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特集「ザ・クラシックス」

2016年7月23日

特集「ザ・クラシックス4」① 
パシフィック・リム(2013年 ファンタジー映画)

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監督 ギレルモ・デル・トロ

出演 チャーリー・ハナム/菊池凛子

 

シネマ365日 No.1824

怪獣よ、永遠なれ 

特集「ザ・クラシックス4」

2013年日本公開の映画ですから「クラシック」には当たらないのですが、ギレルモ・デル・トロ監督にしたら本作の源流は日本の「ゴジラ」であり、本多猪四郎監督であり、「ウルトラマン」であり、円谷英二特撮監督であり、あるいは特撮の父レイ・ハリーハウゼンとその映画であることを考えると、その水源は映画史の伝説の域にあります。本作は本多猪四郎とレイ・ハウゼンに捧げられていますし、トロ監督自ら「ぼくは怪獣のために生きている」と断言しています。怪獣愛なくして彼のファンタジーは形成されませんでした。ストーリーは伝統のヒーローものであり、劣勢にいる人類チームが、海底の地球の裂け目からぞくぞく出現するカイジュウ(映画でもそのままカイジュウと発音されます)にイェーガー(狩人)が挑み、人類の破滅を救う。いってしまえばそれだけなのですが「それだけ」にトロ監督のイマジネーションが「それだけ」に終わらせません▼本作は「2」が作られるニュースがあったので、それを待ってから本欄に、と思っていたのですが、中止になったというし、トロ監督は「ホビット」に軸足を移したようだし、で、本作を完結編としました。海底にある異世界で生まれる怪獣は巨大モンスターで高機能の破壊力を備える。地球の大都市に出現し破壊しまくります。地球防衛軍はイェーガーと呼ばれるこれまた巨大ロボットをパイロットが二人一組になって操作します。このイェーガーがなんとなく「鉄人28号」を彷彿とさせる。ペアを組むふたりは、お互いの記憶の中に入り、パートナーが最高に幸福だった時、最悪の不幸だったときの姿を見て、生い立ちや履歴を理解し、信頼関係を結びます。だから兄妹、夫婦、親子のペアが多い。怪獣の襲撃が頻繁になり、イェーガーはつぎつぎ破壊され、パイロットは命を失っていく。世界の政府首脳はイェーガーの生産が追いつかないことを問題視し、対怪獣戦略を「イェーガー計画」でなく、巨大防護壁「命の壁計画」に切り替えると決める。しかし防護壁で怪獣の侵攻は防げず、イェーガー計画の司令官ベントコストは、異世界とつながる地球の裂け目を破壊する攻撃を決意、優秀なパイロットであったが兄を怪獣との戦いでなくし、失意のローリー(チャーリー・ハナム)を呼び戻し、家族を怪獣の襲撃で失ったマコ(菊地凛子)とともに、イェーガー「ジプシー・デンジャー」に乗ることを指示します▼司令官もパイロットであり、東京襲撃のときひとりで怪獣と戦い、マコを救出した、以来親代わりとなって、彼女を育ててきました。トロ監督の映画作りの中心はロマンです。司令官とパートナーを組んだ血気盛んな若者チャックは、それまで反抗的な態度をとっていましたが、死を覚悟して最終決戦に臨む司令官に言います。「親父が言っていました。やれるときにやれ。今がそのときです。司令官」「光栄だ」。そこへ、怪獣の遺伝子がないと裂け目は開かないという緊急情報がはいった。司令官機は怪獣の一匹と組み合ったまま自爆します。怪獣の死骸(つまりDNA)を抱いて、ローリー&マコ機はマグマの裂け目を通過、搭載した原子炉で異世界を爆破します▼最先端のコンピューターでCGを駆使した迫力。世界を救ったのは機械でも武器でもなく、人間の勇気と犠牲だったというのが本作の結論です。トロは本多猪四郎のエピソードを引用しています。「ゴジラを撮り始める前、本田はスタッフ全員を集めて言ったそうだ。この怪獣映画はまちがいなく傑作になる、そう信じられない者は去ってくれ…ぼくもスタッフやキャストに同じことを望んでいる。作品に対して批判的な見方をしてほしくないのだ。信念と愛情をもって取り組んでほしいのだ。どんな作品を監督する場合でもいい映画になると信じている。キャストもそうあってほしい。疑いを持ったままでは、観客の心をうつ演技はできない。非現実的な怪獣ものでも、心に残る名作になりうるのだ」▼非現実的な映画に現実感を与えるにはなにが必要か。トロは「ディテールがリアリティを支える。ディテールなしに世界は表現できない」と断言します。「架空の世界を描くには細部の詳細が現実感を与える。町角にあるさまざまな標識、戦いからもどったロボットの汚れや破損、ゲートの開閉に使用するトラクターや車両、巨大なイェーガーの運搬車」。イェーガーは一基ごとにアール・デコ調、ゴシック調とデザインが異なり、西部劇のガンマンのようにスピーディに動きます。本作でトロはデヴィッド・クローネンバーグの助言に対し厚く謝辞を述べています。そういえばこのふたり「異界と異形が大好き」という共通点があるよね。

 

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