロイン 

特集「B級映画に愛をこめて3」

この映画、全然ヒットしなかった。映画評でもクソミソに言われた。わりと好きなのに、残念だった。今みてもそんなに低レベルとは思えない。確かに「サミュエル・ジャクソンがものわかりのいい、妙にやさしい役だなあ、こんなはずないよね」とか、「殺人犯の逮捕に当たる刑事が、本人の言い分はともかく、周辺状況は異常を示しているのに、精神科医の判断が優柔不断すぎないか」とか、ヒロインがたびたび前後不覚に意識を失いながら捜査の担当を続行できるのは、いくら考えても不自然とか、いろいろあげつらうべき点はあるのですけど。劇中の要注意人物はたった3人だから、犯人はだれかより、犯行の動機とか、背景のからみとかをフィリップ・カウフマン監督は描きたかったはず。この監督が好きなせいで身ビイキだと思われても仕方ないけど、ベタはベタだけど、それなりにグイグイひっぱっていっていますよ▼カウフマンの作り方をベタだというなら、初期のクリント・イーストウッドなんかベタどころじゃない。ストーリーの先は読めるし、主人公はワンパターンだし、ヒーローがひとりでいいカッコする典型だし。でも見ちゃうのだ。慣れ親しんだ「映画肌」みたいなものがしっくり、まといついてきて、なんだ・カンダいいながら楽しんじゃう。筋もオチも空で覚えるほど知っている、噺家の芸みたいな肌合いがカウフマンの映画にはあると思うのだけど。それにこの映画の出演者を見たら食指の動く人がほとんどじゃない? サミュエル・ジャクソンはいうまでもなく、アンディ・ガルシアがどことなくボテンと太ってきたせいで、一時の切れ味のかわりに、あまり出世しなさそうなおじさん刑事の味をよくだしているわ。彼は殺人課に配属されたジェシカ捜査官とペアを組むのだけど、厳しく見えて実は女に甘い男って、ホント彼によく似合うのよ▼ジェシカは連続殺人の容疑者の嫌疑をかけられる。行きずりの男とだれとでもセックスする依存症の女みたいに見られ(まあ、それに近いのだけど)クビ寸前。彼女を親代わりで育てたのが本部長のミルズ(サミュエル・ジャクソン)だ。ジェシカの父も警官で、ジェシカが物心つくかつかないとき妻を、つまりジェシカの母親を殺害し自殺した。トラウマを背負っているジェシカに本部長は厳しく優しく、サンフランシスコ警察の未来の女性初署長にしようと鍛えている。両親こそ早くに失くしたが、職業的には、ジェシカは順風満帆といっていいのだ。しかしジェシカには裏の顔がある。逮捕時に不必要に過剰な暴力をふるい、容疑者を傷つける。不特定な男とその場限りのセックスで欲望を満たす。深酒をやめられない。そこへ奇妙な現象が付随する。ワインを飲んだあと意識を失うのだ。重大でしょ、こういうこと。再々同じ事態が生じるのに、ジェシカは医師に本当のことをいわない。署内の反目は蹴りあげるし、上司にも傲慢である。ベテランでもない、捜査官に昇進したばかりの刑事にあるまじき態度だ。ホントならクビよね▼それを監督は同僚のマイクとのロマンスがありそうで、なさそうで、マイクが犯人かもしれなさそうで、やり手の鑑識官が、重大なヒントをつかんだようで、でもなさそうで、どっちや、いい加減にしろ(いい〜)となりそうなじっくりした筋運びで焦らせまくる。監督の高度な「思わせぶり」というか、練達技にかかると、多少のベタなど(いいじゃないか。人間だもの)なんて、急に相田みつをさんみたいなことを言ってしまうのである。ジェシカの父親は自殺ではなく殺害だった。母親を殺したのも父ではなかった。犯人は(もうわかっちゃったでしょうが)、ジェシカのゆきずりの相手が「彼女にふさわしい男ではない」理由で殺していったのだ。犯人がいうには、同じ理由でジェシカの父親は母親のような女性にふさわしい男ではなかった、のだ。う〜む。ジェシカの意識喪失は薬物によるものだが、どう考えても、いったいいつジェシカがガブ飲みするワインに混入できたのか? これも不問に付すしかないが、なんだか場違いな楽しいシーンがあった。マイクの部屋にきたジェシカに、マイクはシェフ顔負けの料理を作り、サーモンの薄切りを上手に切ってジェシカの皿にとる。ジェシカがワインを飲み、サーモンを頬張る。マイクはその食べっぷりにすっかりまいる。「うまそうに喰う」。この感覚わかりますね。男は、料理をうまそうに食べる女が意外と好きなのですよ。こんなリアリティがあるから許しちゃうのね、この映画の辻褄のあいそうもない「?」がいくつあっても。

 

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