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特集「B級映画に愛をこめて」

2016年7月18日

特集「B級映画に愛をこめて3」⑦ 
NINE(2010年 ミュージカル映画)

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監督 ロブ・マーシャル

出演 ダニエル・デイ=ルイス、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルス、ソフィア・ローレン、ニコール・キッドマン、ジュディ・デンチ

 

シネマ365日 No.1819

女で生き返る男 

特集「B級映画に愛をこめて3」

呆然とする豪華キャストで、これほど内容のない映画も珍しい。同じ監督の快作「シカゴ」はどこへ消えたのだろう。映画監督グイド(ダニエル・デイ=ルイス)が撮影10日前になっても脚本ができない。詰めかける記者の質問をはぐらかし、会見場から行方をくらました。走らせる車がアルファ・ロメオだ。もちろん映画の黄金時代を代表する、フェデリコ・フェリーニとマルチェロ・マストロヤンニへのオマージュだろう。夜明けのローマ街道を、白い車でぶっとばしてくるマストロヤンニの「甘い生活」が彷彿とする。いい遅れたが「NINE」とはフェリーニの「82/1」にミュージカルを加えたという意味らしい。フェリーニの実験的な映画より、エンタメ精神あふれる楽しい映画であってほしかったけど、豪華配役陣の歌と踊りを見て、聞かせてもらっただけ、ましと思おう▼終始一遍、ヘタレの監督を甘やかし過ぎではないのか。フェリーニの映画を見ていないとわからないのかもしれないが、本作だけみて映画業界の厳しさや、クリエイティブの産みの苦しみがよくわかったとおっしゃる方がいたらお目にかかりたい。そんなもの、ハナから関係ないもンね、この映画には。一流の監督であり、世界中の映画賞を総なめにした名作を彼グイドは世に送り出し、映画関係者から尊敬と愛を捧げられている。妻ルイザ(マリオン・コティヤール)はかつて彼の映画に出演した名女優、今は引退し夫の才能に献身し、名声を支えてきた。グイドはしかし愛人カルラ(ペネロペ・クルス)にメロメロだ。そのくせ記者会見から雲隠れして、隠れ里のホテルに落ち着いたとたん、妻に電話して泣きつくのだ。妻は腹の中は(チェッ。またか)と思いつつ、放っておけないから急行する。愛人カルラもやってくる。どうしたらいい。グイドのママ(ソフィア・ローレン)が幻となって現れ、「しっかりおし。だから程々にしておきなさいと言ったじゃないの」と叱りとばす。ソフィア・ローレンが初めてスタジオ入りした日、そこにいた全員が拍手で迎えたそうだ。ローレンは75歳だった。きっぱりと張りのあるメヂカラと容貌は、貫禄のオーラを放ちまくっている▼グイドの映画のタイトルは「イタリア」だ。主演女優クラウディア(ニコール・キッドマン)が撮影所入りした。彼女はグイドのミューズである。さっそく脚本を読みたいと彼女は要求する。一行も書けていないグイドは、言を左右して時間を稼ごうとするが、一刻も早く仕事に着手したい女優は、みるみる不機嫌になる。グイドはそのへんにおれなくなる。彼と長年いっしょに仕事してきた衣装デザイナー、リリー(ジュディ・デンチ)だけは、グイドと仲のいい姉弟のような理解者である。しかし彼女の激励も水の泡、グイドはとうとう映画の製作中止を発表して姿を消すのだ▼グイドひとりが大騒ぎして、錚々たる女優陣がからむシーンなどひとつもありません。どこがミュージカルかといえば、グイドが妄想するファンタジーの部分です。そこではニコール・キッドマンが、マリオン・コティヤールが歌い、ペネロペ・クルスが妖艶に踊り、ダニエル・デイ=ルイスも負けずに歌うと、なんと、ジュディ・デンチまでが歌を披瀝するではありませんか。そうそう、ケイト・ハドソンがシャープな新聞記者とスタイリッシュなダンスで出演し、グイドが性懲りもなく欲望を燃え上がらせる見せ場を作ります。蛇足ですが母親はコールディ・ホーンです。歌といえば、やはり特筆すべきはファーギーでしょう。砂浜に突如現れる娼婦。グイドが少年時代もっとも感動した女性です。彼女は男の子たちがかき集め、おずおず差し出した小銭をひったくり、「愛とは女を喜ばせること、イタリアの男なら明日などない覚悟で今日を生きるのよ」と(歌で)激をとばす▼2年間の沈黙のあと、リリーがグイドを訪ね、しっかりしろと尻を叩き彼は元気を吹き返し、勇躍スタジオ入りする。なにがいいたかったのかよくわからん映画ですが、女優たちのパフォーマンスだけはすばらしい。劇中の女優のキャラが、実際の彼女らの人となりを表しているようで面白い。マリオンは控えめで苦労性な妻。キッドマンはファイトをかきたてる仕事の鬼、ジュディ・デンチは「007」の「M 」さながら、理性的な管理能力でグイドを軌道に戻す。とどのつまり、女で生き返る、けっこうな男の物語。

 

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