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特集「ザ・クラシックス」

2016年7月25日

特集「ザ・クラシックス4」③ 
イーストウィックの魔女たち(1987年 ファンタジー映画)

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監督 ジョージ・ミラー

出演 ジャック・ニコルソン/シェール/スーザン・サランドン/ミシェル・ファイファー

 

シネマ365日 No.1826

ぼくにかまってくれ! 

特集「ザ・クラシックス4」

考えてみれば、ジョージ・ミラー監督の地下水脈は、ファンタジー以外のなにものでもないね。最新作「マッドマックス 怒りのデスロード」だって、全編これバイオレンス・ファンタジーよ。「イーストウィックの魔女たち」でいえば、特撮やメルヘンっぽいセットで雰囲気を盛り上げている技術もさることながら、ジャック・ニコルソンのヘタレ悪魔と、よみがえった魔女たちというキャラの設定が、そもそも人を食っています。親友同士の熟女三人の唯一の話題は「いい男がほしい」。彫刻家のアレックス(シェール)、小学校の音楽教師のジェーン(スーザン・サランドン)、新聞記者のスーキー(ミシェル・ファイファー)、これに悪魔デイルのジャック・ニコルソンが加わると、全員がオスカー受賞者とノミネーという豪華陣です▼三人の女たちには自分たちも知らない念力があります。退屈な校長の式辞にうんざりし、雨が降って式が中止にならないかと念じると、一天にわかにかき曇り校庭は豪雨に豪風。われさきに参列者は校舎ににげこみ望み通り式はそれまで。「ねえ、三人が同じことを考えてそれが起こるなんて、不思議と思わない?」とスーキーがいうが、「偶然よ」とアレックスはとりあわない。でも刺激のない生活にうんざり気味のアレックスは「望みの男を念力でよびよせよう」と冗談で念波を発すると、ある日、町の文化財的な由緒ある屋敷を買い取った人物が現れた。地方紙の新聞社のオーナーであるフェリシア(ヴェロニカ・カートライト)は不吉な予感に恐怖を覚える。買い取ったのがデイルという謎の男。この映画は粗筋もさることながら、見せ方の巧みさで成り立つので、ネタバレしてもさしつかえない。デイルはアレックスたちの念波をキャッチして、しからば俺さまがご期待に応えようと現れた悪魔なのだ▼見せ方の巧みといったが、そのひとつは、デイルが発揮する、三人の女性の個性にあわせた口説きがおみごと。アーティストで現状に不満のアレックスには「君の毎日は平凡な家事、作った料理は食べてしまい、洗濯物は汚れ、掃除したら散らかる。結婚は男にとって得だが女にとっては地獄だ。窒息してしまう。君は世界中に種を蒔くのに、だれも認めず女の穴に世界中の廃棄物が注ぎ込まれる。僕を利用しろ、君の夢を実現するのだ!」。音楽教師のジェーンには「魔女の火あぶりは、男が医療ビジネスを独占するためにでっちあげた冤罪だ。魔女のほとんどは産婆だった。産婆業を男のものにするため、魔女だとデマを流して火刑にしたのだ。産婆はいろんな器具を使うからね。女のパワーと対決すれば男などみなフニャチンさ。ぼくは君にはかなわない。君がチェロを弾く指のタコは美しい。僕を信じて、弾いてみたまえ」。神がかりになったジェーンの燃える演奏は、ホントにチェロから煙がでるのだ。この手で三人ともデイルにイチコロ。館に移り住んで奇妙な、でも豪奢きわまる共同生活が始まった▼ただひとり、フェリシアは男の正体がこの世のものならぬ存在だと感づいている。フェリシアは正義の味方である。夫が編集長をして作っている新聞の紙面にひとつも社会性がないと憤懣やるかたない。原発問題も核の恐怖も書かれていない、バーゲンがあるからお買い物だとか、堕落した紙面を作っていると手厳しい。記事を書くスーキーもクソミソにいわれ、おもしろくない。三人は正義と常識の権化フェリシアなんか「死んじゃえ」と意見一致した。するとフェリシアは一晩苦しみぬいたすえ、妻の狂乱に耐えられなくなった夫が殺害してしまうのだ。アレックスたちは良心の呵責とともに、なにかおかしいと感づく。そう、邪魔者のフェリシアを消すため、デイルが女たちの心をあやつり、フェリシアを殺す念波を送らせたのだ。さてここからは魔女対悪魔の壮絶バトルです▼神は細部に宿るといいますが、まったくまことしやかな悪魔退治の魔術の、準備万端が粛々と進められる。彼のいいなりになってはあやつり人形になる。「悪魔払い」の書を読み解いた女たちの総力戦に、さしものデイルもヨレヨレ。ゲロ吐き、のたうち、地べたにひれ伏し、どろどろになって叫ぶ。「夢を叶えてやったのにこの仕打ちはなんだ!」怒りながらも悪魔のジャック・ニコルソンは悲しげに「よくも袖にしたな。棄てられてアタマにきたぞ。僕だって、僕に関心をよせて尊敬してくれる人がほしい、やさしくかまってほしいンだ。世間一般の男と同じさ。僕がやったことはすべて君らのためじゃないか。それなのにこんな目にあわせるなんて、元のみじめな生活に戻るといい!」笑っちゃう。ニコルソンって最高ね。彼の名演技は「カッコーの巣の上で」とか「シャイニング」とかいわれるけど、受けに回ったコメディこそ、追随を許さないわ。本作の悪魔の悲哀というか、男のホンネというか、可愛らしさというか、彼がイチコロにしたのは三人の女じゃなく、観客よ。

 

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