女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集「B級映画に愛をこめて」

2016年7月20日

特集「B級映画に愛をこめて3」⑨ 
カリフォルニア・スイート(1979年 コメディ映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ハーバート・ロス

出演 マギー・スミス/マイケル・ケイン/ジェーン・フォンダ/ウォルター・マッソー

 

シネマ365日 No.1821

小気味のいい軽さ 

特集「B級映画に愛をこめて3」

5組の夫婦が登場する。英国の人気女優ダイアナ(マギー・スミス)と夫のしがない骨董屋シドニー(マイケル・ケイン)、離婚して9年ぶりに会うニューヨークの編集者ハンナ(ジェーン・フォンダ)とロスに住む脚本家ビル。フィラデルフィアからロス見物に来たマーヴィン(ウォルター・マッソー)は、若い女性と一夜を共にしたところ、妻ミリーがやってきてベッドにいる裸の女性を隠そうと大わらわ。ちなみに彼女はテキーラ1本あけて前後不覚だ。あと二組はシカゴに住む医師夫婦。妻同士が姉妹で、男たちは義理の兄と弟、この4人が休暇を過ごすためロスにやってきた。ダイアナはアカデミー賞主演女優賞候補である。夫は早く言えば妻の付き人で、オスカー発表を明日に控え、神経がピリピリしている妻と、適当な距離を置きながら話を合わす▼マギー・スミスは本作では落選する役で、本当のアカデミー賞の助演女優賞を取った快挙ものだ。彼女は「アカデミー賞っておかしいわね。私はイギリスでシェイクスピアをやり、シリアスな難しい役をいくつもやっているのに、オスカーをくれるかもしれないっていう役は、ほんの軽いコメディよ」。これ明らかにイギリス人から見た、アカデミー賞に対する嫌味ですね。こんなツラ憎いセリフにもかかわらずマギーが受賞したのは「アメリカの寛容」を示すものでしょうか(笑)。ダイアナ組とハンナ組は夫婦間の危機を孕むシリアスな会話の応酬。あとの3組は完全なドタバタ・コメディです。ダイアナは夫がゲイであることを知っている。オスカーには落選した、夫はホテルで若いハンサムな男を見つけてヒソヒソ仲のいい話。ダイアナは落選のショックと嫉妬で眠れない。明日は早々に帰英しなければ恥ずかしくてこんなスイートにおられない。夜中に行儀悪くチキンをかじり、夫に話しかけるが夫はあしらうのみ。情けなくなり、弱気をさらけ出した妻に、夫は初めて「僕たちは愛し合っているじゃないか」と優しく声をかける。妻はそれで気がすんだのか「セックスする?」「ダイアナ、品がないよ」と夫はたしなめるのですが、仲がいいのか良くないのか、寄り添っているのか反り身なのか、くっついたり離れたりする夫婦の距離を、マギー・スミスとマイケル・ケインが絶妙の呼吸で表すのです▼同じホテルのスイートに泊まるハンナは、父親と暮らしたいと、ニューヨークからロスに出奔した娘を取り返しに、心ならずも元夫と再会することに。会うやいなや嫌味の応酬である。「あの子は僕のところに1年いたいと言っている。ニューヨークでは不幸なのだ」「みんな不幸よ。でも生きているわ」「君はなんという俗物だ。他人を見下す人生がそんなに素晴らしいか。ニューヨークは世界の中心ではない」「大切なのは街じゃなく娘の生き方よ。知性と賢さを伸ばしてやりたいのよ」「あの子は寂しいのだ。だから有り金叩いて僕のところに来たのだ」「映画スターの家の地図しか作れない街よ」。ハンナは娘を手放すのが寂しくて仕方ない。忙しい編集者の仕事に追われ、家で満足に会話がなかったのも事実だ。だから娘が父親に会いたいという気持ちもわかるが素直に言えない▼ウォルター・マッソーの浮気の現場を隠そうとする中年男のうろたえぶりを、これでもかと誇張する。ズボンの前ボタンを止めるのも忘れ、妻を部屋に入れまい(ベッドには昨夜の女性が寝ている)と、奮戦するがついに矢尽き刀折れ「今からあるものを君に見せるが、10秒間何も言うな」そしてベッドカバーをめくる。妻はスヤスヤ眠る女性を見て「メイドじゃない? それじゃ誰なの。どういう女か法廷でいうがいいわ」言い捨て、スタスタ部屋を出て行こうとするがふと思いとどまり「私は一世一代の威厳を持って行動します。離婚もしません、許してあげます、原因を考え全て忘れてあげます。そのかわり下のブティックで、あなたの有り金全部頂きます」そういって思い切り散財し、見違えるようなスタイリッシュな女に変身する。今から見直すと、マギー・スミス、マイケル・ケイン、ジェーン・フォンダ、ウォルター・マッソー、みなオスカー受賞者だ。マギー・スミスの口の悪いセリフオスカー評はともかく、クセのある芸達者たちの飄々としたノリが、小気味いいですね。

 

Pocket
LINEで送る